びわ湖の水位が低下 これからどうなる?影響は?

「びわ湖の水止めたろか!?」

これは、びわ湖が“関西の水がめ”であることを示す定番のギャグのフレーズですが、実はことし、びわ湖の水が減っているんです。

5日朝の時点で水位はマイナス69センチ。滋賀県が「渇水対策本部」を設置するマイナス75センチまであとわずかとなっています。

なぜ減っているのでしょうか。今後の影響は。

ふだんは見えないもの続々

びわ湖の水位が低下したことで大津市の湖岸ではふだんは水面下にあって見えない城跡の石垣の石が姿を現しました。

現在の大津市下阪本にあった坂本城は明智光秀が築いた城で、びわ湖の底には石垣に使われていたとみられる石が沈んでいます。

この石は2年前(2021)の渇水の際にも姿を現しましたが、11月中旬から再び見られるようになったということです。

現地には石を見ようと連日、多くの人が訪れていて大津市は看板を設置して石に触れないよう注意を呼びかけています。

滋賀県草津市から訪れた70代の男性
「いつか見に来たいと思っていました」

滋賀県文化財保護課
「文化財なのでマナーを守って眺めてほしい」

「びわ湖は少し痩せた状態」

NHKは、4日にびわ湖の周辺を上空から撮影しました。

このうち滋賀県高島市にある白鬚神社は、湖の中に浮かぶように建つ鳥居で有名ですが、水位の低下に伴ってふだんは隠れている鳥居の柱の下の部分が見えるようになっています。

また、びわ湖の東西を結ぶ琵琶湖大橋の橋脚もふだんは水の下に隠れている部分が見える状態になっています。

「奥の洲」が陸続きに

長浜市湖北町のびわ湖の沖合、およそ200メートルには「奥の洲」と呼ばれる小島のような州がありますが、水位が低下した影響で現在は湖岸と陸続きになっています。

近くにある長浜市の湖北野鳥センターによりますと「奥の洲」は、ふだんはコハクチョウやヒシクイなど野鳥のすみかになっていて、びわ湖の水位が50センチほど低下すると湖岸との間に幅数メートルの道が現れるということです。

NHKが上空からヘリコプターで撮影した際は、何人もの人がこの珍しい道を歩いていました。

「太閤井戸」跡地まで歩いて行けるように

また、同じ滋賀県長浜市にある長浜城跡近くの湖岸では、ふだんは水面下にある「太閤井戸」と呼ばれる井戸の跡地まで歩いて行けるようになっています。

豊臣秀吉が築城した長浜城で使われていたとされる「太閤井戸」は、昭和14年(1939)にびわ湖の水位が低下した際に見つかったもので、ふだんは水面下に沈んでいるためその存在を示す高さ2メートルほどの石碑が建てられています。

長浜城跡にある豊公園管理事務所の山岡信夫さんによりますと、ふだんは石碑の土台部分まで水につかっていますが、水位の低下に伴って歩いて近づくことができるようになり、石碑の後ろ側に回り込むと、「昭和十四年」などといった文字も確認できます。

豊公園管理事務所の山岡信夫さん
「歩いて行けるようになり、今は撮影スポットになっています。少し困っているのは井戸の周りにごみが流れ着くことですね」

影響じわり カヤック教室は

びわ湖の水位が低下したことでカヤックなどの水上スポーツが体験できる大津市の施設では、内容を一部変更するなどの影響が出ています。

大津市雄琴にある水上スポーツの体験学習施設ではびわ湖でカヤックなどの教室を開いていますが、水位が下がったことでこれまでより湖面が岸から10メートルほど遠くなり、水際の水深が浅いためカヤックがこぎ出しにくくなったということです。

5日も市内の中学生2人が訪れていましたが、講師は最初はパドルを深く水に入れないよう指示していました。

また、水位が下がったことでふだん案内している湖岸のヨシの茂みに近づくことが難しくなり、ルートを変更しているということです。

体験学習施設の中岡靖雄マネージャー
「水位低下は困ったことですが、ふだんは見えない湖底のゴミが見えるようになり環境問題に気づくきっかけにもなるかなと思っています」

被害も 漁船のスクリュー破損

滋賀県は11月27日、2年ぶりとなる「水位低下連絡調整会議」を設置して漁業や観光などへの影響を調べていて、三日月知事は5日の定例会見で調査結果を公表しました。

一部の港で岸壁と船との高低差が大きくなり、人の乗り降りや荷物の積み降ろしに影響が出ているほか、漁船のスクリューが湖底の石などに当たって破損する被害が出ているということです。

滋賀県 三日月知事
「現時点では県民生活に大きな影響は出ていないが、引き続き状況を注視したい。『水を大切に使ってください』という発信を繰り返しやっていきたい」

水位はなぜ低下?

ことし8月に近畿地方を縦断した台風7号のあと、びわ湖の水位は基準に対してプラスマイナス0となっていました。

しかしその後はまとまった雨がなく、9月と10月をあわせた降水量は、以下のようになりました。

▼彦根市 139ミリ(平年の半分以下)
▼大津市 216ミリ(平年の3分の2程度)

こうしたことから、びわ湖の水位は徐々に下がり始めました。

9月下旬にはマイナス30センチ程度でしたが、10月下旬にはマイナス50センチ、11月下旬にはマイナス65センチまで下がりました。

そして5日午前6時の時点では、マイナス69センチとなっています。

このため、びわ湖の南側にある瀬田川洗堰で、びわ湖から流れ出る水を調整している国土交通省琵琶湖河川事務所では、多いときには毎秒数百トンになることもある水の量を、9月以降、毎秒15トンから25トンに抑えています。

これは、下流の大阪や京都で利用される水を賄うために必要な最低限の量だということです。

琵琶湖河川事務所では「関係機関と調整しながら放流量を抑え、引き続きびわ湖の水位低下の抑制に努めていきたい」としています。

滋賀県によりますと今後、水位がマイナス75センチまで低下した場合は「渇水対策本部」を設置し、広く節水の呼びかけなどを行うほか、マイナス90センチまで低下すると国や大阪府、京都府などとともに取水制限を検討するこということです。

過去には学校のプールが使えなくなったことも

びわ湖では過去の水位低下の際には市民生活への影響も出ています。

雨不足で渇水に見舞われた1994年には、水位は過去最大のマイナス1メートル23センチに達しました。

干上がるびわ湖(1994年)

下流域では10%から20%の取水制限が行われ、高台にある住宅などで水が出にくくなったり、学校のプールが使えなくなったりするなど、市民生活にも影響が出ました。

水位がマイナス75センチまで低下した場合は、県が「渇水対策本部」を設置し、さらなる節水を呼びかけることになります。

2021年以来、2年ぶりの低水準が続くことが予想されることから、今後も状況を見守る必要がありそうです。

びわ湖の「水位0メートル」の高さとは

滋賀県によりますと「びわ湖の水位」として示されている水位はびわ湖の南側にある観測所の高さを「水位0メートル」として、湖内の5つの水位観測所の値を平均した数値で、水位1センチ分の水の量はおよそ68億リットルだということです。

基準水位0mは大阪城天守閣の高さとほぼ同じ

びわ湖は大阪湾へ流れる川の上流にあるため、この「水位0メートル」の高さは川の下流から見ると、大阪城の天守閣までとほぼ同じ高さだということです。

また、この「水位0メートル」の高さは明治時代に観測所が設置された際に「これ以上下がることがない」と判断された水位ではないかとも言われているということです。