COP28 中国が太陽光発電製造大国として取り組みをアピール

気候変動対策を話し合う国連の会議、COP28では、化石燃料から再生可能エネルギーにどう移行していくかが焦点の一つになっています。太陽光発電の導入を急速に進める中国は太陽光発電の製造大国としても存在感を高めていて、COP28で取り組みをアピールしています。

2060年までに二酸化炭素の排出量を減少実質ゼロを目標に

世界最大の温室効果ガスの排出国 中国は2030年までに二酸化炭素の排出量を減少に転じさせ、2060年までに実質ゼロにする目標を掲げています。

目標達成に向けて力を入れているのが再生可能エネルギーの導入や製造です。

気候変動やエネルギー政策などについて情報発信を行うウェブサイト「カーボン・ブリーフ」が11月発表した分析によりますと、再生可能エネルギーの導入はことし記録的なペースで進みました。

このうち、太陽光発電は210ギガワットの増加が見込まれているとしています。これは大型の火力発電所の200基以上に相当します。

さらに、こうした再生可能エネルギーの拡大で、来年は二酸化炭素の排出量が減少に転ずる可能性があると予測しています。

12月1日のCOP28の首脳級会合で中国の丁薛祥筆頭副首相が演説し、「私たちはグリーンな開発を進めるために強力な行動をとってきた。中国は海外での新規の石炭火力発電所の建設を完全に止め、風力発電は世界の50%、太陽光発電は世界の80%を供給している」などと述べ、取り組みをアピールしています。

ただ、中国は依然として電力のおよそ60%を石炭火力発電所が占めていて、今後も依存が続くとみられ、化石燃料からの脱却は引き続き大きな課題になっています。

太陽光発電メーカー 国内への供給とともに海外進出も加速

中国の太陽光発電メーカーは国内への供給とともに、海外への進出も加速させています。

COP28の会場でも中国政府のパビリオンには太陽光パネルの模型などが展示され、メーカーはサイドイベントを行うなどして製品をアピールしています。

このうち、太陽光パネルの出荷量で世界最大の中国のメーカー「ジンコソーラー」は8日、アフリカの国々を対象に、石炭など化石燃料を利用した電力に代わる太陽光発電の導入を支援すると訴えていました。

このメーカーは中国以外に日本やアメリカ、ヨーロッパなど180以上の国に製品を供給していて、COP28の議長国UAEで稼働している世界最大級の太陽光発電所のパネルも製造しました。

国内外の太陽光パネルの出荷量は2021年の第1四半期には累計で100ギガワットでしたが、11月には2倍の200ギガワットに達したということです。

高まる需要に対応するため、国内だけでなく海外でも製造を行っていて、これまでに14か所の生産拠点をベトナムやアメリカなどに設けています。

「ジンコソーラー」の銭晶副社長は「世界をリードする技術を大量に、そして安価に短期間で提供できたことは奇跡的だ。今後も生産能力を強化して、高まる需要に対応していきたい」と話していました。

また、中国政府のパビリオンを訪れたカタールからの男性は「中国の製品は太陽光を電気に変換する効率が高い。中国は再生可能エネルギーの先進国だ」と話していました。

中国に依存する世界の太陽光発電

世界は太陽光発電の主要部品を中国に大きく依存しています。

IEA=国際エネルギー機関は2022年に発表した報告書で、この10年間で世界の太陽光発電の生産能力は欧米や日本から中国へ移行してきたと指摘しています。

そして、中国政府は国内需要の拡大を重点に置き、生産量を増やすことで費用の削減につなげ、太陽光発電設備の価格低下を実現したとしています。

その上で、中国政府の政策が世界の太陽光発電の需要や供給、価格を形づくり、太陽光発電の主要部品に占める中国製品のシェアは80%を超え、2025年までに95%になると予測しています。

中国政府が企業の研究開発を後押し

太陽光パネルで発電された電力を変換するインバーターや、蓄電池を製造する中国の会社は、中国政府の政策が研究開発を後押ししていると指摘しています。

この会社の製品は150か国以上に供給されていて、ことしの売上は9月時点で前の年を1.2倍ほど上回り、およそ464億人民元、日本円でおよそ9400億円にのぼるということです。

中国の会社が太陽光発電の主要な製品で業界のトップシェアを占めている理由として、政府が技術開発が進むよう再生可能エネルギーの大規模事業に投資していることや、市場の需要を高める政策を打ち出していることなど政府の支援が大きいことをあげています。

「サングロウ・パワー・サプライ」の日本支社の徐※カン社長は日本や欧米などが太陽光発電関連の製品の生産を増やしていることについて、「中国は完全に完璧なサプライチェーンを構築しているので、高い品質のものを低価格で提供できる」と話し、自社の製品に自信を示しました。

※“くさかんむり”の下に「函」

国策で脱炭素を進めていることが背景に

中国で太陽光発電の導入が加速していることについて、太陽光発電のコンサルティング業務を行う「資源総合システム」の貝塚泉企画部長は「中国は脱炭素は経済振興の機会になると捉え、気候変動と経済成長が一緒に実現できると考えている。各省と自治区に対して消費電力の中の再エネ比率の目標を作り、中央政府の大きな方針に各省庁が沿う形になっている」として、国策として脱炭素を進めていることが背景にあると指摘しています。

その上で、「中国国内の安定した需要、成長市場がある中で中国の企業は生産能力を拡張できた。国内にサプライチェーンがあることも大きい。太陽電池の世界では中国の企業のシェアが高く、いまや一つのブランドになっている」と話しています。

一方で、各国が太陽光発電の主要な製品で中国に依存していることについて、「脱炭素の担い手である太陽光発電に関して、生産が1地域に依存していることは非常にリスクになる」と述べ、中国の工場が止まれば部品が入らなかったり、価格が上がったりするなど影響が少なくないとして、各国はサプライチェーンを分散する必要があると指摘しています。