米軍 全世界のオスプレイ飛行停止 “機体に問題あった可能性”

鹿児島県の屋久島沖でアメリカ空軍の輸送機オスプレイが墜落した事故で、アメリカ軍は調査の結果、機体そのものに問題があった可能性があると明らかにしました。これを受け、アメリカ軍は世界に配備しているすべての種類のオスプレイの飛行を停止したと発表しました。

アメリカ空軍の輸送機CV22オスプレイは、乗員8人を乗せ、11月29日に鹿児島県の屋久島沖で墜落しました。

アメリカ空軍特殊作戦司令部は6日、声明を出し、「初期段階の調査で得られた情報は、機体そのものの問題が事故につながった可能性を示している」と明らかにしました。

その一方で、「問題の原因については現時点ではわかっていない」としています。

これを受けてアメリカ軍は、海兵隊などが使用するMV22を含む、世界に配備しているすべての種類のオスプレイの飛行を停止したと発表しました。

これまでアメリカ軍は、日本国内に配備している空軍のCV22に限定して飛行を停止し、事故の調査の結果、必要があれば追加の措置をとるとしていました。

今回の事故では、乗員8人のうち、これまでに6人の遺体が収容され、行方がわかっていない残る2人の捜索が続けられています。

米軍運用のオスプレイは400機以上 製造会社

製造会社などによりますと、オスプレイはアメリカ空軍、海兵隊、それに海軍で400機以上が運用されています。

オスプレイは、垂直に離着陸するヘリコプターの特徴と、飛行機の速度や航続距離といった特徴をあわせ持っている機体です。

このうち、アメリカ空軍のCV22オスプレイは、主に特殊部隊による作戦での運用が想定されていて、夜間でも地形を把握できる暗視装置などが備えられています。

また、海兵隊のMV22オスプレイは、主に物資や隊員の輸送に使用されています。

米軍 全種類のオスプレイの飛行停止は極めて異例

アメリカ軍は、これまでも機体の不具合などでオスプレイの飛行を停止してきました。

このうち去年8月には、今回事故が起きたCV22オスプレイについて、エンジンとローターをつなぐクラッチが不具合を起こす問題が増えているとして、飛行を一時停止しました。

また、ことし7月には、西部 カリフォルニア州で去年6月、MV22オスプレイが墜落して5人が死亡した事故の調査報告書を公表し、エンジンとローターをつなぐクラッチに関連する部品の不具合などのため、予期しない機械的な故障が起きたとしています。

そのうえで、「パイロットと乗組員に過失はなく、この事故を予測するか、防ぐためにできることは何もなかった」と指摘し、整備上もミスはなかったとして、MV22の飛行システムや検査要件などを改善するとしていました。

アメリカ軍は、この報告書の公表に先立ち、ことし2月、エンジンとローターをつなぐクラッチに関連する部品を交換するためとして、一定の飛行時間を超えたオスプレイの飛行を一時、停止していました。

そして、今回、事故を受けて、機体そのものに問題があった可能性があるとして、すべての種類のオスプレイの飛行を一時停止させる極めて異例の措置をとりました。

米 エマニュエル駐日大使「何が起きたのか調査を始めている」

アメリカ軍がすべての種類のオスプレイの飛行を停止したと発表したことについてアメリカのエマニュエル駐日大使は7日、都内で記者団に対して「軍はかなり短期間のうちに、オスプレイで飛ぶ世界中の兵士のために、通知があるまで飛行を停止する慎重な決断を下した」と述べました。その上でエマニュエル大使は「何が起きたのか調査を始めている。われわれは完全に透明性を確保している。日本や、世界中のオスプレイを使う軍と情報を共有する」と述べました。

元陸将 山口さん“米は相当重大な事故と受け止めている”

陸上自衛隊でヘリコプターのパイロットを務めた元陸将の山口昇さんは、アメリカ軍が、世界に配備しているすべての種類のオスプレイの飛行を停止したことについて「異例な対応で相当重大な事故と受け止めているということだ。オスプレイは配備されて以降、ある程度時間がたち運用にも慣れてきているので、本来であれば事故率が低くなる時期だ。思っていなかったところで部品が摩耗するなどしたか、部品やシステム、ソフトウエアなど、オスプレイの全ての機種に共通する部分に問題があると判断して、全面的な飛行停止を決断したのではないか」と指摘しています。

飛行停止の影響については「空軍のオスプレイは特殊部隊の要員を潜入させるための航空機で、飛行停止になれば緊急に対応する部隊の機動力が損なわれることになる。海兵隊の航空輸送能力をみるとオスプレイはほかの機体と比べて数が多く、圧倒的に重要だ。初動対応を行う海兵隊の輸送力の重要な部分が塩漬けされることになり、相手を思いとどまらせる心理的な効果に大きな影響を及ぼす。特に前方に展開している沖縄の海兵隊や韓国に展開する部隊などにとっては非常に大きな影響がある」と述べ、日本周辺の安全保障にも影響が出る可能性があるという認識を示しています。

そのうえで、千葉県の木更津駐屯地に暫定的に配備されている陸上自衛隊のオスプレイを再来年、佐賀空港の西側に新たにできる駐屯地に移す計画について「これだけの事故が起きると、国民全体が不安に感じると思う。目撃情報や無線の交信情報など日本が持っている情報は多くあると思うので、日本も協力をして再発防止策を早く講じ、地元としっかり情報共有しながら、ふに落ちるような説明をしないといけない」と話しています。

日本配備の米軍オスプレイは30機

防衛省によりますと、日本に配備されているアメリカ軍のオスプレイは、11月時点で合わせて30機です。

内訳は、
▽東京の横田基地に配備されている空軍のCV22が、今回事故が起きた機体も含めて6機
▽沖縄の普天間基地に配備されている海兵隊のMV22が24機です。

陸上自衛隊 木更津駐屯地の14機 飛行見合わせ

今回の事故を受けて、陸上自衛隊は、木更津駐屯地に暫定的に配備しているオスプレイ14機の飛行を見合わせ、機体の点検を行っています。

陸上自衛隊トップの森下泰臣陸上幕僚長は7日の記者会見で、陸上自衛隊のオスプレイの飛行見合わせについて、「どこまで続くか判断がつかない状況だ。飛行再開の見通しについては、予断をもって答えるのは差し控えたい。アメリカ軍の情報を確認したうえで総合的に検討したい」と述べました。

また、今回の事故で、アメリカ軍が機体そのものに問題があった可能性があると明らかにしたことについては、「われわれとしては、オスプレイを実際に使用しながら安全性を確認してきた。今のところ原因は確定していないので、われわれとして判断するものではないと思っている。飛行の安全確保を最優先して適切に運用していきたい」と述べました。

一方、木更津駐屯地のオスプレイを再来年、佐賀空港の西側に新たにできる駐屯地に移す計画については、「南西防衛の態勢強化のためにも、佐賀への移駐は必要不可欠であり、移駐に向けて計画を進めていくと認識している」と述べました。

米軍 奄美空港で7日予定の離着陸取りやめ

鹿児島県によりますと、アメリカ軍が世界に配備しているすべての種類のオスプレイの飛行を停止したと発表したことを受けて、7日、奄美空港で予定されていたオスプレイの離着陸を取りやめるという連絡がアメリカ軍からあったということです。

奄美空港では、屋久島沖でのオスプレイ墜落事故の捜索に当たるため、今月2日からアメリカ軍普天間基地所属のオスプレイが相次いで飛来していて、7日の離着陸については5日、アメリカ軍が空港の使用届を県に提出していました。

岸田首相「安全確保の確認作業を」

岸田総理大臣は7日夕方、総理大臣官邸で記者団に対し、「わが国は事故発生時から一貫してアメリカ側に対し、国内に配置されたオスプレイについて、安全が確認されなければ飛行を行わないことを明確に求めてきた。引き続きアメリカ側から情報提供を受けて、安全確保を確認する作業を行っていきたい。今現在、すべてのオスプレイが飛行を停止していると承知している」と述べました。

松野官房長官「米側にさらなる情報提供求めたい」

松野官房長官は午後の記者会見で「今回のような事故は、地域に大きな不安を与えるもので誠に遺憾だ。政府としては飛行の安全確保を最優先に、アメリカ側にさらなる情報提供を求めていきたい」と述べました。

また陸上自衛隊のオスプレイの佐賀空港への配備計画について「今回の事故を受けた地元の懸念の声も真摯(しんし)に受け止め、その払拭(ふっしょく)に努めながら計画通り配備できるように取り組んでいきたい」と述べました。

木原防衛相「引き続き米軍と緊密に連携して対応」

木原防衛大臣は7日午前、衆議院安全保障委員会で「アメリカ軍機の運用にあたっては、飛行の安全を確保することが最優先だと申し上げてきたところで、現在発表を確認中だが、引き続きアメリカ軍と緊密に連携して対応していく」と述べました。

鹿児島県 塩田知事「原因究明と丁寧な情報提供を」

鹿児島県の塩田知事は「本県の申し入れを受け止めていただいたものと考えている。米軍も安全性の確認が必要という判断で飛行を停止したと思う」と述べました。

そのうえで、今後の対応について「しっかりした原因究明を行っていただき、できるだけ丁寧に情報を提供するようお願いしたい」と述べました。

沖縄県 玉城知事「米軍の対応 引き続き注視」

沖縄県の玉城知事は「県はこれまで事故原因が究明されるまでの間はオスプレイの飛行の停止を求めてきた。対応まで若干タイムラグがあったと思うが、県の要請の一部が受け入れられたということは、県民にとって生命・財産を預かるわれわれ県庁としてもよかったのではないかと受け止めている」と述べました。

そのうえで玉城知事は、飛行停止の期間など詳細な情報が報告されていないとして、今後のアメリカ軍の対応について引き続き注視していく考えを示しました。

宜野湾市 松川市長「しっかり確認し注視」

アメリカ軍普天間基地のある沖縄県宜野湾市の松川正則市長は、「オスプレイが全世界で飛行停止したことは防衛局を通じて確認している。しかし、その期間やどういったことを重点にするのかなど内容が詳細には分からないので、しっかり確認し注視していきたい」と述べました。

佐賀 山口知事「当然の判断 徹底した原因究明と情報開示を」

陸上自衛隊のオスプレイの配備計画が進む、佐賀空港を運営する佐賀県の山口知事は記者団に対し、「人為的な操作ミスではないということであれば、当然の判断だ。徹底した原因究明と情報開示を求めていく」と述べました。

そのうえで、建設が進む駐屯地へのオスプレイの配備については、「駐屯地の問題は、オスプレイだけの問題でもなく、それは防衛省が考えることだ。今回の問題は、米軍がしっかり原因究明すると思うので、そこを注視する」と述べました。

沖縄の基地 事故後も6日までオスプレイの離着陸相次ぐ

11月29日に、アメリカ空軍のCV22オスプレイが鹿児島県の屋久島沖に墜落した事故のあとも、沖縄県内では6日まで、海兵隊と海軍のオスプレイの離着陸が相次いでいました。

防衛省によりますと、沖縄県内ではアメリカ軍普天間基地に11月末の時点で海兵隊のMV22オスプレイが24機配備されているのを確認しているということです。

事故のあとも離着陸が相次ぎ、防衛省によりますと、6日までに海兵隊のMV22オスプレイが、
▽普天間基地で118回
▽嘉手納基地で4回

また、海軍のCMV22オスプレイも、
▽普天間基地で2回
▽嘉手納基地で24回

それぞれ離陸や着陸するのが確認されたということです。

NHKが設置したカメラでは、6日も普天間基地でMV22オスプレイが離着陸する様子や、嘉手納基地でCMV22オスプレイが離陸する様子が捉えられていました。

また、事故が起きるまで、東京の横田基地に配備されている空軍のCV22オスプレイも、嘉手納基地にたびたび飛来していました。

沖縄 宜野湾市の人は

アメリカ軍が世界に配備しているすべての種類のオスプレイの飛行を停止したと発表したことについて、普天間基地のある沖縄県の宜野湾市で聞きました。

60代の女性は「できたらオスプレイの飛行は止めたほうがいいと思う。すぐ近くを飛んでいるから、いつ落ちるかも分からないし、心配だ」と話していました。

40代の男性は「オスプレイが墜落するのは、リスクとしてあるのは分かっている。点検の方法を確認するなど、様子見ということでいいと思う」と話していました。

20代の男性は「注意して使えばいい。安全ならいいと思う」と話していました。

鹿児島 屋久島町の人は

アメリカ軍が世界に配備しているすべての種類のオスプレイの飛行を停止したと発表したことについて、屋久島町の住民からは、当然の対応だといった声や事故原因の究明を求める声が聞かれました。

屋久島町に住む60代の女性は「事故があってからずっと心配でした。怖くて今も不安でした。飛行停止をしてもらわないと困ると思っていたし、当然のことです」と話していました。

80代の女性は「安心です。飛行停止をしないほうがおかしい。もし何かあったらと思うと怖かったです。事故の原因を突き止めてほしいです」と話していました。

40代の男性は「屋久島の島民にかぎらず、アメリカ軍、日本国内が不安に思っていたと思う。いったん立ち止まって構造の問題だったのか、何が問題だったのか、見直すべきだと思う」と話していました。