香港の区議選 投票進む 投票率は前回を大きく下回る見方

香港では10日、地方議会にあたる区議会の議員選挙の投票が行われています。前回4年前の選挙で圧勝した民主派は、選挙制度の変更によって1人も立候補できず、選挙への有権者の関心は低く、投票率は前回を大きく下回るという見方が広がっています。

香港区議会議員選挙の投票は10日朝から行われていて、香港政府トップの李家超行政長官も香港島中心部の投票所を訪れて1票を投じていました。

4年に1度行われる香港の区議会議員選挙は、かつては香港で最も民意を反映しやすい選挙とされ、大規模な抗議活動が起きた前回・2019年の選挙では、政府に批判的な立場の民主派が、市民の直接投票で決まる議席の8割以上を獲得して圧勝しました。

しかしことし7月の選挙制度の変更で、直接投票で決まる議席の数が全議席の2割以下に削減され、選挙に立候補するには、政府が任命する委員会のメンバーの推薦が必要とされたため、民主派は1人も立候補できませんでした。

また直接投票以外の議席は政府が委任するなど、親中派に極めて有利な仕組みとなり、区議会の470議席は親中派がほぼ独占する見通しです。

このため有権者の関心は低調で、選挙管理委員会によりますと、日本時間午後4時半現在の投票率は17.3%で、最終の投票率は、71.2%だった前回を大きく下回るという見方が広がっています。

投票は、日本時間の10日午後11時半まで行われ、即日開票されます。

変更された選挙制度とは

香港の区議会議員選挙は、地方議会にあたる18の区議会の議員を選ぶ選挙で、ことし7月に選挙制度が変更されました。

かつては479議席の全議席のうち9割以上の452議席が市民の直接投票で選ばれ、香港で最も民意を反映しやすい選挙とされ、政府に対する大規模な抗議活動のさなかに行われた前回・2019年の選挙では、民主派が直接投票で決まる議席の8割以上を獲得して、圧勝しました。

しかし中国の習近平指導部は、その後、香港への統制を強め、3年前に、反政府的な動きを取り締まる「香港国家安全維持法」を施行したほか、選挙制度の変更も迫り、体制に批判的な議員は排除される形となりました。

「愛国者による統治」を確保するためだとして変更された新たな制度では、
▽全議席は479から470となり、
▽市民の直接投票で決まる議席数は2割以下の88議席に削減されました。

さらに選挙に立候補するには、政府が区ごとに任命する3つの委員会のメンバー合わせて9人以上の推薦が必要とされました。

委員会のメンバーはほとんどが政府を支持する立場の親中派であることから、相反する立場の民主派の立候補は厳しく制限されることになりました。

一方で、
▽政府が委任する枠が179議席、
▽政府が任命する委員会のメンバーが選ぶ枠が176議席、それぞれ設けられるなど、親中派に極めて有利な仕組みで区議会の議席を親中派がほぼ独占する見通しです。

立候補断念の民主派議員は

現役の区議会議員、朱子洛さんは、今回の選挙で、民主派最大の政党「民主党」から立候補を目指しました。

朱さんは、前回・2019年の選挙で初めて当選し、この4年間、街の再開発問題など市民に身近な問題について要望を聞き、政府に改善を働きかける区議会議員の仕事に大きなやりがいを感じてきたといいます。

しかし今回の選挙では、立候補するには、政府が区ごとに任命する3つの委員会のメンバー合わせて9人以上の推薦を受けることが条件となりました。

しかし委員会のメンバーのほとんどは政府を支持する親中派で、民主派とは立場が異なり、推薦は受けられませんでした。

朱さんは「メンバーからは民主党の党員だと知られ、避けられている」と話していました。

「民主党」は、朱さんを含め6人の候補の擁立を目指しましたが、結局、必要な数の推薦を集められず、1人も擁立できませんでした。

党の創設以来、およそ30年で初めてのことです。

朱さんは「推薦によって候補者が事前に選別され、政府がふさわしいと思う人だけが立候補できる。市民はその中から選ぶしかない。これが本当の選択といえるのでしょうか」と話し、悔しさをにじませていました。

香港政府 行政長官 「選ばれる区議会議員 愛国者で社会に奉仕」

香港政府トップの李家超行政長官は10日、香港島中心部の投票所で投票を済ませたあと記者団に対し「今回選ばれる区議会議員は香港全体の利益にかなうだろう。なぜならみな愛国者であり、私たちとともに社会に奉仕するからだ」と述べました。

香港の有権者 関心低く

今回の香港区議会議員選挙について、10日、香港の有権者からは、選挙に関心がないといった声が多く聞かれました。

このうち前回は投票に行ったという50歳の女性は「今回の選挙では、どの候補者にもどの政党にも投票したくないので、投票には行きません」と話していました。

また28歳の男性は「選挙に興味はありません。候補者が何を代表しているのか何を訴えているのかよく分からないので、投票しません」と話していました。

24歳の男性も「選挙があることは知っていたけれど、きょうだとは知りませんでした。仕事が忙しいので行きません」と話していました。