ひたちなか海浜鉄道 国営ひたち海浜公園付近に延伸 新駅整備へ

年間200万人前後が訪れる茨城県ひたちなか市の国営ひたち海浜公園へのアクセスを高めようと、市内の第三セクター、ひたちなか海浜鉄道は、路線を延ばして国営ひたち海浜公園の南口付近に新駅を整備する方針を固めました。厳しい経営環境が続く地方鉄道で延伸計画は極めて珍しく、着工してから早ければ5年後の完成を目指しているということです。

ひたちなか市の第三セクター、ひたちなか海浜鉄道は、今の終点の阿字ヶ浦駅から3.1キロを延伸する計画で2021年1月に、国から許可を受けました。

一方、新型コロナによる需要低迷や物価高騰による建設費の増加などを受け、会社では2年連続で国への工事許可申請を延期し、計画自体の見直しを進めていました。

関係者によりますと、検討の結果、会社では工事を2段階に分け、まずは海浜公園の南口付近に新駅を整備し、1.4キロの区間を先行して開業する方針を固めたということです。

年間200万人前後が来場する海浜公園はネモフィラなど季節の植物が人気で、都心部からの利用客も多く、アクセスを高めて来場者をさらに増やすほか、周辺では茨城県が新たな工業団地の開発を進めるなど、通勤需要も取り込みたい考えです。

そして、第2期として、当初の計画にあった大型商業施設が隣接する海浜公園西口付近までの1.7キロの区間も整備する方針です。

地方鉄道で9割近くが赤字となるなど、厳しい経営環境が続く中、延伸計画は極めて珍しく、ひたちなか海浜鉄道は今年度中に国に工事の許可を求める申請を出したうえで、着工してから早ければ5年後の完成を目指しているということです。

極めて珍しい地方鉄道の延伸

厳しい経営状況が続く地方鉄道で、延伸は極めて珍しい動きとなります。

国土交通省が、中小の民間鉄道や第三セクターの経営状況をまとめたところ、昨年度は全国の95社のうち85社で、鉄道や軌道事業が赤字になっていて、令和元年度の74社と比べて増加しています。

また、
▽JR東日本では、昨年度、利用が特に少ない62区間で赤字が648億円になると発表しているほか、
▽JR西日本では、広島県と岡山県を結ぶ芸備線の一部区間について、ことし施行された法律に基づき、路線の存続やバスへの転換などを議論する協議会の設置が調整されています。

直近では、新型コロナによる需要の落ち込みも大きいものの、少子高齢化や人口減少によって、地方の公共交通は苦境に立たされていて、ことし3月には、北海道でJR留萌線の一部区間が廃止されたほか、来年3月にはJR根室線の一部区間が廃止されることになっていて、地方路線の廃止が相次いでいます。

こうした中、地方鉄道の延伸は、国土交通省に記録の残る平成5年度以降では、路面電車やモノレールなどを除けば例がないと見られます。