大阪で“ヒョウ柄”が減ってるの なんでなん?

ヒョウ柄の洋服に身を包み、商店街でアメちゃんを配るおばちゃん。

大阪と聞くと、すぐさまこんなイメージが頭に浮かぶ方も少なくないと思います。

しかし今回、なんでなん取材班にこんな疑問が寄せられました。

「ヒョウ柄を着る人が減っているの、なんでなん?」

関東出身の私も大阪で“ヒョウ柄”に出くわしたことはほとんどありません。

“ヒョウ柄”は本当に減っているのか。

減っているのであれば、それはなぜなのか。

大阪のイメージを覆すかもしれない謎を調査しました。
(大阪放送局ディレクター 三田村昂記)

BK大感謝祭で「なんで?」が次々と

取材のきっかけは、11月3日から5日にかけてNHK大阪放送局で開催した「BK大感謝祭」です。

BK大感謝祭の様子

初日には、ゲストに俳優の濱田マリさんと吉本新喜劇のすっちーさんを迎え、※「なんでなん?」のスペシャル版を公開生放送でお届けしました。

観覧に訪れた方々からは新たな「なんで?」が次々とあふれ出しました。

※寄せられた疑問にNHK大阪が徹底リサーチ、皆さんの“なんで?”に応えるコーナー

▼大阪の道路を「○○筋(すじ)」と呼ぶの、なんでなん?
▼大阪の人は歩くのが速いの、なんでなん?
▼「近畿」と「関西」 呼び方が違うの、なんでなん?
▼大阪でお笑い文化が根づいたの、なんでなん?
▼大阪の地下鉄 アナウンスが早口なの、なんでなん?

どの「なんで?」も、調べたくなる興味深いものばかり…。

なかでも関心をひかれたのが、冒頭で紹介した“ヒョウ柄”についての謎でした。

“ヒョウ柄”は本当に減っているのか?

まずは街ゆく人に“ヒョウ柄”について聞き込みをすることにしました。

すると、天王寺でピクニックをしていた若者からは、「そもそも」の疑問が。

「大阪のおばちゃんがヒョウ柄着てるの、なんでなん?」

大阪の人は派手好きだから?

それとも動物好きだから?

すこし調べてみると、ある説がささやかれていることがわかりました。

かつて海外のファッションブランドで動物柄がトレンドになった際に、大阪の人たちが似たデザインのものを安く作って売りだしたことで、愛用されるようになったという説です。

一方、こちらのオシャレな女性からは、こんな反論が。

「大阪のおばちゃんがヒョウ柄を着ると思い込まれているの、なんでなん?別にそんなに着ないし!」

「大阪=ヒョウ柄」という凝り固まったイメージをもたれていることに、ややお怒り気味でした。

次に出会ったのは、大阪を知り尽くしていそうな男性。

近頃ヒョウ柄を見かけなくなったと教えてくれました。

「ヒョウ柄のおばちゃん、昔はようさん歩いとったのに。最近は少なくなっとるわ。今年はタイガーやのにな、虎に乗っトラれたんちゃうか」

そう言い残し、笑いながら去って行きました。

阪神の38年ぶりの日本一がうれしくてしかたがない様子でした。

千林商店街でヒョウ探し

本当に“ヒョウ柄”は減っているのか。

真相を確かめようとやってきたのは、大阪の街頭インタビューの聖地、千林商店街。

千林商店街で取材

ここならきっとヒョウ柄に出会えるはず…。

しかし調査をはじめて1時間、探しても探してもヒョウ柄は見当たりません。

あれ?本当にいないのでしょうか。

話を聞いてみても「着る勇気が出ない」や「着こなせない」などの声。

こちらの女性も。

「見てて楽しんでるだけ。襲われるんかな思うわ、そんなん着てたら」

最後はきっちりとオチをつけてくれました。

しかし、話をよく聞くと、ヒョウ柄の服を持っているという人は少なくありませんでした。

みなさん、せっかく持ってるのに着ないのでしょうか。

理由を聞いてみると。

「あんまり着ない。飽きた」

「もう歳いってきたから、派手すぎて着なくなった」

もしかして「ヒョウ柄」は絶滅してしまったのか。

私が持っていた大阪のイメージは幻想だったのか。

そう思っていた、そのとき!

目の前を颯爽と横切っていくヒョウ柄を発見!

このチャンスは逃せないと、すぐさま追いかけて声をかけました。

しかし、見事なヒョウ柄に身を包んだ女性からは意外なことばが。

「息子からのプレゼントで、好きで着ているわけではない」

え…好きじゃないんですか。

さらに、驚きの事実が明らかになります。

「私、東北なんですよ、出身が。(大阪は)みんなヒョウ柄を着ているイメージだったんですけど、そうでもなくて。逆にあれって感じ」

調査の結果、ヒョウ柄の服を持っていたのは、50人中17人で、「派手すぎて今は着るのを控えている」そんな声がほとんどでした。

結局「ヒョウ柄の服を着た大阪のおばちゃん」に出会うことはできませんでした。

新世界で発見!ヒョウ柄専門店

しかし、大阪のヒョウ柄文化は決して絶滅したわけではありませんでした。

やってきたのは、通天閣のおひざ元「新世界」

商店街を歩いていると、遠くからでも、ひときわ目を引く“ヒョウ柄”の店を発見しました。

恐る恐る店内に入ると、出迎えてくれたのはド派手な女性。

「いらっしゃ~い」

(ディレクター:すてきなお店ですね)

「そうでしょう、動物園です。違うか~」

インパクトのあるTシャツと、出会って早々の小ボケに少したじろぎましたが、こちらは店主の高橋真由美さんです。

店内は見渡すかぎりの猛獣柄。

約1万2000点の品物がところ狭しと置かれています。

高橋さんが自らデザインしたものも数多くあります。

なかでもイチ押しがこちら。

「めっちゃかっこいいイケメンでしょ。この子が大好き」

よくよく店内を見てみると、置いているのはヒョウ柄だけではありません。

ライオンやトラ、それにジャガーやチーターといった一見するとヒョウと見間違えそうな柄も取りそろえているんです。

なぜ猛獣にこだわるのか、聞いてみました。

「うちは強くなかったらあかんのですよ、弱い動物は売れません。餌になる動物はダメなんです」

なるほど。

強さが大事なんですね。

ヒョウ柄はお土産 阪神日本一が追い風

満を持して、ヒョウ柄は売れているのかを尋ねてみると、実は今ヒョウ柄を主に購入しているのは、大阪の人ではなく観光客。

関西以外から訪れた人たちがお土産として購入していくそうです。

10年前までは客のほとんどが地元の人でしたが、今では3割程度に減ってしまったといいます。

しかし、今年は勢いを取り戻す出来事がありました!

そう、何を隠そう「アレのアレ」です。

阪神が日本一になったことで、ヒョウ柄ならぬトラ柄が大人気になったんです。

いつもなら2か月かけて売るという200着がわずか3日間で売れました。

これには高橋さんも上機嫌です。

「(阪神の)おかげさんでやりましたね。もうあとは休みにしようかなと思って。ヒョウ柄を身につけておしゃれすると、なんとなく元気になったりする。大阪に行ったら明るいで元気やで。そういう町が大阪にはもってこいです」

大阪のイメージを巡る今回の謎。

ヒョウ柄の洋服を着た人は一時よりも減っているのかもしれませんが、まだまだその“熱”は大阪に残っていました。

今後、トレンドになる猛獣は何になるのでしょうか。

(11月29日 ほっと関西で放送)