ガザで子どもたちの“心のケア”始める 神奈川のNPO

戦闘が続くパレスチナのガザで、神奈川県のNPOが、過酷な環境で暮らす子どもたちの心のケアにあたるワークショップを始めました。

ワークショップを始めたのは神奈川県海老名市にあるNPO「地球のステージ」です。

今週からガザ南部のラファ市にあるUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関の学校で、支援を始めました。

11日はおよそ9000人が避難生活を送っている学校を会場に、6歳から15歳までのおよそ150人が参加しました。

子どもたちはまず、音楽に合わせて体を動かし、避難所生活で固まった体をほぐしました。

そして
▽孤独感を和らげるため、周りの子どもと一緒にゲームをしたり
▽自尊心を取り戻してもらうため、みんなの前で歌を歌ったりするプログラムも行われました。

一連のプログラムは「心理的応急処置」と呼ばれ、安心感を得たり、つながりを感じたりすることで、将来的にPTSDの予防や軽減に効果があるということです。

参加した女の子は「ミサイルが来るのが怖くて、外の広場で遊んでいません。きょうは遊んで、楽しんで、生きていく元気がでました。毎日こんな風だったらいいなと思います」と話していました。

NPOの現地スタッフのモハマッド・マンスールさんは「ラファの避難所の状況は非常に悪く、子どもたちは健康面、栄養面、精神面の支援を必要としています。参加した子どもたちは感謝とともにこの活動が継続することを願っていました」と話していました。

NPOでは今後3か月にわたって4つの学校を週に1回ずつまわり、少しでも多くの子どもたちにプログラムを届けたいとしていて、必要な費用は国内各地から寄せられた寄付を充てることにしています。

20年前から支援にあたってきた団体は

ワークショップを行った神奈川県海老名市のNPO「地球のステージ」は、20年前からガザ地区南部で子どもたちの支援にあたってきました。

高い壁に囲まれるガザ地区は「天井のない監獄」といわれ、子どもたちは今回の武力衝突前から、大きなストレスを抱えているとされています。

国際的なNGOセーブ・ザ・チルドレンが去年行った調査では、子どもの8割が恐怖や緊張、悲しみといった苦痛を感じていたほか、半数以上が自殺を考えていると回答しました。

こうした中NPOでは子どもたちが集まって経験や思いを語り合ったり、絵や映像にしたりすることで、トラウマに向き合っていくための、心の支援にあたってきました。

人材育成も行い、おととしには現地に支援センターを設けました。

今回のワークショップを行うにあたり、9日、海老名市の事務所と現地をつないで、最終確認が行われました。

自身も子どものころに支援を受け、いまは現地のスタッフ兼、ジャーナリストとして働くモハマッド・マンスールさん(27)は「楽しめるレクリエーションを取り入れたので、凍りついた心や恐怖心を解き放ち、子どもたちの心の中の希望を表現してもらいたい」と話しました。

一方NPO代表で、医師の桑山紀彦さんはこの活動をするにあたって、日本人から寄付が集まっていることや、支援したいと思っていることなどを伝えていました。

桑山さんは「早期の心のケアをしないと将来重い心の病気になってしまう可能性が高い。地上侵攻が拡大し危険度が上がっているからこそ、早急にやらなければならないし、子どもを笑顔にすることは、周りの大人の希望にもなる」と話していました。

子どもたちの状況は

パレスチナの保健当局によりますと、ガザ地区ではこれまでにおよそ1万8000人が死亡しました。

その多くが子どもや女性とされていて、生き残った子どもたちは深刻な心の傷を負うのではないかと、懸念されています。

地球のステージによりますと、今回、プログラムを行うラファ市内の4つの学校は避難所となり、およそ3万4000人の市民が生活していて、このうち1万4000人余りが子どもだということです。

授業は行われておらず、現地スタッフでジャーナリストのモハマッド・マンスールさんが撮影した写真には、子どもたちが食料や水を運んだり、太陽光パネルを使ったスマートフォンの充電を手伝ったりしている様子が写っています。

また電気が来ない中、電動ミシンを動かすために足でペダルをこいで、手伝っている姿も見られます。

NPOによりますと、子どもたちは常に空爆や飢え、それに病気の恐怖にさらされているため、落ち着きがなかったり、夜眠ることができなかったりと不安な様子が見られるということです。