【10日詳細】イスラエル高官 ガザ地区ハマストップ殺害を重視

イスラエル軍はハマスのガザ地区トップのヤヒヤ・シンワル指導者が潜伏している可能性があるとみている南部のハンユニスを含む複数の地域で陸海空から激しい攻撃を続けています。ガザ地区の保健当局はこれまでの死者が1万7700人にのぼっていると明らかにしました。

イスラエルやパレスチナに関する日本時間12月10日の動きを、随時更新してお伝えします。

イスラエル軍トップ「ハマス 組織が崩壊する兆候」

イスラエル軍は、ガザ地区南部のハンユニスにハマスのガザ地区トップのヤヒヤ・シンワル指導者が潜伏している可能性があるとみて、軍事作戦を進めていて、10日、過去24時間にガザ地区の250以上の標的を攻撃したと明らかにしました。

軍トップのハレビ参謀総長は、9日、兵士を前に演説し「ここ数日、ハマスの戦闘員たちが投降している。組織が崩壊する兆候であり、より強く圧力をかける必要がある」と述べ、ハマスを壊滅に追い込むためさらに攻勢を強める姿勢を示しました。

また、軍のハガリ報道官は9日、「投降した戦闘員たちを取り調べたところ、シンワル指導者らがハマス側が苦戦していることを認めようとしていないことがわかった」として、ハマスの内部で指導部への不満が出ているという見方を示しました。

一方のハマスは、SNSを通じて、イスラエル軍に攻撃を加え兵士に多数の死傷者が出ているとアピールするなど、徹底抗戦を続けていると強調しています。

ガザ地区の保健当局 死者1万7700人に

ガザ地区の保健当局は9日、戦闘が始まってからこれまでの死者が1万7700人にのぼっていると明らかにしました。

ガザ地区では深刻な人道状況が続いていて、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のラザリーニ事務局長は8日付けの声明で、「絶え間なく攻撃が続き、膨大なニーズに対して少ない人道物資が不規則に搬入される中、UNRWAが人々を助け、守る力は急速に弱まっている」として、即時停戦を強く呼びかけています。

米政府 イスラエルに砲弾など武器 約1億650万ドル相当売却承認

アメリカ国務省は9日、イスラエルに対し、戦車の砲弾などおよそ1億650万ドル、日本円にして154億円あまりに相当する武器の売却を承認したと発表しました。

通常、外国などへの武器の売却は議会の審査を経て行われますが、今回、国務省は「アメリカの安全保障上、イスラエルに対しただちに武器を売却すべき緊急性がある」として議会の審査を省略して売却する手続きをとりました。

バイデン政権は、イスラエルに対し、ガザ地区の民間人を保護するための対応をとるよう働きかけていると強調しています。

しかし、イスラエル軍の攻撃による民間人の犠牲者が増え続ける中、与党・民主党の一部からもイスラエルへの武器の供与には一定の条件を設けるべきだなどという声が上がっていて、さらなる武器の供与には国内外から批判が強まることも予想されます。

NYで停戦求めるデモや集会

アメリカ・ニューヨークでは9日、パレスチナ・ガザ地区での停戦を求めるデモや集会が各地で行われました。

このうち、ブルックリン地区では、パレスチナを支持する団体が主催するデモが行われ、警察によりますと、およそ3500人が参加しました。

参加した人たちは、パレスチナの旗を振ったり、伝統の織物「クーフィーヤ」を身にまとったりして、「今すぐ停戦を」と訴えながら橋を渡ってマンハッタンまで練り歩きました。前日の8日には、国連の安全保障理事会でアメリカが拒否権を行使して人道目的の即時停戦を求める決議案が否決され、このことを批判する声も多く聞かれました。

22歳の女性は「本当にひどいことで悲劇的だ。アメリカ人であることを恥ずかしく思う」と話していました。

また、別の場所では、イスラエルの人たちが集会を開き人質の解放とともに、即時停戦を求めて祈りがささげられました。

この集会の主催者で、今回の戦闘でおばがハマスに殺害されたという女性は「アメリカの拒否権行使はとんでもない間違いで、軍事的な解決方法ではより多くの市民が意味もなく犠牲になるだけだ。悲しみに暮れているが、軍事行動によっておばが帰ってくるわけではなく停戦を求める」と話していました。

イスラエル軍 ハンユニスの一部地区の住民に避難を通告

イスラエル軍のアラビア語の報道官は9日、SNSでハンユニスの一部地区の住民に避難するよう通告し、ロイター通信はこれまでの通告に含まれていない市中心部の地区も対象だと伝えています。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、ハンユニスでは9日、イスラエル軍の攻撃で2人が死亡し複数がけがをしたと伝えています。

ハマスの軍事部門は8日、イスラエル軍の車両を攻撃したとする映像を公開し、イスラエル軍もこの週末に兵士5人が死亡したと明らかにするなど、ハマス側も激しく抵抗しているとみられます。

“ガザ地区トップの殺害 軍事作戦の目標達成につながる”

ヤヒヤ・シンワル指導者

イスラエルのハネグビ国家安全保障顧問は、9日、地元メディアのインタビューに応じ、ハマスのガザ地区トップのヤヒヤ・シンワル指導者について「殺害すればその後を継ぐ指導者は同じ目に遭わないようガザを去らなければならないと思うだろう。それがわれわれの計画だ」と述べ、シンワル氏の殺害が軍事作戦の目標の達成につながるという考えを示しました。

また、ロイター通信によりますとハネグビ氏は、これまでにハマスの戦闘員を少なくとも7000人殺害したと明らかにし、軍事作戦の成果もアピールしました。

ただ、この人数は、ガザ地区の保健当局がこれまでに明らかにしている死者1万7700人に含まれているのかは不明です。

イスラエル軍の攻撃を受けたハンユニスの民家は

ロイター通信はガザ地区南部のハンユニスで9日、イスラエル軍による攻撃を受けた住宅の映像を配信しています。

映像では大きく壊れた建物から激しい炎と黒煙が上がり、消火活動が行われている様子が確認できます。

住民の男性は、国連の安全保障理事会で即時停戦を求める決議案が否決されたことについて、「アメリカの拒否権はアメリカの兵器により昼夜を問わず爆撃され、命を落としている人々に対する拒否権だ」と激しい口調で訴えています。

“ハマス戦闘員 国連運営学校から攻撃”イスラエル軍 動画投稿

イスラエル軍は9日、ガザ地区の北部にあるUNRWA(あんるわ)=国連パレスチナ難民救済事業機関が運営する学校からハマスの戦闘員が攻撃してきたと発表し、その映像だとする動画をSNSに投稿しました。

また、軍の部隊が学校にあった大きなぬいぐるみの中に銃が隠されていたのを発見したとする動画も投稿し「ハマスの戦闘員は子どもたちの遊び道具に武器を隠し、ガザの子どもたちを意図的に危険にさらしている」と主張しました。

イスラエル軍としては、ガザ地区で民間人の犠牲に歯止めがかからず、国際社会から批判が強まる中で、軍事作戦の正当性をアピールするねらいがあるとみられます。

イスラエル首相「正義の戦争を続ける」

イスラエルのネタニヤフ首相は9日、SNSに演説の動画を投稿し、アメリカが国連安保理で人道目的の即時停戦を求める決議案に拒否権を行使したことについて、「アメリカが安保理で示してきた正しい姿勢を大いに評価したい」と述べました。

その上で、「ほかの国々も、ハマスの壊滅を支持するのと同時に、戦争の停止も求めることは不可能だと理解する必要がある。イスラエルはハマスを壊滅するための正義の戦争を続ける」と主張し、軍事作戦の正当性を強調しました。

フーシ派「イスラエルの港に向かう船舶は航行を阻止」

イスラエルに敵対するイエメンの反政府勢力フーシ派は9日、「イスラエルの港に向かう船舶はどの国の船であっても航行を阻止する。ガザ地区に必要な食料や医療物資が届けられないかぎり、イスラエルに向かう船は攻撃の対象になる。すべての船舶と企業に対し、イスラエルと取り引きしないよう警告する」とする声明を発表しました。

一方、イスラエルと関係のない船舶やイスラエルに物資を輸送しない船舶については、紅海などを経由する貿易活動が継続できるよう全力をつくすなどとしています。フーシ派はこれまでもイスラエルの船舶や関係する船舶の紅海などでの航行を阻止するなどと主張していて、影響の拡大が懸念されます。