現役ドラフトで12選手の移籍成立 ドラフト1位入団選手は3人

プロ野球で出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化するために去年から導入された「現役ドラフト」が8日に行われ、ロッテの佐々木千隼投手がDeNAに、阪神の馬場皐輔投手が巨人に移籍することが決まるなどドラフト1位で入団した3人を含む12人の選手の移籍が成立しました。

各選手の名簿や談話などをまとめています。

8日17:04 NPB=日本野球機構が移籍成立選手を発表

各球団1人ずつ、合わせて12人の選手の移籍が決まりSNSなどで発表されました。2巡目は行われなかったということです。

【全12選手名簿・談話】

今回移籍が決まった選手の一覧です。
※《獲得球団》選手名(ポジション・投打)。
年齢は12月8日現在。
成績は2023年シーズン。

=セ・リーグ=

《阪神》漆原 大晟(オリックス 投・右投左打)

27歳 新潟明訓高-新潟医療福祉大 2018年育成1位
16試合 0勝0敗0S1H 防御率3.00

漆原投手は「在籍した5年間でいろいろなことを学び、成長させてもらったオリックスには、感謝の気持ちしかありません。指名していただいた阪神タイガースで活躍することが恩返しにもつながると思いますので、1試合でも多くチームの勝利に貢献できるように頑張ります」とコメントしています。

漆原投手を獲得した阪神の岡田彰布監督は「中継ぎになってからすごくよかったと聞いたし、ある程度迷わずに指名した。ストレートが速い印象で、まだ活躍できる可能性はあるピッチャーだと思う。キャンプでどういうボールを投げるのか楽しみだ」と期待している様子でした。

【2022年現役ドラフト獲得選手】
大竹 耕太郎(投 左投左打=前所属ソフトバンク)
21試合 12勝2敗0S0H 防御率2.26

《広島》内間 拓馬(楽天 投・右投右打)

25歳 沖縄・宜野座高-亜細亜大 2020年4位指名
2023年一軍出場なし

内間投手は「突然で驚きましたが、自分の立場を考えて、あるのかなとも思ってはいたので、前向きにとらえて、新天地でいちから頑張っていきたいという気持ちです。リーグが違いますので、来年は自分も成績を残して、イーグルスと日本シリーズで戦いたいと思っています。ファームにも足を運んでくださる方が多く、ファンのみなさんがチームをたくさん応援してくれていることを感じることができた3年間でした。違うチームにはなりますが、引き続き温かく応援していただけるとうれしいです」と球団を通じてコメントしています。

【2022年現役ドラフト獲得選手】
戸根 千明(投 左投左打=前所属巨人)
24試合 1勝0敗0S5H 防御率4.64

《DeNA》佐々木 千隼(ロッテ 投・右投右打)

29歳 東京・日野高-桜美林大 2016年1位指名
2試合 0勝0敗0S0H 防御率3.00

佐々木千隼投手は球団を通じて「ロッテを離れるのはとても寂しいです。ただ自分にとってはプラスのことなので、新天地で精一杯頑張りたいと思います。ファンの皆様には7年間、いい時も悪い時も変わらず、すごい声援をいただき、ありがとうございました。ことしZOZOマリンスタジアムで最後に登板した際に、登場曲が流れ、スタンドからすごい声援をいただいたことが忘れられません」とコメントしています。

【2022年現役ドラフト獲得選手】
笠原 祥太郎(投 左投左打=前所属中日)
2試合 0勝2敗0S0H 防御率4.50

《巨人》馬場 皐輔(阪神 投・右投右打)

28歳 仙台育英高-仙台大 2017年1位指名
19試合 2勝1敗0S3H 防御率2.45

馬場投手は「自分にとってすごくチャンスだと思うので、気持ちを切り替えて、新天地のジャイアンツでチームに貢献していきたい。阪神対巨人の“伝統の一戦”でタイガースを相手に全力で勝負する姿をファンに見せることができるように頑張りたい」というコメントを出しました。

馬場投手を獲得した巨人の阿部慎之助監督は「実力のある投手を獲得することができた。ジャイアンツの一員として、存分に力を発揮してくれることを期待している」と球団を通してコメントしています。

【2022年現役ドラフト獲得選手】
オコエ 瑠偉(外 右投右打=前所属楽天)
41試合 打率.235 2HR 6打点 1盗塁

《ヤクルト》北村 拓己(巨人 内・右投右打)

28歳 石川・星稜高-亜細亜大 2017年4位指名
27試合 34打数7安打 打率.206 0HR 0打点 0盗塁

北村拓己選手は球団を通して「素晴らしい監督やコーチ、チームメイトに恵まれ、かけがえのない時間を過ごさせていただきました。お世話になったジャイアンツに恩返しができるよう、これからお世話になるヤクルトの力になれるよう、一生懸命頑張ります」とコメントしています。

巨人の阿部慎之助監督は「ヤクルトに移籍する北村選手は来シーズンからライバルになるが、一野球人として活躍を期待している」と球団を通してコメントしています。

【2022年現役ドラフト獲得選手】
成田 翔(投 左投左打=前所属ロッテ)
3試合 0勝0敗0S0H 防御率5.40

《中日》梅野 雄吾(ヤクルト 投・右投右打)

24歳 福岡・九産大九州産高 2016年3位指名
5試合 0勝0敗0S0H 防御率3.38

梅野雄吾投手は球団を通じて「けがも多く、目立った活躍もできませんでしたが、移籍先で活躍することが今まで指導してくださった方や応援してくださったファンの方への恩返しになると思って、新天地では心機一転頑張ります」とコメントしています。

【2022年現役ドラフト獲得選手】
細川 成也(外 右投右打=前所属DeNA)
140試合 打率.253 24HR 78打点 0盗塁

=パ・リーグ=

《オリックス》鈴木 博志(中日 投・右投右打)

26歳 静岡・磐田東高-ヤマハ 2017年1位指名
9試合 1勝2敗0S1H 防御率4.07

鈴木博志投手は球団を通じて「中日ドラゴンズには6年間お世話になりました。離れるのは寂しいですが、チャンスだと思って、新しいチームに行っても頑張ります」とコメントしています。

【2022年現役ドラフト獲得選手】
渡邉 大樹(外 右投右打=前所属ヤクルト)
1試合 打率.000 0HR0打点0盗塁

《ロッテ》愛斗(西武 外・右投右打)

26歳 埼玉・花咲徳栄高 2015年4位指名
73試合257打数55安打 打率.214 4HR15打点2盗塁

愛斗選手は、球団を通じて「西武には8年いたが、後輩と過ごした時間は一番の思い出だ。ロッテには台湾ウインターリーグで一緒だった選手や同級生もいるので、そういう面では安心だ。信頼を得ていくところからスタートになるので、1年目という気持ちで、自分のできることをやっていきたい」などとコメントしています。

【2022年現役ドラフト獲得選手】
大下 誠一郎(内 右投右打=前所属オリックス)
23試合 打率.227 1HR2打点0盗塁

《ソフトバンク》長谷川 威展(日本ハム 投・左投左打)

24歳 花咲徳栄高-金沢学院大 2021年6位指名
9試合 0勝0敗0S0H 防御率1.08

ソフトバンクへの移籍が決まったプロ2年目の長谷川投手は球団を通じて「2年間という短い間でしたが温かいご声援ありがとうございました。エスコンフィールド北海道でのたくさんの応援はとても力になりました。ファイターズファンのみなさんに活躍している姿を見せられるようにこれからも頑張ります」とコメントしています。

【2022年現役ドラフト獲得選手】
古川 侑利(投 右投右打=前所属日本ハム)
9試合 0勝0敗0S0H 防御率4.50

《楽天》櫻井 周斗(DeNA 投・左投左打)

24歳 東京・日大三高 2017年5位指名
2023年一軍出場なし

櫻井投手は球団を通じて「6年間ベイスターズではお世話になりました。ここまで育ててくれた関係者のみなさま、裏方さん、監督・コーチ、そして何よりファンのみなさまに本当に感謝しています。6年間の中で、2年目に横浜スタジアムで初登板したときが一番の思い出です。その経験がこれからの自分につながってくると思うので、次の新天地でも頑張りたいと思います」とコメントしています。

【2022年現役ドラフト獲得選手】
正隨 優弥(外 右投右打=前所属広島)
1試合 打率.000 0HR0打点0盗塁

《西武》中村 祐太(広島 投・右投右打)

28歳 東京・関東第一高 2013年5位指名
5試合 0勝0敗0S0H 防御率1.29

中村祐太投手は広島での10年間では通算42試合に登板して11勝15敗でした。中村投手は「この機会をチャンスだと思って新天地で頑張りたい。カープファンの皆様、10年間応援していただき本当にありがとうございました」とコメントしています。

【2022年現役ドラフト獲得選手】
陽川 尚将(内 右投右打=前所属阪神)
9試合 打率.167 1HR1打点0盗塁

《日本ハム》水谷 瞬(ソフトバンク 外・右投右打)

22歳 島根・石見智翠館高 2018年5位指名
2023年一軍出場なし

水谷選手は、球団を通じて「ホークスで活躍したかったという思いや、さみしい気持ちがありますが、新しいチームで野球選手として成長するチャンスをいただいたと前向きに考えています。日本ハムは、自分と同世代の選手が主力として試合に出ている印象があるので、チームに入ればやってやろうという気持ちが高まっていくと思います」などとコメントしています。

【2022年現役ドラフト獲得選手】
松岡 洸希(投 右投右打=前所属西武)
一軍出場なし

選手会事務局長「制度としていい方向にいっている」

日本プロ野球選手会の森忠仁 事務局長はドラフト1位が3人移籍した今回の現役ドラフトについて「ふつうだとドラフト1位で入団した選手は長く球団にいるというのがあるが、他球団に移籍したほうがいいものを出せる、環境を変えてあげられればという球団の気持ちが出ているのかなと思った」と分析していました。その上で「今回も魅力ある選手が出ていて制度としていい方向にいっていると思うし、このまま根づいてほしい」とコメントしています。

《解説》活性化めざし規定変更の今回も1巡目の12人で終了

前年までで通算10勝の大竹は移籍初年に12勝

自己最多の12勝を挙げて日本一に大きく貢献した阪神の大竹耕太郎投手。チームトップのホームラン24本をマークした中日の細川成也選手。去年の現役ドラフトでは環境の変化と出場機会が増えたことで移籍前と比べ大きく成績を伸ばした選手が出ました。

前年まででHR通算6本の細川は移籍初年に24本

一方で、移籍後1年で戦力外になる選手も相次ぐなど、明暗が分かれる結果ともなりました。

「現役ドラフト」は各球団が来シーズン契約を結ぶ見込みの保留選手名簿の中から2人以上をリストアップし制度上は2巡目以降の実施も可能でしたが、初開催の去年は1巡目のみの実施で移籍の成立は12人だったことからことしはさらに移籍が活性化されるように一部で規定を変更しました。

具体的には去年は年俸5000万円以上の選手は対象外とする一方、1人に限って5000万円以上1億円未満の選手をリストアップできる仕組みでしたがことしからは5000万円以上1億円未満の選手をリストアップした場合は5000万円未満の選手を追加し、合わせて3人以上をリストアップしなければならないという新たな規定を設けたのです。

このことで年俸の低い選手がより多く指名の対象になる狙いがありました。しかし、ふたを開けてみるとことしはドラフト1位入団のピッチャー3人の移籍が決まった一方で、指名は去年と同じく1巡目で終わり、2年連続で2巡目は実施されませんでした。

今回は結果としては表れませんでしたが、選手会の掲げる「出場機会に恵まれない選手の移籍活性化」に向けて制度上の試行錯誤を重ねながら、どのようにシステムとして成長させていくのかも注目されます。

《現役ドラフトのルール》去年との変更点も

【当日の指名の流れ】
リストアップされた選手は事前にNPB=日本野球機構を通じてほかの球団に示され、当日、各球団はリストをもとに獲得を希望する選手を現役ドラフト会議の議長に伝えます。それを集計し、他球団からの指名が1番多かった選手の所属する球団が最初に指名できます。そして、選手を指名された球団は次に指名する権利を得られる仕組みとなっていて、原則としてこの流れを繰り返します。

新人のドラフト会議のように入札形式は取られないため、指名選手は競合しません。2巡目は希望した球団だけで行われ、1巡目と逆の順番で進みます。どの球団も必ず1人が出て、1人が入る仕組みになっています。

初の開催となった去年は1巡目のみ行われ、2巡目は行われず、この制度で移籍したのは12人でした。

外国人選手、複数年契約を結んでいる選手、FA=フリーエージェントの権利を持っている選手と過去に行使した選手、育成選手はリストアップの対象外です。