【7日詳細】戦闘から2か月 イスラエルとハマス 最新情報

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まってから7日で2か月となりパレスチナのガザ地区では1万6000人以上が死亡する事態となっています。

イスラエルのメディアは南部の中心都市ハンユニスでの作戦がさらに数週間続く見通しだと伝えていて、戦闘の長期化で人道状況が一段と悪化することが懸念されます。

イスラエルやパレスチナに関する日本時間12月7日の動きを、随時更新でお伝えします。

戦闘2か月 犠牲になる民間人があとを絶たず

ことし10月、ガザ地区を実効支配するハマスの戦闘員などがイスラエル側に越境し、イスラエル政府によりますと民間人を含む1200人以上を殺害した上、240人以上を人質として連れ去りました。

これに対してイスラエル軍はガザ地区での軍事作戦に乗り出し開始から2か月となった7日も、南部の中心都市ハンユニスで地下のトンネル施設から出てきた戦闘員2人を殺害したと発表し、引き続き市内にハマスのガザ地区の指導者ヤヒヤ・シンワル氏が潜んでいる可能性があると見て捜索しています。

イスラエル軍は主導権を握ったとする北部でも激しい空爆を続けていて、イスラエルの有力メディアハーレツは、北部での作戦は数日間、ハンユニスでの作戦はさらに数週間続く見通しだと伝えています。こうした中、戦闘の犠牲になる民間人があとを絶たず、ガザ地区の保健当局によりますとこの2か月で1万6248人が死亡し、4万3000人以上が負傷しました。

また、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関によりますと、地区の人口の8割を超えるおよそ190万人が避難を余儀なくされ、食料や燃料、医療物資などの支援物資が十分に搬入されない中、感染症によって命を落とすリスクも増していて人道状況の悪化が深刻になっています。

こうした状況を受け、国連のグテーレス事務総長は国連憲章の99条に基づいて安全保障理事会に対し、人道的な停戦を求めるよう要請しました。2017年の就任以来、この条項に基づいて安保理に要請を行うのは初めてで、これを受けて安保理では8日に新たな決議案の採決が行われる見通しです。

ただ、イスラエル側はあくまでもハマスを壊滅し、残る人質138人を解放するまで軍事作戦を続ける構えを崩しておらず、戦闘の長期化で人道状況が一段と悪化することが懸念されます。

ガザ地区への食料や支援物資これまでトラック3313台分

イスラエルとイスラム組織ハマスとの一連の衝突開始から2か月となった7日、エジプト政府はラファ検問所を通ってこれまでにトラック3313台分の食料や支援物資、それに燃料などがガザ地区に運び込まれたと明らかにしました。

また、これまでに682人のけが人を受け入れたほか、エジプト人を含む外国籍の1万1067人がガザ地区からエジプト側に退避したとしています。

南部ラファ 空爆などで避難民が巻き添えとなるケース相次ぐ

イスラエル軍が作戦を開始したガザ地区南部のハンユニスよりさらに南にあるラファでも、空爆などにより避難してきた人が巻き添えとなるケースが相次いでいて、病院には多くのけが人が運ばれています。

ガザ地区南部のラファで6日、撮影された映像ではけがをした子どもや大人が次々と病院に運び込まれ、手当てを受ける様子がうつっています。

けがをして手当てを受けた男性は、「ガザ市から逃げて、ほかの人の家に滞在していたら、ロケット砲の攻撃を受けた。私は空中に投げ出され、がれきの中から救出された」と話していました。

ラファでは、北部やハンユニスなどから避難する住民が増え続けていて、避難施設に入れず路上での生活を強いられる人も多くいるということです。

また、WHO=世界保健機関によりますと、南部の主要な病院では患者の収容能力がすでに超えているということです。

人道支援物資積みガザ地区に入るトラック 休止期間の半数以下に

OCHA=国連人道問題調整事務所は、6日に人道支援物資を積んでエジプトからガザ地区に入ったトラックの数が80台だったと発表しました。

先月24日から7日間にわたって続いた戦闘休止期間には平均して1日あたり170台のトラックがガザ地区に入っていたということで、その半数以下にとどまっています。

また、燃料の搬入は6万9000リットルで、戦闘休止期間の1日あたりの平均だった11万リットルを大きく下回っています。

イスラエル首相府は6日、ガザ地区南部への最低限の燃料の搬入を認めると明らかにしていますが、具体的な量については現地の人道状況を見ながらそのつど決めるとしています。

ラファに増え続ける避難民

南部のラファにはハンユニスなどから避難する住民が増え続けています。UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関によりますと、ガザ地区では人口の8割を超えるおよそ190万人が避難を余儀なくされていて、人道状況の悪化がさらに深刻になっています。

イスラエル首相府は6日、ガザ地区南部への最低限の燃料の搬入を認めると明らかにし、人道状況に配慮する姿勢も見せていますが、イスラエル側はハマスの壊滅を目指すとして地上侵攻を続ける構えで、事態の打開に向けた道筋は見えない状況です。

国連事務総長 国連憲章99条基づき 安保理に停戦求めるよう要請

パレスチナのガザ地区の情勢をめぐり、国連のグテーレス事務総長は6日、国連憲章の99条に基づいて、安全保障理事会に対し人道的な停戦を求めるよう要請しました。

国連の報道官が定例会見で明らかにしたもので、国連憲章の99条では「国連の事務総長は国際社会の平和と安全の維持に脅威となる事項について安全保障理事会に注意を促すことができる」と定められています。

報道官によりますと、グテーレス事務総長がこの条項に基づいて安保理に要請を行うのは2017年1月に就任して以来初めてで、グテーレス事務総長としては一歩踏み込んだ措置をとったものです。

松野官房長官「国連安保理のさらなる取り組みが必要」

松野官房長官は、7日午後の記者会見で「現地の情勢を深刻な懸念を持って注視し、危機的な人道状況がさらに深刻化することを強く憂慮している」と述べました。

その上で、国連のグテーレス事務総長が安全保障理事会に対し人道的な停戦を求めるよう要請したことについて「ガザ地区の現状を踏まえれば、安保理のさらなる取り組みが必要だ。わが国は理事国として関係国とも不断に議論を行い、安保理が役割を発揮できるよう最大限の外交努力を行う」と述べました。

ヨルダン川西岸と東エルサレム 253人のパレスチナ人が死亡

パレスチナでは、ガザ地区だけでなく、暫定自治政府があるヨルダン川西岸でもイスラエルの治安当局との衝突などで緊張が高まっています。

ヨルダン川西岸にはおよそ320万人のパレスチナ人が暮らしていますが、イスラエルの占領下にあり、分離壁によって人々の移動は制限されています。また、土地の大半がイスラエル軍の管理下にあるほか、国際法に違反した入植地の建設も推し進められています。

地元のNGOによりますとイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が始まった10月7日以降のおよそ2か月だけで(12月5日時点)3500人余りのパレスチナ人がイスラエルの治安部隊に拘束されているということです。

イスラエル政府はガザ地区でハマスに対する軍事作戦を続ける一方で、ヨルダン川西岸でも警戒を高め、パレスチナ人に対する取り締まりを強めていることが背景にあるとみられます。これに伴いイスラエルの治安部隊との衝突やユダヤ人入植者による暴力などで犠牲となるパレスチナ人が増え続けています。

OCHA=国連人道問題調整事務所によりますと、ヨルダン川西岸と東エルサレムでは10月7日からこれまでに(12月6日)子ども66人を含む253人のパレスチナ人が死亡しているということです。このうち243人がイスラエル軍によって殺害されたとしています。一方で、イスラエル人4人がパレスチナ人との衝突で死亡したということです。

ことしに入ってからヨルダン川西岸と東エルサレムであわせて400人以上のパレスチナ人が死亡し、OCHAが2005年に集計を始めてから年間で最も多くなっていて、これまでになく緊張が高まっています。

ヨルダン川西岸のパレスチナ暫定自治区 連日抗議デモ

ヨルダン川西岸のパレスチナ暫定自治区ではパレスチナ人の死者が増え続ける中、連日、イスラエルに対する抗議デモが行われています。

このうちベツレヘムでは今月5日、およそ200人が市の中心部に集まって「虐殺をやめろ」とか「パレスチナに自由を」などと声をあげて、イスラエルに対し、ガザ地区への攻撃とともにヨルダン川西岸での暴力をいますぐやめるよう訴えていました。

デモに参加していたパレスチナ人の男性は「ガザ地区に注目が集まっていますが、ここヨルダン川西岸では毎日、毎晩、人知れずに人が殺されているという点で危険だと思います」と話していました。

また別の女性は「ここヨルダン川西岸では毎日のようにイスラエル軍の兵士やユダヤ人入植者による攻撃を受けていて、すべてのパレスチナ人の土地が厳しい状況にあるのです」と話していました。

イスラエル軍 押収したとする武器の映像公開

パレスチナのガザ地区での軍事作戦を続けるイスラエル軍は6日「ガザ地区で最大規模の武器庫を地区北部の、診療所と学校の近くで発見した」と発表し、押収したとする武器の映像を公開しました。

その中では、空き地に多くの武器が並べられ、ロケットランチャーの弾頭数百個、「カラシニコフ」と呼ばれる自動小銃AK47、それにさまざまな大きさの地雷や無人機などが確認できます。

また、ロケット弾もハマスなどがガザ地区内で製造していることで知られる最大射程90キロのものに加え、それよりさらに射程が長いと見られる、長さ4メートルほどの大型のものを兵士が2、3人がかりで運ぶ様子が映っています。

これらについてイスラエル軍は、いずれも人口密集地にある民間の建物の近くで見つかったとしていて、ハマスがガザ地区の住民を人間の盾として利用している証拠だと主張しています。

子どもたちがけがをした父親を懸命に捜す姿

ガザ地区南部のハンユニスではイスラエル軍の攻撃によって多くの負傷者が次々と病院に運ばれていて、市内にあるナセル病院で6日に撮影された映像では、子どもたちがけがをした父親を懸命に捜す姿が映っています。

子どもたちは担架に乗せられ運ばれてきた父親を見つけると、むせび泣きながら近づいて抱きしめていました。

5歳の男の子は「教室で友達と遊ぼうとしていたら突然、ドーンという音がした」と話したほか、手に包帯を巻いた11歳の女の子は「私たちは学校にいました。攻撃が2回あって、私たちやお父さんに当たりみんなけがをしました」と時折、声を詰まらせながら話していました。

WHO=世界保健機関は4日の発表で、ガザ地区南部の主要な2つの病院について、350床あるナセル病院にはおよそ1000人の患者と数千人の避難民が、370床あるヨーロッパ・ガザ病院にはおよそ1000人の患者と推定で7万人の避難民がいるとみられ、いずれも収容能力の3倍を超えているとしています。

また、ナセル病院で治療を続ける国際NGOの「国境なき医師団」は4日の声明で、患者が途切れることなく搬送されているため「限界に達している」として医療の危機的な状況を訴えています。

国連人権高等弁務官「『残虐な犯罪』の危険性が高まる」

国連人権高等弁務官事務所のトップ、ターク人権高等弁務官は6日、スイスのジュネーブで会見を開き、ガザ地区の状況について「住民は執ような砲撃と集団的な処罰を受け続けている」と強い危機感を示したうえで「残虐な犯罪の危険性が高まっている」と指摘して調査の必要性を強調しました。

ターク人権高等弁務官はイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が始まってから2か月がたつことについて「ガザ地区の住民はイスラエルによる執ような砲撃と集団的な処罰を受け続けている。死と破壊に苦しみ、食料や水、救命医療物資など不可欠なものを大規模に奪われている。ガザ地区のパレスチナ人は深まる恐怖の中で生きている」と現状に強い危機感を示しました。

そのうえで、人道危機の状況について「完全に予測可能であり、防ぐことも可能だった」と指摘したうえで「『残虐な犯罪』の危険性が高まっている」として戦争犯罪のおそれがあると訴えました。

またターク人権高等弁務官は、10月7日のハマスによる大規模な襲撃の際、女性に性的な暴行が加えられたとする疑いが訴えられていることについて「被害者の正義を保証するため完全な調査の必要がある。国際人権法と人道法のすべての違反について厳格な調査と説明責任を果たすことが極めて重要だ」と述べました。

医療物資の提供を行っている慈善団体は

イギリスの首都ロンドンを拠点にガザ地区の人々に医療物資の提供を行っている慈善団体は、今月4日、現地の状況について緊急の声明を発表しました。

慈善団体、「メディカル・エイド・フォー・パレスチニアンズ」がガザ地区で活動を続けるメンバーから聞いた話によりますと、イスラエル軍がガザ地区全域を細かいエリアに分けた地図を作り退避するよう通告していることについて「危険だと定められた地域の外でも砲撃が続き、避難や食料を確保するための場所を探そうとする人々がパニックに陥っている」としています。

また、メンバーは全員がすまいを追われていて「ガザには『安全な場所』というものが存在しないことを知ってほしい。私たちの安全と尊厳は何も残されていない」と話したとしています。

そのうえで団体は「地図は民間人の命を保護するためのものでなく、イスラエルが人々を恐怖に陥れるための新たな戦術だ」と非難しました。

また、声明の最後にイギリスを含む世界のリーダーたちに対して「停戦を要求したり、民間人の保護において越えてはならない一線を設けたりすることに消極的であることが、ガザの大惨事に拍車をかけている。手遅れになる前に、大量虐殺を阻止するための行動が必要だ」と強く訴えています。

ハマスの人質となり11月解放された学生は

イスラム組織ハマスの人質となり11月解放された学生のミア・ラインバーグさん(17)が5日エルサレムの自宅でロイター通信の取材に答えました。

ミアさんはかわいがっていた犬のベラとともに連れ去られ、解放された際にハマスが公開した映像には、ミアさんが犬を抱いて歩く様子がうつっていました。

ミアさんは、拘束されている間与えられた食事の残り物をベラに与えてかわいがり、ベラの存在が精神的な支えになっていたということです。

ミアさんは「病院で検査も受けましたが身体的には大丈夫です。精神的には大変な経験でしたが、トラウマにはなっているとは感じていません」と話していました。

また一緒に人質となっていた母親のガブリエラさん(59)は「少しずつ、少しずつ、普通の生活に戻ろうとしています」と話していました。

ただ、ミアさんのおばとおじはまだ人質になっているということで、ミアさんは「毎日恋しいです。彼らなしでここにいることは間違っていると思います。戻ってこられてうれしいですがまだ終わっていません。人質になっている人全員が戻ってこないといけないのです」と全員の一刻も早い解放を訴えていました。

イスラエル軍の報道官は6日、依然として138人がガザ地区で人質になっているとしています。

フーシ派「イスラエル南部の軍事目標に弾道ミサイル発射」

イエメンの首都サヌアを含む北部を掌握する反政府勢力フーシ派は6日、イスラエル南部の軍事目標に対して弾道ミサイルを発射したなどとSNSに投稿しました。

そのうえで「イスラエルがガザ地区への侵攻をやめるまで、イスラエルに対する軍事作戦を継続し、イスラエルの船舶による紅海などでの航行を阻止する」としています。

一方、イスラエル軍は6日、イスラエル南部で地対地ミサイルの攻撃が確認されたものの紅海上で迎撃したなどと発表しています。

イスラエルと敵対するフーシ派は今月3日にもビデオ声明で紅海につながるバーブルマンデブ海峡で「イスラエルの船舶2隻に対する攻撃を行った」と発表するなどこれまでにも周辺海域での攻撃などを繰り返しています。