当選無効議員に判決確定までの報酬など全額返還命じる 最高裁

公職選挙法違反で有罪が確定し、当選が無効になった元大阪市議会議員が、判決が確定するまでに受け取っていた議員報酬などについて、最高裁判所は全額の返還を命じました。当選無効が確定するまでの議員報酬などについての初めての判断で、国会議員などの同様のケースにも影響が及ぶ可能性があります。

4年前の大阪市議会議員選挙で公職選挙法違反の罪で有罪判決を受け、失職した不破忠幸元議員に対し、大阪市は確定するまでに支給した議員報酬や政務活動費など合わせて1400万円余りの返還を求めていました。

1審と2審は、元議員の活動で市も利益を得ていたなどとして、およそ160万円に限って返還を命じたため、市が上告していました。

12日の判決で、最高裁判所第3小法廷の林道晴裁判長は「公職選挙法違反の罪を犯した人は民主主義の根幹である選挙の適正を著しく害した」と指摘し、確定までの期間について「議員として活動していたとしても、市との関係で価値はないと評価せざるをえない」として、議員報酬と政務活動費などの全額にあたる1400万円余りの返還を命じました。

一方、5人の裁判官のうち今崎幸彦裁判官は「資格がなかったとしても元議員が活動した事実は残り、市は利益を受けたことになる」などとして、議員報酬の全額の返還に反対する意見を述べました。

公職選挙法違反の有罪が確定し、当選が無効になるまでの議員報酬などについて、最高裁判所が判断を示したのは初めてで、国会議員などの同様のケースにも影響が及ぶ可能性があります。

今崎裁判官 “報酬の全額返還に反対”

裁判官出身の今崎幸彦裁判官は、議員報酬など全額の返還を命じた多数意見に反対しました。

今崎裁判官は「たとえ資格がなかったとしても元議員が活動した事実は残り、市は利益を受けたことになる。活動についても相応の評価をするのが筋だ」などと述べました。

報酬の額については「裁判所が評価するのは難しく、結論として正規の額と同額とみなさざるをえない」としました。

一方、「適正な手続きのもと、政策として正規の額から減額することは十分にあり得る」と付け加えました。

林裁判長 “判決を機にルール議論を”

今崎裁判官の意見に対し、多数意見に賛成する裁判官出身の林道晴裁判長は、「元議員の活動に法的な欠点があるのにもかかわらず正規の額と完全に同等と評価するのは無理がある」と反論しました。

一方、「議員として活動したことが事実として残るのは今崎裁判官の指摘するとおりで、元議員に一定の利益を認める場合もあり得るが、それを根拠づける措置が必要だ。一定のルールを定めることも考えられる。判決を機にこうした議論が尽くされることを期待したい」と述べました。