南海トラフ巨大地震 評価検討会「特段の変化は観測されず」

南海トラフで巨大地震が起こる可能性を評価する定例の検討会が開かれ、「特段の変化は観測されていない」とする見解をまとめました。

専門家でつくる検討会は、南海トラフの想定震源域やその周辺で観測されたデータを分析しました。巨大地震の想定震源域にあたる地域では先月以降、目立った地震はありませんでした。

一方、プレート境界付近で「深部低周波地震」と呼ばれる小規模な地震が、
▽四国東部で先月1日から12日まで
▽四国西部で先月30日から発生し
これに伴って周辺の複数の「ひずみ計」でわずかな地殻変動が観測されました。

いずれも、想定震源域のプレートの境界が数日から1週間程度かけてゆっくりとずれ動く「短期的ゆっくりすべり」が原因とみられます。

このほか、
▽四国中部では2019年の春ごろから、
▽九州南部ではことし初めから地殻変動が継続的に観測され、
それぞれ
▽四国中部周辺と
▽日向灘南部周辺のプレートの境界が、年単位でゆっくりとずれ動く「長期的ゆっくりすべり」が原因とみられます。

このうち、▽日向灘南部周辺のゆっくりすべりは停滞しています。

これらの現象は繰り返し観測されていることから、検討会は「大規模な地震の発生の可能性が、ふだんと比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていない」とする見解をまとめました。

東京大学 平田直名誉教授「引き続き地震への備えを」

検討会の会長で東京大学の平田直名誉教授は、今月2日から3日にかけて発生したフィリピン付近を震源とする大地震について「南海トラフからはおよそ3000キロ離れていて、日本付近で地震が増えたり地殻変動が観測されたりしていないため、影響は及んでいないと受け止めている」と述べました。

そのうえで「南海トラフ沿いで、大きな地震が起きる確率が高い状況に変化はない。引き続き地震への備えに努めてほしい」と呼びかけています。