「くらげのパポちゃん」かこさとしさんの未発表作品が見つかる

「だるまちゃん」シリーズなどで知られる絵本作家で、5年前に92歳で亡くなったかこさとしさんの未発表の作品が、神奈川県藤沢市の自宅で見つかりました。戦争で死別した親子のために1匹のクラゲが奮闘する物語で、かこさんの長女は「戦争は二度とあってほしくないという父の祈りのような気持ちが込められていると思う」と話しています。

「だるまちゃん」シリーズや「からすのパンやさん」などで知られる絵本作家のかこさとしさんは、ユーモラスな作品から科学をテーマにした絵本まで600点以上を発表し、5年前に92歳で亡くなりました。

未発表の作品は、かこさんの作品を管理している長女の鈴木万里さんが、神奈川県藤沢市にあるかこさんの自宅で古い原稿を整理しているときに見つけました。

「くらげのパポちゃん」という題名で、ある少年が戦争で父親を失ったことを知った1匹のクラゲが、遠い南の海に沈んでいる少年の父親を探そうと、奮闘する物語です。

原稿用紙14枚にわたって万年筆でつづられていて、末尾の日付から絵本作家としてデビューする前の昭和25年から昭和30年にかけて制作したものとみられます。

かこさんは当時、子どもたちに紙芝居の読み聞かせを始めた時期で、シーンごとにページ数が振られていることから、紙芝居にするために書かれたと見られています。

鈴木さんは「怖い話ではなく可愛い話で、それでいて心に刺さる物語だ。戦争はクラゲちゃんにすら何かやってあげなきゃと思わせるほど悲しいものを少年の家族にもたらしてしまった。そんなことは二度とあってほしくないという父の祈りのような気持ちが込められていると思う。世界各地で紛争が起きている今、私たちの国でもかつて戦争があったことを知っておかなくてはいけないのではないか」と話していました。