家族が人質のイスラエル人 東京で会見 全員解放へ支援求める

家族がガザ地区で人質にとられているイスラエル人が、12日、都内で会見を開き、人質全員の解放に向けて日本の政府や市民の支援を求めました。

イスラエル政府は、ガザ地区でとらわれている人質全員の解放に向けた支援を求めるため、人質の家族を各国に派遣しています。

日本には、ハマスに襲撃された音楽イベントに参加していて人質になった若者たちの3組の家族が訪れていて、12日はこのうち3人が都内の日本記者クラブで会見しました。

この中で、一人娘で大学生のノアさん(26)が人質となっている、父親のヤコブ・アルガマニさんは、「戦争が続くかぎり、双方に死者が出ます。ガザでも子を亡くした親が私たちと同じように、泣くことになります。私は停戦と対話によってのみ、解決ができると思っています」と話し、解放に向けた交渉などへの支援を求めました。

また、長男でピアニストのアロンさん(22)が人質となっている、母親のイディット・オヘルさんは、「拘束されている人たちは『数』ではありません。それぞれに人生があります。日本政府や皆さんには、とらえられている私たちの愛する人全員が戻るまで、彼らのことを忘れないでほしいです」と訴えました。

ハマスは、7日間の戦闘休止の間に、女性や子どもを中心に110人を解放したものの、イスラエル政府はいまだに130人以上が人質になっているとしています。

ガザ地区に対しイスラエル側が激しい攻撃を続ける中、ハマスは複数の人質が死亡したと主張していて、残る人質の安否は分からない状態が続いています。

「何が起きたか分かってもらうことが大事」

ピアニストのアロン・オヘルさん(22)は、10月7日、ハマスに襲撃された音楽イベントに襲撃が始まる直前に到着しました。

攻撃が始まったあと、アロンさんは友人とともに屋外の小さなシェルターに逃げ込みました。

シェルターに逃げ込んだアロンさん(左)

シェルターには30人ほどが逃げ込みましたが、ドアはなく、投げ込まれた手投げ弾でアロンさんの友人を含むそのほとんどが亡くなったということです。

アロンさんが連れ去られる様子は、他の生存者が目撃しているほか、ハマスが撮影したとみられる映像にもアロンさんが戦闘員にたたかれながら車の荷台にのせられる様子が写っています。

弟のロネンさん(左)と母親のイディットさん(右)

今回、アロンさんの母親のイディットさんと弟のロネンさんが来日していて、「あなたはひとりじゃない」と日本語で書かれたTシャツや鞄を身につけ、解放を訴えていました。

NHKの取材に対し、イディットさんは「訴えることはつらいですが、何が起きたか分かってもらうことが大事だと思っています」と話していました。また、ロネンさんは、「兄のピアノにあわせて、自分がギターを弾いて、またみんなで音楽を奏でるのを楽しみにしています」と話していました。

またアロンさんは旅行が好きで、行ったことがない日本を訪れることをとても楽しみにしていたということで、2人は「次に来日するときはアロンも一緒に各地を回りたい」と話していました。

「あの日から時間が止まってしまった」

ノア・アルガマニさん(26)は大学の2年目を終えたばかりで、ボーイフレンドや友人とハマスに襲撃された音楽イベントに参加していました。

一人娘のノアさんを心配した父親のヤコブさんが電話をしたところ、電話には出たものの返事はなく、携帯電話の位置情報をみるとガザ地区の方向に進んでいたということです。

その後、ハマスが撮影したとみられる映像でバイクに乗せられたノアさんが手を伸ばして助けを求める様子が確認されました。

来日したヤコブさんはノアさんについて、社交的で、旅行が好きで、はっきりとものを言う、賢い娘だったと話し、ノアさんに「お父さんのことは愛しているけれど、お父さんだからといって、何でも知っていると思わないでね」と言われたことをとても強く覚えていると目に涙を浮かべ声を震わせながら話していました。

また、母親のリオラさんは、がんを患っていて医者からは余命が長くないと言われていて、ヤコブさんは「妻にとって、たったひとつの願いはノアを一目みたい、ということだけです」と話し、一刻も早いノアさんの解放を求めていました。

その上でヤコブさんは、「あの日から時間が止まってしまいました。2人で待っているよとノアに伝えたいです。ノアが戻ってきて、以前のあたたかさも戻ってくることを祈っています」と話していました。