五輪汚職裁判 組織委の元理事 高橋治之被告 初公判で無罪主張

東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー契約などをめぐる汚職事件で、5つの企業から総額2億円近い賄賂を受け取った罪に問われている大会組織委員会の高橋治之元理事の初公判が開かれ、高橋元理事は受け取った金銭について「あくまでビジネスで賄賂ではない」と述べ、無罪を主張しました。

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会元理事の高橋治之被告(79)は、大会のスポンサー契約やライセンス商品の審査などをめぐり、紳士服大手AOKIホールディングスや出版大手KADOKAWAなど5つの企業からおよそ1億9800万円の賄賂を受け取ったとして、受託収賄の罪に問われています。

14日、東京地方裁判所で開かれた初公判で、高橋元理事は「理事として大会の協賛企業を募るなどをしたことはなく、取り計らいをしたこともない。企業から受け取った金銭は民間のコンサル業務の報酬で、あくまでビジネスだ。賄賂ではない」と述べ、無罪を主張しました。

検察は冒頭陳述で、「元理事は長年にわたりスポーツマーケティングの第一人者とされ、組織委員会の森喜朗元会長からマーケティング担当の理事としてスポンサー集めを任された。贈賄側の一部から金銭を受けるときは、発覚を防ぐため知人の会社に支払うように指示した」などと述べ、賄賂の認識があったと主張しました。

高橋元理事はスーツ姿でまっすぐ前を向き、検察の主張などを聞いていました。

一連の事件では高橋元理事ら15人が起訴され、すでに裁判が行われている12人のうち無罪を主張しているのは広告会社「大広」の元役員のみで、ほかの11人はいずれも執行猶予付きの有罪判決が確定しています。

検察の冒頭陳述

検察は冒頭陳述で、高橋元理事について「長年にわたりスポーツマーケティングの第一人者とされていて、組織委員会の森喜朗元会長からマーケティング担当の理事としてスポンサー集めを任せられた。組織委員会の周知文で、贈収賄の適用を受けるみなし公務員に該当することも認識していた」と述べました。

そのうえで贈賄側の5つの企業との関係について説明し、企業側から依頼を受けて組織委員会や、スポンサー選定の窓口となっていた電通に積極的に働きかけていたと主張しました。

ADK

広告大手「ADKホールディングス」との関係では「元理事は電通の幹部に対し、ADKを大会のスポンサー集めに参画させるよう求めた。ADKの担当者にはスポンサーになりそうな企業を具体的に教えた。元理事は違法行為に当たるおそれがあることを認識しながら賄賂を受け取っていた」などと主張しました。

KADOKAWA

出版大手「KADOKAWA」の関係では「KADOKAWAの幹部からスポンサーに選んでもらうよう依頼され、電通の担当者と引き合わせた。森元会長は出版社をスポンサーにすることに難色を示していたが、元理事は幹部に『私が尽力する。早急に私が森さんと話して説得する』などと話して、取り計らうことを伝えていた」と述べ、スポンサーの選定で元理事の影響力があったと主張しました。

大広

広告会社「大広」については「元理事は、大広が企業と結んだスポンサー契約で受け取る金額の半額を自分に支払うよう要求した。その際、理事として金銭を受け取ることは問題だと認識していたことから『知人の会社に支払ってほしい』などと指示した」と述べました。

AOKI

紳士服大手「AOKIホールディングス」との関係については「AOKIの幹部と会食をした時『組織委員会としてスポンサーになってほしいと考えている』などと話し、自分が理事としてスポンサーを集めていることを伝えていた。ライセンス商品の販売や選手団が着る公式服装の受注もできると述べていた」と主張しました。

その後、スポンサー契約が進まなかった時「組織委員会の局長に対し『今すぐ契約させろ』などと厳命していた」と述べ、企業への便宜を図っていたと主張しました。

サンアロー

大会マスコットのぬいぐるみを製造・販売した「サン・アロ-」については「ぬいぐるみの売り上げが低迷しているので売り場を増やしてほしいなどという依頼を受け『電通の局長にも話しておく』と了承した。その後、電通の局長に『ぬいぐるみが売れなくて困っているらしい。なんとかしてやれよ』などと述べて、販売促進策を検討するよう指示した」と述べました。