肺がんで死亡の男性 アスベスト救済制度 申請却下後に労災認定

建物の解体作業に従事し、肺がんで死亡した81歳の男性がアスベストによるがんだったとして労災に認定されたことがわかりました。男性は国の救済制度の申請が退けられていて、支援団体はその後、労災が認められたケースは異例だとしています。

アスベスト被害の患者などの支援にあたる団体は13日、厚生労働省で記者会見を開き、40年近く建物の解体作業に従事し、去年、81歳で死亡した都内の男性が労災に認定されたことを明らかにしました。

団体によりますと、男性は2年前に肺がんを患ったあと、アスベストの被害者に医療費などを給付する国の救済制度に申請しましたが、去年、退けられ、その後死亡しました。

男性の妻が労災申請をしたところ、アスベストを吸ったことを示す胸膜プラークが確認されたことなどから、ことし6月に労災に認定されたということです。

支援団体によりますと、国の救済制度が退けられたあと労災が認められるケースは異例だということです。

妻は「国の救済制度が不認定となった数か月後に夫は他界したので、被害が認められたことを報告できなかったことが悔やまれます。同じような人は諦めずに手続きしてみてほしい」とコメントしています。

支援団体ではアスベストの被害に関する相談を14日と15日の2日間、午前10時から午後7時まで受け付ける予定で、電話番号はフリーダイヤル、0120-117-554です。

昨年度 労災認定は1140人

厚生労働省は建設現場や工場などで働き、アスベストを吸い込んで肺がんや中皮腫などになったとして労災と認定された人を公表していて、昨年度は前年度より64人多い、1140人となりました。

アスベストによる労災認定が1000人を超えたのは12年連続です。

業種別にみると
▽建設業が715人で最も多く全体の62.7%
次いで▽製造業が345人で30.3%でした。

都道府県別にみると
▽東京都が164人
▽大阪府が139人
▽神奈川県が90人などとなっています。

また、労災保険の請求権がなくなった遺族に支払われる特別遺族給付金の支給決定数は昨年度170人と、前年度の139人を大幅に上回りました。

これは2021年度末に申請期限が切れることに伴い、申請が相次いだことが要因とみられますが、その後、期限を延長し、現在も受け付けています。

厚生労働省は「アスベストは1970年代が輸入のピークで、30から50年の潜伏期間のあとに発症するため、今後も労災認定は1000件を超えるペースで進んでいくと思われる。不安な人は相談窓口に問い合わせてほしい」としています。

厚生労働省は14日と15日の2日間、午前10時から午後5時まで相談窓口を設置します。

電話番号は03-3595-3402です。