金属労協 ベア1万円以上 過去最高水準の賃上げ求める方針

自動車や電機などの産業別労働組合でつくる「金属労協」は、来年の春闘でベースアップ相当分として月額1万円以上の賃上げを求める方針を決めました。現在の方式で要求を始めてから最も高い水準で、賃上げの動きを一層、加速させたい考えです。

「金属労協」は自動車や電機、鉄鋼などの労働組合が加盟する5つの産業別労働組合で構成されていて、組合員はおよそ200万人にのぼります。

6日に都内で協議委員会を開き、来年の春闘の方針として定期昇給などを確保した上で基本給を引き上げるベースアップ相当分として月額1万円以上の賃上げを求める方針を決めました。

金属労協は、去年の春闘までベースアップ相当分として7年連続で月額3000円以上の賃上げを求めてきましたが、ことしは、その2倍の月額6000円以上に設定し、来年は、さらに4000円を上乗せした形となりました。

これは、現在の方式で要求を始めた1998年以降、最も高い水準で、賃上げの動きを一層、加速させたい考えです。

金属労協に加盟する各労働組合は、今回の方針を踏まえて、具体的な要求を盛り込んだ方針を決め、来年の春闘に臨むことになります。

記者会見で金子晃浩議長は「物価高騰の中、賃上げで生活を守るという側面もあるが、海外と比較して日本だけが取り残されてきている状況は、グローバルで競争する産業で働く私たちとして無視できない。金属労協が引っ張っていかなければならないという思いで春闘に臨んでいきたい」と述べました。

金属労協 賃上げ要求の推移

金属労協は自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の5つの産別で構成されています。

各産業別労働組合には、トヨタ自動車やパナソニック、日本製鉄など、日本の大手企業から中小企業まで多くの労働組合が加盟していて、金属労協の組合員数はおよそ200万人にのぼります。

金属労協で決まった賃上げ要求の方針を指標に、各産別や労働組合でも春闘の方針を決めることになっていていて、影響力は大きいとされています。

金属労協の賃上げ要求の水準は、ベースアップのみ賃上げの要求を始めた1998年には「7000円を中心」に求めていましたが、その後、要求額は徐々に下がり、2003年以降は経済停滞やデフレの長期化などを背景に、要求額を掲げない時期が続きました。

そして、デフレ脱却などに向けて賃上げの機運が高まった2014年から要求水準を再び掲げるようになり、この年は「1%以上」のベースアップを求めました。

2015年からことしまでは「3000円以上」から「6000円以上」の間でベースアップを求めていました。

来年の「1万円以上」は、ことしから4000円上乗せしたかたちで1998年以降、最も高い水準です。

来年の春闘 例年以上の賃上げ方針の労働団体相次ぐ

来年の春闘では金属労協以外でも例年以上に高い水準の賃上げを求める方針を打ち出す労働団体が相次いでいます。

組合員およそ700万人の労働組合の中央組織「連合」は、ベースアップ相当分として3%以上、定期昇給分を合わせて5%以上の賃上げを要求する方針を12月1日に正式に決めました。

これは1995年以来、およそ30年ぶりの水準となった、ことしの春闘を上回る高い水準です。

産業別の労働組合では、繊維、流通、サービス業などの185万人余りの組合員が加盟する「UAゼンセン」は、来年の春闘で定期昇給分を合わせて「6%を基準」とした賃上げを求める方針です。

ことしは「6%程度を目指す」としていましたが、「基準とする」と表現を強めています。

さらに、機械や金属産業などの中小企業を中心に、およそ39万人の組合員が加盟する「JAM」でもベースアップ分で月額1万2000円、定期昇給相当分を合わせて平均賃金で1万6500円以上を要求する方針案をまとめています。

これは、ことしの要求額より3000円高く、JAMが結成した1999年以来、過去最高となります。

ほかの主な産業別労働組合も、このあと年明けにかけて順次、方針をまとめ、来年の春闘に臨むことになります。

専門家 “金属労協の強気の方針は大きな影響”

春闘と雇用の問題に詳しい法政大学大学院の山田久教授は、金属労協の方針について「デフレが続いていたことなどから、賃上げに比較的慎重な姿勢を示していた金属労協が、かなり強気の数字を出してきたという印象を受ける。賃上げをしっかりやっていこうという状況の変化を象徴する動きではないか。金属労協は自動車、電機、機械産業などといった日本の基幹産業の多くの企業が所属しているので、この方針は大きな影響を及ぼすだろう」と指摘しています。

そのうえで、来年の春闘の焦点については、「物価上昇を上回る賃上げを行っていくことが本当の意味で労働者の生活水準の向上につながるが、実質賃金もマイナスで物価に負けない賃金にはなっていない。ことしの春闘では、賃上げの流れを中小企業までは波及しきれなかったので、来年は、その流れを作り、広げていくことが非常に重要だ」と指摘しています。

今後求められることについては、「中小企業は、コストが上がっているのであれば、取引先に価格に関する協議を申し入れ、取引先は受け入れていくことが重要だ。適正な価格転嫁をしていくことが自然なことだという雰囲気が社会全体に広がっていくことが大事だ」と述べました。