二酸化炭素の回収 貯留 安全な事業開始へ 経産省が新制度案

経済産業省は、脱炭素社会の実現に向けて2030年までの事業開始を目指す二酸化炭素の回収・貯留技術、「CCS」について、安全性を確保して事業を行うため、事前に国の認可を受けることなどを義務づける新しい制度の案をまとめました。

「CCS」は工場などから排出された二酸化炭素を分離、回収し、地下深くに貯留する技術で、国は排出削減が難しい分野の脱炭素化に重要だとして、2030年までの事業開始を目指しています。

経済産業省は、事業の安全性を確保し、国の監督体制を明確にするため5日に開いた専門家による審議会で新しい制度の案を示しました。

それによりますと、二酸化炭素の貯留にあたっては、国が適地を含む区域を指定して希望者を募った上で、技術的な能力などを審査して最も適切な事業者に貯留する権利を認めることが適当だとしています。

そのうえで、安全性を確保するため事業者に対し
▽事前に事業計画を策定して国の認可を受けることや
▽貯留した二酸化炭素が漏れていないか、モニタリングによって確認することを義務づけるとしていて
▽万が一、事故による損害が発生した場合は事業者に賠償責任を課すとしています。

この制度案について委員から大きな異論はなく、経済産業省は今後、一般からの意見を募ったうえで法案化し、早ければ2024年の通常国会に提出したい考えです。

「CCS」規制の現状

二酸化炭素を回収して地下深くに貯留する「CCS」の技術をめぐっては、現在、環境省が所管する海洋汚染防止法による規制があり、海底の下で二酸化炭素の貯留を行う場合は環境大臣の許可を得る必要があります。

実際、北海道苫小牧市で行われているCCSの実証事業はこの規制のもと、環境影響評価やモニタリングなどが義務づけられました。

一方、CCS事業に関する新たな法制度の検討を行った今回の審議会では、委員や事業者から、事業の円滑な実施のため規制の一本化を求める意見が出されていて、経済産業省は今後、環境省と調整することにしています。