【4日詳細】イスラエル軍 “ガザ南部への地上侵攻開始”

パレスチナのガザ地区で軍事作戦を再開したイスラエル軍は、3日も地区の全域を爆撃し、南部への地上侵攻を始めたことを明らかにしました。ガザ地区の保健当局は、この3日間で合わせて300人以上の死亡が確認されたとしていて、市民の犠牲が拡大しています。

イスラエルやパレスチナに関する日本時間12月4日の動きを随時更新でお伝えします。

イスラエル軍 “ハンユニスの一部の住民 さらに南に退避を”

4日朝、イスラエル軍のアラビア語の報道官はSNSを通じて、ガザ地区南部ハンユニスの一部の地区住民に対しさらに南のラファの方面に退避するよう通告し、作戦エリアを拡大する構えです。

ただ、NHKガザ事務所のスタッフによりますと、電力が不足するガザ地区ではインターネットはつながりにくくSNSを利用できる人が限られているほか、退避先と示しているラファでもイスラエル軍はここ数日、空爆を行っています。

またイスラエル軍は4日朝、ガザ地区全域でおよそ200のハマスの標的に空爆を行ったと発表し、このうち北部のベイトハヌーンでは学校の中に爆発物や武器庫などが隠されたハマスの拠点があったとしています。

これに対し、ハマスは北部のベイトラヒヤでイスラエル軍の戦車に反撃したほか、イスラエル南部のアシュケロンに多数のロケット弾を発射したとSNSに投稿し、徹底抗戦の姿勢を示しています。

イスラエル軍のガザ南部地上侵攻で人道状況の悪化懸念

パレスチナのガザ地区全域に対して爆撃を再開したイスラエル軍は南部への地上侵攻を進めていて地区での人道状況のさらなる悪化が懸念されます。

ガザ地区での軍事作戦を1日に再開したイスラエル軍は、残る人質の解放とイスラム組織ハマスの壊滅を目指すとして、地区の全域で激しい攻撃を続けています。

北部にある地区最大規模のジャバリア難民キャンプでは、2日に続いて空爆が行われ、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは100人以上が死亡したと伝えています。

イスラエル軍トップのハレビ参謀総長は3日、前日の2日朝から南部への地上侵攻を始めたことを明らかにしました。

イスラエル軍は攻撃に先立って住民にさらに南に避難するようビラをまいたとしていますが、南部の中心都市ハンユニスでは激しい爆撃が行われていて、地元の病院には負傷した市民が次々と搬送されています。

また、イスラエル軍は10月7日のイスラエルへの大規模な攻撃の指揮などをした司令官の1人を新たに殺害したと明らかにしました。

ガザ地区では劣悪な衛生環境により感染症の危険性も高まっていて、人道状況のさらなる悪化が懸念されます。

イスラエル軍が攻勢を強める都市 ハンユニスとは

ハンユニス市はガザ地区南部の中心都市で、人口は22万人、周辺には難民キャンプもあり市を含むハンユニス県全体の人口は41万人です。

さらにガザ地区南部には北部から多くの住民が逃れていてOCHA=国連人道問題調整事務所によりますとハンユニス県内だけで28万人の避難民が国連の学校施設などに身を寄せています。

一方、イスラエル軍はハンユニスとラファにはハマスの拠点があり、ハンユニス市周辺にはハマスのトンネル網も存在すると主張しています。

またハンユニス県の南東にあり、イスラエルとの境界に近いフザア地区はイスラエルとハマスの過去の大規模戦闘でもイスラエル軍の地上部隊が繰り返し侵攻し、最近も住民に対し、退避を通告するビラがまかれています。

ガザ地区保健当局“この3日間で確認された死者数は316人”

ガザ地区での軍事作戦を1日に再開したイスラエル軍は、残る人質の解放とイスラム組織ハマスの壊滅を目指すとして、地区の全域で激しい攻撃を続けています。

軍トップのハレビ参謀総長は3日、「われわれはガザ地区北部でハマスに対して強く徹底的に戦ったのと同様、南部でもこれを始めている」と述べ、前日の2日朝から南部への地上侵攻を始めたことを明らかにしました。

これに対してハマス側も応戦していると見られ、南部の中心都市ハンユニスの数キロ北では激しい戦闘が行われていると報じられています。

イスラエル軍は北部では、前日に続いて地区最大のジャバリア難民キャンプへの空爆を行い、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは100人以上が死亡したと伝えています。

現地からの映像では、がれきの中で子どもたちが家族を探す様子や、このうち1人の男の子が「父親と兄弟は殉教してしまった」と、声を振り絞るように泣き叫ぶ姿が写っています。

南部ハンユニスでも激しい爆撃が行われ、イスラエル軍は攻撃に先立って住民にさらに南に避難するよう指示するビラをまいたとしていますが、地元の病院には負傷した市民が次々と搬送されています。

ガザ地区の保健当局は、この3日間で確認された死者数は合わせて316人、負傷者は664人に上るとした一方で、実際の死傷者はそれよりはるかに多いとしています。

さらに、戦闘開始からの2か月近くの死者数は1万5523人、負傷者は4万1316人だと発表しました。

保健当局の報道官は「医療物資と人手が全く足りず、多くの人が失血死している。攻撃をやめさせるよう、世界中の人たちの良心に呼びかける」と訴えています。

現地で活動しているUNICEF=国連児童基金の担当者も、子どもたちが戦闘の巻き添えになったり、衛生環境の悪化による感染症で死亡したりする危険性が高まっていると指摘し、人道危機が深刻化しています。

イスラエル軍“ハマスの軍事用トンネル 約500か所を破壊”

イスラエル軍は3日、ガザ地区での軍事作戦を始めた10月以降、およそ1万回の空爆を行ったほか、ハマスが軍事目的に使っていると見られるトンネルを800か所以上発見し、このうちおよそ500か所を破壊したと発表しました。

その様子を公開した映像では、モスクの中でトンネルの入り口を発見したとして、部屋の片隅の床下を持ち上げると1人が入れるほどの縦穴が現れ、下へと続くはしごがかかっているのが分かります。

また、ガザ地区の北部だとする映像では、10年前、ドイツの団体から現地に寄贈された学校のすぐ外に、四方をコンクリートで固められた深さ15メートルの縦穴を発見したとして、撮影している兵士が「ハマスによる、学校の皮肉な使用方法を見ることができる」とコメントしています。

映像ではほかにも、住宅の前などの、土に覆われた地面にある複数の縦穴を写し、それらを爆破して破壊する様子を見せています。

フーシ派“イスラエルの船舶2隻を攻撃”

イスラエルと対立するイエメンの首都サヌアを含む北部を掌握する反政府勢力フーシ派は3日、ビデオ声明で紅海につながるバーブルマンデブ海峡でイスラエルの船舶2隻に対する攻撃を行ったと発表しました。

1隻についてはミサイルで、もう1隻については無人機での攻撃を行ったとしていて、「イスラエルがガザ地区への侵攻をやめないかぎり、イスラエルの船舶による紅海などでの航行を阻止し続ける」などとしています。

これについてアメリカ国防総省の報道担当者は3日、「紅海でのアメリカ軍のミサイル駆逐艦『カーニー』と複数の商業船への攻撃に関する情報は把握している」として、何者かによる駆逐艦などへの攻撃があったと明らかにしました。

フーシ派はイスラエルに関連する船舶も標的になるとしていますが、アメリカの駆逐艦については言及していません。

フーシ派は先月19日にも紅海を航行中だった日本企業が運航する貨物船をイスラエルの船だと主張して乗っ取るなど、これまでにも周辺海域での攻撃などを繰り返しています。

イスラエル軍 報道官「無関係の商船2隻にミサイル発射された」

一方、これについてイスラエル軍のハガリ報道官は3日「きょう、イスラエルとは関係のない商船2隻にミサイルが発射された。1隻は重大な損傷を受け、沈没の危険にさらされており、もう1隻は軽度の損傷を受けた」と述べ、イスラエルの船舶ではないという認識を示しました。

その上で「これはフーシ派が組織した破壊的な事件であり、フーシ派が使っているのはイランの兵器であることを理解すべきだ。さまざまな情報、それに攻撃の能力や手法はイランの関与を示している。この地域におけるイランの破壊活動は世界的な問題であり、これに世界がどう反応するかが重要だ。この海域での航行の自由が危険にさらされつつある」と、警鐘を鳴らしました。

アメリカ軍 “紅海南部の国際水域で商船3隻が攻撃受ける”

アメリカ中央軍は3日、声明を発表し、紅海南部の国際水域を航行していた商船3隻が4回にわたって攻撃を受け、アメリカ海軍のミサイル駆逐艦が無人機を撃ち落とすなど対応したと明らかにしました。

声明によりますと、ミサイル駆逐艦「カーニー」は、3日午前9時すぎ、イエメンの反政府勢力フーシ派の支配地域からイギリスの会社が所有・運航するバハマ船籍の貨物船に向かって弾道ミサイルが発射され、近くに着弾したのを確認したということです。

およそ3時間後、「カーニー」は、この貨物船から、フーシ派の支配地域から発射されたミサイルによって攻撃されたと通報を受け、貨物船の被害状況を調査していたところ、無人機を確認したため、これを撃ち落としたとしています。

そして午後3時半、別のイギリスなどの会社が所有・運航するパナマ船籍の商船は、フーシ派の支配地域からミサイル攻撃を受けて損傷したほか、午後4時半にはパナマ船籍の貨物船で、8か国の船員が乗り組む別の船舶もミサイル攻撃を受けたということです。

いずれもけが人はいなかったとしています。

アメリカ中央軍は声明の中で「一連の攻撃は国際貿易と海洋安全への直接の脅威だ。攻撃はフーシ派によるものだがイランによって可能になっている」として、フーシ派を支援するイランを非難しました。

米ホワイトハウス「移動の住民を考慮するまで作戦見たくない」

アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は3日、ABCテレビに出演し、イスラエル軍によるガザ地区南部での軍事作戦について「イスラエル軍は北部から南部に住民たちを移動させているのだから、こうした人たちを考慮するまでは、南部の作戦は見たくないと公言してきた」と述べ、北部から避難してきた人たちも含めて、住民たちに危害が及ばないようイスラエル側に重ねて求めました。

イスラエル軍によるガザ地区南部での軍事作戦をめぐっては、バイデン大統領が先月26日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談した際、南部には大勢のパレスチナ住民がいるとして、イスラエル軍が北部で行ったような広範囲に攻撃が及ぶ作戦は繰り返してはならないと伝えたと、アメリカのニュースサイトアクシオスが報じています。

ロンドンで平和願う集い 旗など所属示すもの持たず

イギリスのロンドンでは、宗教団体や慈善団体などが呼びかけたイスラエルとパレスチナの平和を願う集いが3日、開かれました。ロンドンの首相官邸前には1000人以上が参加しました。

屋外に設けられたステージには、ハマスによる攻撃で両親を失ったイスラエル人のマーゲン・イノンさんと、ガザ地区に親戚が暮らすパレスチナ人の平和活動家ハマズ・アワドさんが登壇しました。イノンさんは「恐怖と憎しみを捨て、よりよい未来が可能だという希望を持つことが大切だ」と涙ぐみながらスピーチし、アワドさんと抱擁を交わしていました。

参加者はイスラエルやパレスチナの旗やプラカードなど所属を示すものは持たず、ろうそくの形をした小さなライトなどを手に、静かに祈りをささげていました。

アワドさんは「ガザ地区で起こっている殺りくは、怒りと復讐心が動機にあり、今すぐやめなければならない。長引けば長引くほど、私たちの未来は暗くなる。世界が介入し、傷ついているイスラエルとパレスチナを助ける必要がある」と話していました。