“新NISA” 今からでも大丈夫!制度の基本をわかりやすく解説

“新NISA” 今からでも大丈夫!制度の基本をわかりやすく解説
個人投資家の税制の優遇制度、NISAが来月から大きく変わります。制度はどう変わるのか。そして利用する上での注意点は?シリーズ“新NISA”。これから4回にわたって詳しくお伝えします。1回目は制度の基本と直近の動きについてです。

(経済部 佐藤崇大)

新しいNISAの仕組み

「NISA」は個人の資産運用を後押しするための税制の優遇制度です。株式や投資信託などの運用益(売却益や配当など)が一定の範囲内で非課税となります。

今の制度では、株式や投資信託などを年間120万円、累計で600万円まで非課税で保有できる「一般NISA」と長期の運用を想定して投資対象を一定の投資信託に限定し、年間40万円、累計で800万円まで非課税で保有できる「つみたてNISA」があります。

ただ、「一般NISA」と「つみたてNISA」は両方の仕組みを利用することはできず、いずれも期限付きの措置で非課税で保有できる期間も決まっています。
来月から始まる「新NISA」。今の制度と同じですが、国内に住む18歳以上が利用できます。ポイントは、非課税で投資できる枠の大幅な拡大と制度の恒久化、それに制度が併用できるようになることです。

「新NISA」では、長期の積み立てを目的に投資信託だけを購入対象とする「つみたて投資枠」と、上場企業の株式などを購入できる「成長投資枠」が設けられ、2つの仕組みを併用することができるようになります。
年間の投資額の上限は「つみたて投資枠」が120万円、「成長投資枠」は240万円、合計で360万円です。

非課税で保有できる資産の限度額は、2つの枠の合計で最大1800万円です。

制度は恒久的なものとして、非課税で保有できる期間も無期限となります。

NISAを始めるには

「新NISA」を利用するには金融機関で口座を開設することが必要です。そして、NISAの口座は「1人1口座」と決まっています。
金融庁によりますと、ことし6月末の時点で、NISAを取り扱っている金融機関は697法人。証券会社や銀行のほか、信用金庫や信用組合、生命保険会社や損害保険会社でも取り扱っているところがあります。

すでにNISAの口座をもっている人は来月に新NISAの口座が自動で開設されます。NISA枠の一部をすでに使用している場合、手続きをすれば、金融機関を変更して新NISAの口座を開くことも可能です。一方、現在、NISA口座をもっていない人は新たに口座を開設する必要があります。

口座の開設は、インターネットや郵送を通じて行います。本人確認の資料やマイナンバーなどの情報が必要になります。申し込みを受けた証券会社や銀行などの金融機関は、書類に不備がないか確認します。そして、NISA口座を複数開設していないかなどを税務署が審査し、問題がなければ口座の開設手続きが完了します。

それでは口座の開設までにどのくらいの時間がかかるのでしょうか。ネット証券大手のSBI証券や楽天証券によりますと、通常はWEBでの申し込みから2、3営業日ほどで口座が開設されるということですが、新NISAのスタートを直前に控えた今の時期は、申し込みの件数が多いため、手続きに1週間から3週間かかる場合もあるとしています。

口座開設が完了すると、投資対象や投資額の設定をする必要があります。また口座への入金をどのように行うかも考えなければなりません。

銀行からの引き落としやクレジットカード経由で行う場合には別途、手続きが必要になります。金融機関各社は、来月中に新NISAの利用を希望する場合は、早めに口座開設をするよう呼びかけています。

投資の対象は?

それでは新NISA制度ではどのような金融商品に投資ができるのでしょうか。

「つみたて投資枠」では、金融庁が定める基準を満たし、長期の積み立てや分散投資に適したとされる投資信託に投資することができます。

一方、「成長投資枠」は、投資信託に加えて、上場企業の株式などを購入できます。

今のNISAと同じように国内の株式や投資信託のほか、アメリカなど海外の株式や投資信託を買うこともできます。

ただ、銀行では、株式やETF=上場投資信託は取り扱っていないなど、どのような金融商品に投資できるのかは、金融機関によって異なります。
新NISAの利用にあたって金融庁は、「長期」「積み立て」「分散」といったポイントを押さえることで、リスクを軽減し、安定的な資産形成が期待できるとしています。

それぞれのポイントを図で詳しく見ていきましょう。
ポイント1 【長期】
長い期間投資を続けると、投資などで得た収益を当初の元本にプラスして運用することで得られる「複利」の効果が大きくなると考えられています。
ポイント2 【積み立て】
あらかじめ決まった金額を続けて投資することで、購入単価を平準化することができます。
ポイント3 【分散】
分散投資によって価格の変動をある程度抑えることができるとしています。

ネット証券、口座数伸ばす

新NISAのスタートが迫る中、口座開設数はどの程度伸びているのでしょうか。

「SBI証券」を傘下におく最大手のSBIホールディングスは、ことし9月、グループ全体での口座数が1100万を超えました。また第2位の「楽天証券」は、12月5日に1000万口座を超えたと発表しました。

この2社はいずれもことしの秋からこれまで収入源だった日本株の売買手数料の無料化に踏み切りましたが、これが口座数の伸びにつながったとみられます。

このうち楽天証券によりますと、50歳未満の顧客が全体の7割を占めているということで、この会社はNISAの拡充を前に若い世代を中心に将来の資産形成に対する関心が高まっていると見ています。

このほか、マネックス証券はことし10月にNTTドコモの子会社となって顧客基盤を強化することを決めています。
このようにネット証券各社はサービスや体制の強化をはかり口座数を伸ばしていますが、金融庁によりますと、口座を開設してもまったく利用していない人が一定の割合で存在するということで、稼働率をどう高めるかが各社共通の課題となっています。

NISA 展望は

最後にNISAの今後の展望について考えてみます。

日本の個人金融資産は、2100兆円を超える水準にまで膨らんでいますが、これまで「現預金重視」の傾向が強く、保守的な投資スタンスをとる人が多いとされてきました。

その背景として、バブル崩壊の影響で投資に慎重な姿勢が強まったことやデフレが長期化し現金の実質的な価値が上がっていたことなどが指摘されています。その日本でいよいよ「貯蓄から投資」への流れができるのかが焦点となります。

政府が去年まとめた資産所得倍増プランでは、NISAの総口座数を5年間で3400万とし、投資額も56兆円にそれぞれ倍増させるとしています。

これまで貯蓄を重視してきた個人の資金が投資に振り向けられれば、株式市場の活性化につながり成長分野に資金が向かう可能性もあると期待されています。

人生100年時代といわれる今、資産形成に対する関心が一段と高まっています。

その柱として期待される新NISAですが、元本が保証されているわけではありません。
NISAを利用する場合には、今後のライフプランを考えて、当面、生活費などに使わない“余裕資金”を活用するといった無理のない投資プランを立てることが重要です。

そして、「長期」「積み立て」「分散」のメリットを最大限生かすためにも、制度を十分に理解するとともに、自分がどこまでのリスクをとれるのか、その「許容度」を把握しておくことが必要になります。

(12月14日 おはよう日本で放送)
経済部記者
佐藤 崇大
2017年入局
京都局 大阪局を経て経済部
証券業界などを担当
自分のライフプランについても考え始めました