ラグビー日本代表 新ヘッドコーチにエディー・ジョーンズ氏

ラグビー日本代表の新たなヘッドコーチに、2015年のワールドカップで日本代表の指揮をとったエディー・ジョーンズ氏が就任することになりました。

ラグビー日本代表のヘッドコーチをめぐっては、今回のワールドカップフランス大会後にジェイミー・ジョセフ氏が退任し、日本ラグビー協会は後任の人選を進めてきました。

協会は「ワールドカップで優勝に導いてくれる人物」などの要件に沿って、書類選考や面接で候補者の絞り込みを行ってきました。

そして13日、都内で開かれた理事会で最終的な審議を行い、2015年のワールドカップイングランド大会で日本代表の指揮をとったエディー・ジョーンズ氏が新たなヘッドコーチとして承認されました。

ジョーンズ氏は、年明けの来月1日にヘッドコーチに就任する予定で、任期は2027年のワールドカップオーストラリア大会までとなっています。

日本代表は2019年のワールドカップ日本大会で史上初のベスト8進出を果たしましたが、ベスト4以上を目標に掲げた今回のフランス大会は1次リーグで敗退しています。

国際経験が豊富で、日本ラグビーにも詳しいジョーンズ氏が4年後のオーストラリア大会に向けて代表をどう強化していくのか、その手腕が期待されます。

ジョーンズ氏は14日、会見を行って意気込みなどを語ることにしています。

エディー・ジョーンズ氏とは

エディー・ジョーンズ氏はオーストラリア出身の63歳。

2015年のワールドカップで日本代表のヘッドコーチを務め、南アフリカ戦でチームを歴史的な勝利に導きました。

その後、イングランド代表のヘッドコーチに就任し、日本で開かれた2019年のワールドカップでは準優勝しましたが、去年12月、成績不振などを理由に解任されました。

そして、ことし1月にオーストラリア代表のヘッドコーチに就任し、地元開催となる2027年のワールドカップまでの契約を結んでいました。

しかし、フランス大会でオーストラリア代表として、史上初めて1次リーグ敗退となり、その後、辞任して去就が注目されていました。

ジョーンズ氏は先月、NHKのインタビューに対し、「オファーがあれば興味がある。日本のラグビーに恩返しがしたい」などと話し、日本代表のヘッドコーチを再び務めることに意欲を示していました。

“今月7日に最終面接” ヘッドコーチの選考過程

日本ラグビー協会の岩渕健輔専務理事は、理事会のあと取材に応じ、ヘッドコーチの選考の過程を説明しました。

それによりますと、協会は7月以降に外部の人材紹介会社も活用して本格的な選考をスタートさせました。

まず公募や推薦で80人のリストを作り、そこから候補者をジョーンズ氏を含む3人に絞り込み、今月7日に最終面接を行ったということです。

選考の基準は日本や国際舞台での経験のほか、現在の日本の状況を理解したうえでビジョンを示せるかなどで、候補者には面接で具体的な今後の強化策を説明してもらったということです。

そのうえで岩渕専務理事は「ジョーンズ氏はほかの2名と比べてプランが明確で筋道がはっきりしていた」と話し、理事会では全会一致ではなかったものの大多数の賛成で承認を得たと説明しました。

一方、ジョーンズ氏の就任をめぐってはオーストラリア代表のヘッドコーチとしての契約が残っている中で日本協会と接触したとして、国内外で批判の声もあがっています。

岩渕専務理事は、ワールドカップ開幕直前に日本協会とオンラインで面接したと報じられたことについて「情報収集のために外部の人材紹介会社が接触した」と話しました。

そのうえで「この段階ではヘッドコーチ選考の面接は行っていない」と説明しました。

また、ジョーンズ氏は、他者からの推薦でリストに入ってきたということで、本人が立候補したわけではないと強調しました。

先月 NHKのインタビューで語った“チーム作り”

ジョーンズ氏は先月、NHKのインタビューに応じ、今後の日本代表のチーム作りなどについて語っていました。

その主な内容です。

Q.今の日本代表に自分は必要な存在だと思うか?

A.日本代表をみると、2015年のワールドカップはよかった。2019年のワールドカップはすばらしかった。ただ、2019年のあとは少し停滞しているようだ。チームには新しい命を吹き込む必要があり、それが課せられた大きな仕事だ。日本ラグビー協会は世界トップ4になりたいと公言している。つまり、今いる場所と、いるべき場所に大きなギャップがある。彼らをそのレベルに引き上げるためには特別なリーダーシップが必要だ。大変興味深いプロジェクトだ。

Q.今回のワールドカップの日本代表を見て、率直にどう感じたか?

A.ワールドカップでのパフォーマンスはとてもよかったと思う。本当に一生懸命戦い、2019年のあとには見せていないようなテンポやリズムでプレーしていた。とてもよくやったと思う。しかし、日本にとって厳しい戦いになっている。この2大会、優勝しているのは南アフリカだ。彼らはフォワードのパワーゲームをした。日本がパワーゲームに勝つためには、もっと違うプレーをしていかなければならない。

Q.世界のトップのトレンドはどんなものか?

A.トレンドはフォワードを重視したパワーゲーム。そして、キックを多用するゲームだ。しかし、どんなトレンドもそうであるように、長く続いても終わりが来る。このあとの4年間、より速く、エンターテインメント性の高い試合を人々は見たがっている。ルールを修正するわけではないが、ルールの解釈を見直して、アタックするチームが有利になるときが来るかもしれない。それが来た場合は、日本が有利になる可能性がある。

Q.ヘッドコーチになった場合、4年間でチームをどう作るか?

A.最初にやるべきことは相手のパワーを和らげる方法を見つけることだ。それをやるには、いいセットプレーが必要だ。ワールドカップでの日本のスクラムはよかったが、より日本らしいスクラムにする必要がある。前よりも低く、速くすることだ。また、ラインアウトのスピードも強化する必要がある。今の日本はラインアウトでの高さを欠いているので、セットプレーを強化して、ボールにプレッシャーをかける方法を見つける必要がある。もう1つ、圧力をかけていくようなラグビーを日本はしていかないといけない。例を挙げると、イングランドプレミアリーグのリバプールのサッカーのように。彼らは常にプレッシャーをかけている。ボールを獲得したら、速い動きで相手にプレッシャーをかける。日本はいいセットプレーで相手のパワーを和らげる方法を見つけ、ボールを持っているときも持っていないときもハイプレッシャーゲームをする必要がある。ボールを獲得した瞬間に素早くボールを動かし、スピーディーなラグビーを展開していくべきだ。

Q.パワーゲームではボールを取り返すのが難しい。どうする

A.パワーがあろうとなかろうと、ボールを取り返せばいい。相手にプレッシャーをかけなければいけない。とくに体が大きくない日本はより一丸となって賢く、そして相手より一歩先にやっていくしかない。日本は一緒に長期の合宿ができるというアドバンテージがあり、そこで団結力を高めることができる。今の世界のラグビーを見ると、最も団結力があるのはアイルランドだ。チームの80%が同じチームで毎日一緒にプレーしている。だからこそ、団結力、スピードがあり、相手よりも一歩先のプレーができるチームになっている。

Q.日本のための戦略はどのようなものか?

A.日本は世界で一番強度の高いチームにならなければいけない。2015年、2019年にそれができたと思うが、それをさらに強化していく。今回は強化するだけでなく、考えるスピード、アクションをとるスピードを強化していく。集団的なスピードとアクションのスピードだ。試合中にずっと動いて、相手にプレッシャーをかける。それによってフィジカルの不利な点を補うことができると思う。

Q.具体的にどんなプレーができると思うか?

A.まず一番大事なのは姿勢だと思う。今の日本の姿勢は悪くない。とてもファイトがあるし、意図を持ってプレーしているが、もっと大胆に、勇敢に相手よりも速くという考えが必要だ。相手よりもボールを速く動かしていくためには勇気がいる。タッチキックではなく、クイックタップでそこから展開していく。スクラムからボールを1秒で出したり、どこでスピードアップできるかを常に考えていく。例えば相手がキックしてきたら4人か5人が待機してカウンターアタックに備える。ボールを持っていないときにハードワークができるか。そこにかかってくると思う。

Q.世代交代をどのように進めていくか?

A.いくつかのポイントがあると思う。まず、2015年と2019年の選手たちは、これから出てくる若い才能のロールモデルになる必要がある。若い選手にはすばらしいお手本が必要だ。リーチ マイケル、堀江翔太、稲垣啓太、大野均、五郎丸歩、田中史朗のような選手はこれから出てくる選手にとってすばらしいお手本になる。そして、ヘッドコーチが誰であれ、大学に行ったり、リーグワンの試合を見たりして、最高の人材を選ぶようにしなければならない。トップ4になるということはワールドクラスということだ。だから、常にワールドクラスのレベルで活動しなければならない。

Q.若くて有望な選手はいるか?

A.東京サントリーサンゴリアスと一緒に仕事をしているのでわかるが、いい若手選手は間違いなく育ってきている。そして、大学の選手について私が感心するのは、彼らのフィジカル面が今や代表クラスになりつつあるということだ。だから、フィジカル面ではいい準備ができている。今、彼らに欠けているのは、プレッシャーのかかる状況でハイレベルなラグビーをプレーする経験だ。プレッシャーの中でハイレベルな試合をする若い選手たちを増やすこと、これが日本に必要なことだ。

Q.スタイルを変えるか?指導者像をアップデートする?

A.人生で偉大なものを得るためにはハードワークが必要だ。努力しなければ何もできない。しかし、ハードワークと楽しみのバランス、個人とチームのバランス、支援と挑戦のバランスがますます重要になってきている。ヘッドコーチは常にバランスを見ていかなければいけない。常に選手たちを見つめて何がいいのかを考えていく。