FRB 3会合連続で利上げ見送りの見方強まる インフレ鈍化傾向で

アメリカのFRB=連邦準備制度理事会は12日から2日間、金融政策を決める会合を開きます。インフレが鈍化傾向にあることから、市場ではFRBが3会合連続で利上げを見送るとの見方が強まっていて、来年、どのくらい利下げするかに関心が集まっています。

アメリカではことし10月の消費者物価指数が前の年の同じ月と比べて3.2%の上昇となり、伸びは前の月の3.7%から縮小するなどインフレの鈍化傾向を示す経済指標が相次いで発表されています。

こうした中、FRBは12日から2日間、金融政策を決める会合を開きます。

市場では、FRBが最近の経済指標や経済が減速したとの最新の報告を踏まえ、3会合連続で利上げを見送るという見方が強まっています。

また、今回の会合では参加者による政策金利の見通しが示され、市場では来年、FRBがどのくらい利下げする予測を示すのか関心が集まっています。

前回、9月時点の見通しでは、政策金利の変動幅を1回当たり0.25%とすると、年内に1回追加の利上げを行い、来年は年2回利下げする計算でしたが、今回の見通しでどのような変化があるのかが注目されています。

会合後の記者会見でパウエル議長が今後の金融政策に対する姿勢についてどう発言するかも焦点です。

金融政策の行方は FRBの元副議長に聞く

アメリカのFRB=連邦準備制度理事会が12日から2日間開く金融政策を決める会合の注目点や今後の金融政策の行方について、FRBの元副議長でプリンストン大学のアラン・ブラインダー教授に聞きました。

Q.市場では“利上げ打ち止め”の観測が広がっているが、パウエル議長は「インフレの終結宣言を避けたい」と考えているのでは?
A.私はパウエル議長のことはよく知っているが、とても慎重な人だ。私はFRBが2%の物価目標の達成に向けて最後の経路を歩んでいる確率はかなり高いと思っているが、まだ不確かで100%ではない。市場というのは、ナイフの刃の上に座っているようなもので、パウエル議長の発言しだいで、どちらにも動く準備ができている。だからこそ、慎重になる必要があり、それが彼の自然なやり方なのだと思う。

Q.市場はパウエル議長の発言を、受け流しているようにも見える。
A.その判断は常に間違いが付きまとう。市場は、FRBの、中心ではない地区連銀の総裁や理事の発言にフォーカスし、重要視しすぎてしまう傾向にある。当然ながら理事の意見は無視すべきではないが、大きく割り引いて考えるべきだ。パウエル議長は、これまで何度も市場を説得しようとしてきたが、市場はそのことばを軽視して誤ってきたケースもある。こうした例は頻繁でないが、ときどき起こることなのだ。

Q.FRBのメンバーの間での考え方に違いは?
A.ことし8月以降、FRBのメンバーの間では、ますます見解が分かれるようになっている。ただ、金融政策を決める会合のメンバーでいますぐ利下げすべきだと考える人はいないはずだ。しばらくの間、利上げを見送るという点では強いコンセンサスが得られていると思う。

Q.市場ではFRBが来年早々に利下げに踏み切るという見方も出ているが?
A.それは少し早いと思う。「2023年12月までには金利が下がる」と市場が予測していた時、私は多くの人に「それは非現実的な予測だ」と言っていたことを思い出してもらいたい。同様に、2024年早期の利下げは事実上ありえないだろう。一方、マクロ経済やインフレの動向しだいでは「2024年前半の利下げ」の可能性はありえる。しかし、私が賭け事をするとしたら、「2024年後半の利下げ」に賭けると思う。

Q.インフレ再燃のリスクは?
A.可能性は低いと思うが、否定できない。その理由は2つ。1つは原油価格。中東で起きていること、ヨーロッパの真ん中で起きていることを考えれば、来年原油価格がどうなるかは誰にもわからない。もう一つは、生産性の伸びと、賃金・物価の相互作用についてだ。生産性の伸びは、賃金や物価に影響を及ぼすが、コロナ禍以降、プラスとマイナスに振れていて、予測不可能になっている。長期的には生産性の伸び次第でインフレの動向も変化するだろう。

Q.FRBは不況に陥ることなくインフレ率を2%の目標まで下げることができるか。
A.1年前の私なら、可能性は低いと言っていただろうが、経済指標の多くが不況を伴わない形で、インフレが鈍化していることを示している。厳しかった労働市場のひっ迫は緩みつつあり、トレンド以上の経済成長は続かないだろう。アメリカ経済は、減速する余地はあるが、FRBはソフトランディングを実現させられるのではないか。