SNS“なりすまし”相次ぐ ニセ岸田首相2900万回表示 問題は?

SNSでは岸田総理大臣など著名人になりすましたアカウントによる発信が相次いでいます。

中には本物と混同するケースも起きていて、専門家は「安易にフォローしないよう心がけてほしい」と注意を呼びかけています。

岸田首相の偽物が…

12月12日、旧ツイッターのXで、岸田総理大臣の名前をかたるアカウントが「今年の漢字」が『税』だったというニュースを引用し、「ハイハイどうせ俺が悪いんだろ」と投稿しました。

「岸田文雄」を名乗るアカウント

アカウントには岸田総理大臣本人の写真が使われていて、2900万回以上表示されるなど広く拡散しましたが、岸田事務所は自分たちの発信ではないとしています。

投稿は偽物だと気付いた人も多いものの、中には「官邸で身内にボヤくのとは訳が違う」などと本物と誤解したとみられる人もいました。

こうした“なりすまし”はSNSで相次いでいて、12月4日には俳優の北川景子さんの名前をかたった、フォロワー15万人を超える偽物のインスタグラムの投稿を元にスポーツ紙が記事を書き、事務所が注意喚起しています。

北川さんの事務所による注意喚起

企業アカウントの“なりすまし”も相次ぐ

また、企業の公式アカウントの“なりすまし”も相次いでいます。

「パインアメ」を販売する会社は12月2日、“なりすまし”のアカウントがあるとして注意喚起を行いました。

このアカウントはハンドルネームや紹介文が公式アカウントと同じで「50万円を私のマーケット戦略に従って投資する意欲があれば、150万円に増やすことができると確信しています」などと投資の勧誘などを行っていました。

この会社では、Xの運営会社に削除依頼を行ったということで「お客様にも迷惑ですし、企業のブランドイメージもマイナスになるため、こういった行為はやめていただきたい」と話していました。

このほか、大手カレーチェーンや食品メーカーのアカウントの“なりすまし”も出ていて、企業が相次いで注意喚起しています。

“なりすまし” 問題点は?

こうした“なりすまし”の問題点について、インターネットのトラブルに詳しい清水陽平弁護士は「“なりすまし”そのものを罰する法律はなく、その行為だけでは罰せられることはないが、勝手に名前や写真を使っていれば氏名権や肖像権の侵害にあたるほか、発信の内容次第ではプライバシー権の侵害や名誉毀損となる可能性がある」としています。

また、“なりすまし”アカウントをフォローすると、詐欺広告に誘導されるおそれもあるということです。

本物か見分けがつきにくいケースも

ただ、“なりすまし”は巧妙で、本物かどうか、判断が難しいケースもあります。

2023年3月、野球のWBCで日本が優勝を果たした日には「大谷翔平」を名乗るアカウントが旧ツイッターのXで「ツイッターも始めましたのでよろしくお願いします」などと写真とともに発信し、すぐに15万以上のフォロワーを集めました。

「大谷翔平」を名乗るアカウント(現在は削除済)

アカウントはその後、削除されましたが、見極めが難しいケースもあります。

“なりすまし” 見抜くには?

“なりすまし”かどうか見分けるにはどうすればいいか。

清水弁護士は、
▽SNSの運営会社の認証マークがあるかや
▽フォロワー数の確認
▽公式のホームページでそのアカウントが紹介されているかを
確認することが有効だとしています。

詳しくみていきます。

対策1 認証マークの確認を

最も基本的な対策の一つが「SNSの運営会社の認証マークがあるかどうか確認すること」だといいます。

先ほどの大谷翔平選手の偽物のアカウントには、認証マークがついていませんでした。

対策2 フォロワー数の確認を

また、フォロワー数の確認も有効だといいます。

清水弁護士は「“なりすまし”の場合は本物と比べてフォロワー数が極端に少ないことが多い。紹介文が本物に見えても、フォロワー数が少ない場合はなりすましの可能性がある」といいます。

対策3 公式ホームページの確認を

そして、公式のホームページでそのアカウントが紹介されているかもポイントだといいます。

清水弁護士は「著名人や企業アカウントの場合、SNSのアカウントの存在を公式ホームページで紹介しているはずです。そこに載っていない場合は、“なりすまし”の可能性がある」といいます。

安易にフォローしないで

清水弁護士は、運営会社側に速やかに削除などの対応が求められるものの、現実的にすべての“なりすまし”をなくすことは難しく、一人ひとりが『だまされない』リテラシーを身につけることが大切だと指摘します。

清水陽平弁護士

清水弁護士
「“なりすまし”は望ましい行為ではなく、すべきではない。ユーザーが安易にフォローすることで、氏名権の侵害など不適切な行為を助長し、結果的にアカウントの本人に迷惑をかけることにもつながりかねない。不適切な行為を広げないためにも、一人ひとりが“なりすまし”を見抜く力をつけていくことが健全なネット社会のためには大切だ」