【解説動画】ウクライナ 行き詰まる反転攻勢

ロシアによって奪われた国土を何とか取り戻すために、ウクライナが、ことし6月上旬から始めた大規模な反転攻勢。
しかし、半年がたって、期待された成果を出すことはできないまま、「失敗した」のではないかとの厳しい見方が広がっています。
▽反転攻勢のこれまでの経緯
▽その行き詰まりの原因
▽今後の懸念されるシナリオについて、別府キャスターの解説です。


※12月6日「キャッチ!世界のトップニュース」で放送した内容です。
※動画は4分14秒、データ放送ではご覧になれません。

まず、これまでの経緯です。
ウクライナは、ドイツ製の近代的な戦車などの供与を受けた上で、6月4日ごろから反転攻勢に出たと見られ、ゼレンスキー大統領も6月10日には始まっていることを確認しました。

こちらが、ロシア軍の支配地域です。前線は、このように弓のような形をしていて、およそ1000キロに達します。これのどの部分でウクライナ側が反撃を始めるかが注目されていました。
こうした中、重要な目標となったのは南部ザポリージャ州でした。州を南下して、アゾフ海まで達すれば、ロシアの支配地域を分断できるからです。

しかし、ザポリージャ州で、これまでにウクライナ側が到達できたのは、前線から少し入ったロボティネまでです。8月28日にウクライナ側が奪還を発表しましたが、その後、ウクライナ軍は大きく前進できないまま、前線はこう着状態に陥っています。

行き詰まってしまった原因は何でしょうか。
ロシア軍が設置した大量の地雷や兵士の犠牲をいとわない人海戦術、ウクライナ軍の訓練不足などが指摘されていますが、やはり大きな原因は、空での戦いでウクライナ側が不利だということです。

ウクライナ側は、かねてから欧米に戦闘機の供与を強く求めていますが、アメリカのF16戦闘機にしても、まだパイロットの訓練の段階で、戦闘に投入されるのは来年になると言われています。
空からの支援が十分ないまま、地上部隊が進まないといけない苦しい戦い方となっているのです。

こうした中で飛び込んできたのが、アメリカの予算をめぐるニュースです。
アメリカ・ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は4日、ウクライナに対する軍事支援の予算について、議会による承認がなければ年末までに枯渇するという見通しを明らかにしました。議会での野党・共和党の一部の動きによるものですが、アメリカの内政がウクライナの戦況に深刻な影響を及ぼしかねない状況になっています。

苦しい状況になっているウクライナですが、それでも、反転攻勢をやめることもできません。
期待された成果は出ていないものの、反転攻勢を続けているからこそ、ロシアからさらに多くの国土が奪われるのを防ぐことはできています。
ロシアの支配地域に残された人々を一刻も早く解放せねばならないとの焦りもあります。
ウクライナの厳しく長い冬が続いています。