ガザ地区 戦闘開始から2か月で1万7000人以上が死亡

イスラエル軍とイスラム組織ハマスは戦闘が始まってから2か月となった7日も、ガザ地区南部のハンユニスなどで激しい戦闘を続けています。ガザ地区の保健当局は、この2か月で1万7000人以上が死亡したとしていて、イスラエル軍がハマスの壊滅を掲げて攻勢を強める中、民間人の犠牲に歯止めがかからない状態が続いています。

ことし10月7日にガザ地区を実効支配するハマスの戦闘員などがイスラエル側を襲撃し、これに対してイスラエル軍がガザ地区での大規模な軍事作戦に乗り出してから、7日で2か月となりました。

イスラエル軍は7日もガザ地区南部のハンユニスを中心に多くのハマスの拠点などを攻撃したと明らかにし、ハマスのガザ地区のヤヒヤ・シンワル指導者が市内に潜伏している可能性があるとみて、捜索を続けているもようです。

これに対してハマスも7日、ハンユニスの周辺でイスラエル軍の戦車にロケット弾などで攻撃を加えたとSNSで明らかにし、双方の激しい攻防が続いています。

ガザ地区の保健当局によりますと、ハンユニスのナセル病院には、およそ1000人のけが人がいて、病床が足らず多くの患者が床に横たわることを余儀なくされているということです。

保健当局によりますと、ガザ地区では前日からの24時間に新たに350人が死亡し、この2か月での死者は1万7177人に上り、その多くが子どもや女性とされています。

イスラエル軍はハマスが依然として138人の人質を拘束しているとして、ハマスを壊滅させ人質全員を解放するまで軍事作戦を続ける構えで、今後さらに民間人の犠牲が増えることが懸念されます。

避難中の女性「どこで子どもを育てれば…」

イスラエル軍が、パレスチナのガザ地区の北部に続いて南部にも地上侵攻を進めるなか、中部のデルバラハの病院には多くの人が避難しています。

このうち28歳の女性は、先月24日に生まれたばかり娘を連れて、病院の外に設けられた仮設のテントに身を寄せています。

寒さの中、女性は娘を布で何重にもくるんで、木で作られた簡易なベビーベッドに寝かしつけていました。

女性は「とても寒いし、生きるために必要な基本的なものが不足しています。このような状況の中では娘のために何も用意できません」として、ミルクやおむつを確保することも難しいと、話していました。

そして「私たちはいったいどこで子どもを育てればいいのでしょうか。戦争が終わり、早く自宅に帰りたいです」と嘆いていました。

人質の家族「弟たちを恐怖に」

イスラエル政府によりますと、ガザ地区でハマス側の人質となっている人は138人いますが、戦闘開始から2か月がたっても解放の見通しが立たないことに、家族は焦りを募らせています。

ガル・ギルボアダラルさん(29)は2か月前の10月7日、弟のガイさん(22)とともにガザ地区との境界近くで開かれた音楽イベントでハマスに襲撃されました。

みずからはくぼ地などに8時間隠れて無事でしたが、ガイさんは友人とともに連れ去られました。

ハマスが公開した映像で人質となっているのが確認され、当時についてガルさんは「ショックで家族全員が食べることも寝ることも話すこともできなかった」と振り返ります。

その後、7日間の戦闘休止期間などに女性と子どもを中心に110人の人質が解放されましたが、イスラエル軍は今月1日から軍事作戦を再開し、残る人たちの居場所は明らかになっていません。

ガルさんは「戻ってきた人たちのことを思うとうれしい一方、羨ましい。爆撃は弟たちを恐怖に陥れていると思うし、軍事作戦は再開してほしくなかった」と話します。

一部の家族は、人質の健康状態が悪化しているおそれがあるとして、今月5日、ネタニヤフ首相と面会し、戦闘より人質の解放を優先させるよう迫りました。

ガルさんは「この戦争によって失われる一つ一つの命が悲劇だ」とした上で「私も弟も、パレスチナ人への憎しみなど抱いたことがない。私は相手のことを出身地や言語や宗教に基づいてではなく、1人の人間として見ている」と強調します。

弟のガイさんはアニメなど日本文化が好きで来年の春、初めて日本を訪れる予定だったということで、ガルさんは「一緒に日本でおいしいものを食べ、名所を回りたい。弟とともに、平和に暮らしたい」と切実な願いを口にしました。