イスラエル“ハマスのガザ地区トップ殺害が軍事作戦の目標”

ガザ地区に地上侵攻を続けるイスラエル軍は、南部の主要都市ハンユニスなど複数の地域で激しい戦闘を行っていて、イスラム組織ハマスのガザ地区トップ、シンワル指導者の殺害を目標として軍事作戦を継続する姿勢を鮮明にしています。

ガザ地区への地上侵攻を続けるイスラエル軍は9日、南部のハンユニスで戦闘を激化させ、ハマスの戦闘員を多数、殺害したなどと発表しました。

また、イスラエルのハネグビ国家安全保障顧問は、ハマスのガザ地区トップのヤヒヤ・シンワル指導者について9日、地元メディアに対し「殺害すればその後を継ぐ指導者は同じ目に遭わないようガザを去らなければならないと思うだろう。それがわれわれの計画だ」と述べ、指導者の殺害を目標として軍事作戦を継続する姿勢を鮮明にしました。

一方、ハマスの軍事部門は8日、イスラエル軍の車両を攻撃したとする映像を公開し、イスラエル軍もこの週末に兵士5人が死亡したと明らかにするなど、ハマス側も激しく抵抗しているとみられます。

ガザ地区では深刻な人道状況が続いていて、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のラザリーニ事務局長は8日付けの声明で「絶え間なく攻撃が続き、膨大なニーズに対して少ない人道物資が不規則に搬入される中、UNRWAが人々を助け、守る力は急速に弱まっている」として、即時停戦を強く呼びかけています。

専門家「戦闘継続の正当性と目的を国内外に明示」

イスラエルのハネグビ国家安全保障顧問が、ハマスのガザ地区トップのヤヒヤ・シンワル指導者の殺害を目指して軍事作戦を継続する姿勢を示したことについて、イスラエル・パレスチナ情勢に詳しい東京大学中東地域研究センターの鈴木啓之特任准教授は「戦闘で市民を含め多くの犠牲者が出ているいま、戦闘を継続する正当性と目的を国内外に示す必要があったとみられる。また、戦闘の終結の落としどころを示したと考えていいだろう」と話しています。

また、イスラエル軍のトップが「ハマスの組織が崩壊する兆しがある」と述べ、ハマスを壊滅に追い込むためさらに攻勢を強める姿勢を示したねらいについては「イスラエルとしては、ハマスの勢力がガザ地区内で力を失いつつあるということを示すことによって、戦闘の目的が達成されつつあるということを示しているのではないか」と分析しています。

一方で、ハマス幹部の殺害に向けた戦闘が続く限り民間人の巻き添えが増え続けると指摘し「イスラエル軍が過去にガザ地区で行った軍事行動を考えると、イスラエル軍は撤退する前に、最も激しい攻撃を行うことが多々ある。戦闘の終結に近づくことが犠牲者を少なくすることにつながるかといえば、そうではない」と述べ、強い懸念を示しました。