宝塚歌劇団 遺族側が意見書提出 “パワハラ行為 15に上る”

宝塚歌劇団に所属する25歳の劇団員が死亡した問題で、遺族側の弁護士は7日、記者会見を行い、先月公表された「いじめやパワハラは確認できなかった」などとする調査報告書について、その問題点を指摘する意見書を歌劇団側に提出したことを明らかにしました。

宝塚歌劇団の宙組に所属していた25歳の劇団員は、ことし9月、兵庫県宝塚市で死亡しているのが見つかりました。

歌劇団は先月14日、長時間の活動などで強い心理的負荷がかかっていた可能性は否定できないとする一方、いじめやパワハラは確認できなかったとする調査報告書の内容を公表しました。

これについて、遺族側の弁護士は7日、記者会見を行い、調査報告書の問題点を指摘した意見書を歌劇団側に提出したことを明らかにしました。

会見で遺族側は、劇団員が上級生から額にヘアアイロンを押しつけられた際のやけどの痕だとする写真や、家族に「わざとな気がする」と伝えているLINEのやり取りなどを公表し「やけどの程度から考えて、過失ではなく故意に押しつけたと考えるのが自然だ」などと指摘しました。

また、遺族側が上級生から暴言を受けたと主張している点については「こうした言動があったことを裏付けるほかの劇団員の証言について、調査報告書では伝聞であると切り捨てる一方、しかられた経緯や内容については無批判に前提事実としていて、恣意的(しいてき)な事実認定というほかない」としています。

遺族側は意見書の中で、パワハラにあたる行為はあわせて15に上るとした上で、歌劇団側に対し、こうした行為を認めるよう改めて求めたということです。

遺族側は今月後半にも歌劇団側の代理人と2度目の面談を行い、謝罪と賠償を求めることにしています。

遺族「劇団の姿勢に憤り感じる」

亡くなった劇団員の遺族は、代理人の弁護士を通じて、7日、新たに「遺族の訴え」とするコメントを公表しました。

全文は次のとおりです。

「娘と会えなくなってから、2ヶ月が経ちました。

今でも娘からのラインを、電話を、そして帰ってくる足音を待ち続けています。

その間に、さまざまな事がありましたが、劇団がパワハラを一向に認めない姿勢に憤りを感じています。

劇団が調査依頼した弁護士による調査報告書の内容は到底納得できません。

宙組の生徒さんが勇気を出して証言してくださった事、私たち家族が訴えた事が全く反映しておらず、パワハラを行った上級生を擁護するわい曲された内容になっています。

しかしながら、調査報告書が認定している事実だけでも、当該上級生の言動がパワハラにあたります。何日も、何時間も、感情に任せて叱責され、『すみませんでした』と言うことしか許されず、泣きながら謝り続けている娘の姿を想像すると、憤懣やる方ない思いです。

娘は、もう何を言う事もできません。それをよいことに、自分たちの都合の良いように真実をすり替え、娘の尊厳をこれ以上傷つけるのはやめてください。

私たち家族は、劇団と、パワハラを行った上級生が真実を認め、謝罪する事を求めます」

宝塚歌劇団「会見内容など踏まえ改めて事実関係精査」

遺族側の弁護士が意見書を提出したことについて、宝塚歌劇団は「先月14日に公表した調査報告書の内容のみにとどまることなく、意見書や本日のご遺族代理人の会見の内容なども踏まえて改めて事実関係の精査などを行うとともに、ご遺族のお気持ちやお考えを真摯(しんし)に受け止め、引き続き誠実に協議してまいる所存です。ご遺族には、改めて正式な謝罪を申し上げる機会をいただけるように努めてまいりたいと考えております」とするコメントを発表しました。

また、歌劇団を運営する阪急電鉄も「当社としては、宝塚歌劇団とともに、意見書や本日のご遺族代理人の会見の内容なども踏まえて、ご遺族のお気持ちやお考えを真摯に受け止め、引き続き誠実に対応してまいります」とするコメントを出しました。

公表されたLINEの記録は

遺族側は、劇団員がおととし8月14日、上級生から額にヘアアイロンを押しつけられてやけどを負ったと主張しています。

当日のものとされるLINEには、劇団員が母親に「やけどさされた」、「ちゃいろになってる」、「わざとな気がする」などと訴えるメッセージが残されていました。

そのおよそ1か月後に撮影されたやけどの痕だとする写真も公表され、遺族側の弁護士は「公演後でメークをしているにもかかわらず、黒ずんだやけどの痕が額に残っていることがわかる」としています。

また、劇団員が亡くなるおよそ1か月前、ことし9月2日の午後11時半すぎに母親に宛てたとされるLINEには、「怒られてた」「まだかえれんわ」「上の人おるから」などというメッセージも確認できます。

遺族側の弁護士は、この日は上級生におよそ1時間半にわたってしかられていたとしています。

そして、翌日の9月3日のLINEには「ごめんなやめたいやめたいいって」「今まで支えてくれてありがとう」というメッセージが残されていました。

このほか、未明や早朝の時間帯にほかの劇団員などと業務に関するやりとりをしているとみられるメッセージも公表されました。

※「」内は原文ママ。