ロシア プーチン大統領 来年3月の大統領選挙に立候補を表明

ロシアのプーチン大統領は来年3月に行われる大統領選挙に立候補する意向を表明しました。選挙を通じて国民に結束を訴えながら、政権基盤を一層、固め、ウクライナへの軍事侵攻を続けていく構えとみられます。

プーチン大統領 立候補表明「今が決断のとき」

ロシアのプーチン大統領は8日、首都モスクワのクレムリンで開かれた、ウクライナへの軍事侵攻に参加する兵士などをたたえる式典に出席しました。

式典のあと、参加した兵士などがプーチン大統領のもとに駆け寄り、「あなたが私たちの大統領だ。ロシアはあなたを必要としている」などと訴えかけました。

これに対して、プーチン大統領は「今が決断のときだ」と応じ、来年3月17日に行われる大統領選挙に立候補する意向を表明しました。

2000年に初めて当選したプーチン大統領にとっては通算5回目の立候補となり、当選すれば新たな任期は2030年までとなります。

大統領選挙をめぐってプーチン政権はウクライナの南部クリミアのほか、去年、一方的に併合を宣言した東部と南部の4つの州でも強行するとしています。

国営テレビで放送された今回の立候補表明は、兵士から直接、請われたとする形が強調されていて、戦時下のロシアでプーチン大統領の存在は欠かせないと強調するねらいとみられます。

有力な対立候補はおらず、プーチン氏の当選は確実視されています。

プーチン大統領としては国の存亡をかけた戦争が続いているとして国民に結束を訴えながら、政権基盤を一層固め、軍事侵攻を続けていく構えとみられます。

立候補は既定路線 表明時期が焦点

ウクライナへの軍事侵攻が続く中、ロシア国内ではプーチン氏の立候補は既定路線だという見方が大勢で、いつ表明するのかが焦点となっていました。

ことし9月、国際会議の場で司会者から意向を固めたのか質問されたプーチン大統領は「法律に従えば、ロシアの議会は年末に選挙について決定を下すことになっている。選挙の日程が指定されたら今後、話し合う」と述べるにとどめ、態度を明らかにしませんでした。

その一方で、先月上旬から、首都モスクワではロシアの発展を誇示する大規模な博覧会が開かれ、メディアは大統領の業績をアピールする事実上の選挙活動が始まったと伝えていました。

また、プーチン大統領は先月28日にはロシア正教会などがモスクワで開いた保守派の大規模集会にオンラインで参加し、欧米との対決姿勢を打ち出して国民に結束を訴えるなど、大統領選挙を意識したとみられる発言が相次いでいました。

そして、ロシアの議会上院が7日、来年の大統領選挙の日程について、3月17日に実施することを決定し、プーチン大統領は近く立候補を表明するという見方が専門家などの間で強まっていました。

ペスコフ報道官「多くの人が立候補求め支持している」

ロシア大統領府のペスコフ報道官は8日、プーチン大統領が大統領選挙に立候補する意向を表明する直前、記者団に対し、今月14日に開催予定の大統領が国民からの質問に直接答えるイベントに向けて、「多くの人たちがプーチン大統領に立候補するよう求め、全面的な支持を表明している」と述べていました。

反体制派の指導者“プーチン大統領以外の候補者に投票を”

ロシアでプーチン政権を批判する急先ぽうとして知られ、刑務所に収監されている反体制派の指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏は大統領選挙の日程が正式に決まった7日、みずからを支援する団体を通じて、プーチン大統領以外の候補者に投票するよう呼びかけました。

ナワリヌイ氏を支援する団体は「プーチンのいないロシア」というタイトルのウェブサイトを立ち上げていて、この中では、プーチン氏に投票しないよう少なくとも10人を説得することなど、各自が行動を起こすよう求めています。

ロシアの独立系メディアによりますと、首都モスクワや第2の都市サンクトペテルブルクでこのウェブサイトを読み取るためのQRコードが付いた看板などが設置されたものの、当局がすでに撤去したということです。

ナワリヌイ氏は毒殺未遂事件のあと、おととし、療養先のドイツから帰国した際に過去の経済事件を理由に逮捕され、実刑判決を受けて刑務所に収監されています。

モスクワ市民からは賛否の声

プーチン大統領が大統領選挙に立候補する意向を表明したことについて、首都モスクワの市民からはさまざまな声が聞かれました。

このうち、学生だという女性は「選挙はとても興味深いものになるだろう。プーチン大統領に投票するつもりで、彼が当選することを願っている」と話していました。

また、別の男性は「プーチン氏が大統領を続けることを望んでいる。彼はとても強い人であり、あらゆる方面からの圧力にも耐えられるからだ。ロシアが防衛され、最終的には平和がもたらされることを期待している」と話していました。

一方、別の女性は「プーチン大統領に反対していて、彼には投票しない。戦争や特別軍事作戦は悪いことであり、ロシアの人々は平和に暮らし、発展し、幸せな生活を送ることを望んでいる。そうなるように今回の選挙が影響を与えることを願っている」と話していました。

また、ウクライナ東部のドンバス地域の出身だという女性は「ウクライナとの戦争が終わることを期待している。プーチン大統領は長く政権にいすぎると思う」と述べる一方で、「他の誰かに投票しても何も変わらないだろう。必ずプーチン大統領が残り続けるのだろう」と悲観的な様子で話していました。

キーウ市民“戦闘の長期化懸念”“戦い続けるべき”

また、ウクライナの首都キーウでは戦闘の長期化への懸念が聞かれる一方、勝利するまで戦い続けるべきだという声が聞かれました。

このうち、キーウ市内に住む女性は「プーチン氏が再選されたらと思うと、とても不安です。早く終わると言われていた戦争が長期化していて、子どもたちの将来が心配です」と話していました。

一方、37歳の運転手の男性は「独裁的なので、反対する人は何もできずに選挙は行われ、プーチン氏は再選されるのだろう。私たちは勝利のために友好国から武器などの支援が必要です」と話していました。

また、教師の女性は「プーチン氏が再び大統領になろうがなるまいが、私たちは戦って勝たなければならない。ウクライナ人にとっては、勝利こそが重要です」と話していました。