【解説】ウクライナ支援 曲がり角? 米の支援予算 年内に枯渇か

ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナに対して、巨額の予算をもとに、大量の兵器を送っているアメリカ。そのアメリカ議会で、支援のための予算が通らず、年末までに枯渇する可能性が強まっています。去年2月の軍事侵攻以降のアメリカ主導のウクライナ支援は、曲がり角に立っているのではないか。そういう見方すら出てきている事態になっています。

「キャッチ!世界のトップニュース」別府正一郎キャスターの解説です。
(12月7日放送)

※動画は3分52秒 データ放送ではご覧になれません。

問題の焦点となっているのは、アメリカの議会、その中でも、今回は上院の対応です。

バイデン政権は、ことし10月に、ウクライナやイスラエルに対する支援などとして、議会に対してあわせて1,000億ドル以上の緊急予算を要請しています。

しかし、上院では、日本時間の7日朝、審議を進めるかどうかの採決が行われましたが、これは必要な賛成を得られず、現時点で、審議すら始めることができない状況となっています。

背景にあるのが、野党・共和党の一部にある、巨額の支援に対する批判的な立場です。

その主張は、ざっくり言えば、「アメリカ国内でもさまざまな問題を抱えているのに、いつまでも、ウクライナばかりに多くの予算を割いている場合ではない。アメリカの予算はアメリカ国内のために」という趣旨のものです。

こうした中で、共和党が持ち出しているのが不法移民の問題で、予算に賛成するには、メキシコとの国境管理の強化が条件だとしています。

不法移民の問題は、アメリカ国内では、確かに重要な問題です。

こうした内政の課題が、外交の課題と絡み合って、予算をめぐる協議が難航しているのです。

このまま協議がまとまらず、議会が新たに予算を承認しなければ、ウクライナが必要としている支援は大きな打撃を受けることになります。

折しも、ウクライナ軍がことし6月から続けている大規模な反転攻勢は、半年を経て、大きく前進できず、行き詰まっています。

一部で、「失敗している」という指摘も出ています。

こうした中で、アメリカからの支援が途切れることが懸念されているのです。

イギリスの経済誌「エコノミスト」は、この状況を「ウクライナにとって、アメリカは最大の救世主だったが、今や、最大の心配事になっている」と表現しています。

日本の岸田総理大臣を含む、G7=主要7か国の首脳会合が、6日夜、オンラインで開かれましたが、これに招待されたゼレンスキー大統領は、「ロシアは、自由世界の団結が来年にはもろくなることを期待しているだろう。ロシアは、アメリカやヨーロッパが、ウクライナへの支援を維持しなくなるはずだと見ている」と述べ、G7各国に支援の継続を訴えました。

これまでも懸念されてきた欧米の「支援疲れ」

それが、いよいよ、大きく表面化することになるのか。

アメリカの議会上院の動きに、大きな関心が寄せられています。