柔道 グランドスラム東京 阿部一二三と妹の詩がそろって優勝

柔道の国際大会、グランドスラム東京は最終日を迎え、来年のパリオリンピックの代表に内定している男子66キロ級の阿部一二三選手と妹で女子52キロ級の詩選手がそろって優勝しました。

2日から始まったグランドスラム東京は東京 渋谷区の東京体育館で行われ、最終日の3日は男女合わせて8階級で試合が行われました。

来年のパリオリンピックの代表に内定している選手も多く出場し、男子66キロ級では東京オリンピックの金メダリスト、阿部一二三選手が得意の背負い投げや豪快な大外刈りで勝ち進み、決勝では東京オリンピックに出場したモンゴルの選手と対戦しました。

開始直後から積極的に攻めた阿部選手は1分すぎ、相手が後ろに引いたところを見逃さずに大外刈りで一本を奪い、優勝しました。

また、女子52キロ級では妹の詩選手が投げ技だけでなく、抑え込みでも一本を取るなど順調に決勝に進み、フランスの選手と対戦しました。

冒頭から激しい組み手争いになりましたが、開始からおよそ1分、詩選手が小内刈りで一本を奪い、優勝しました。

女子48キロ級 角田夏実が優勝

女子48キロ級では、世界選手権で3連覇している角田夏実選手が決勝でスペインの選手を相手に腕ひしぎ十字固めを決めて、わずか25秒で頂点に立ちました。

男子100キロを超えるクラスでは期待の若手、斉藤立選手が初戦からキレのある投げ技などで勝ち進みましたが、準決勝で韓国の選手に敗れました。

このあと、けがのため3位決定戦は棄権しました。

パリ五輪の代表選考兼ねた4階級は

今回の大会は来年のパリオリンピックの代表が内定していない男子60キロ級、男子100キロ級、女子63キロ級、女子78キロ級の4階級の代表選考も兼ねた重要な大会でした。

男子60キロ級では、代表を争う高藤直寿選手と永山竜樹選手はそれぞれ勝ち上がって、決勝で対戦しました。試合は延長までもつれ、永山選手が一本背負いで一本を奪い、優勝を果たしました。

男子100キロ級では大学1年生の18歳、新井道大選手が初めてのグランドスラム出場で2位となりました。東京オリンピックの金メダリスト、ウルフアロン選手は準々決勝で敗れ敗者復活戦に回りましたが、延長戦の末、敗れました。

ことしの世界選手権代表で世界ランキングでは日本人選手で最も上位だった飯田健太郎選手は2回戦で敗れました。

女子63キロ級では代表を争う高市未来選手と堀川恵選手が準々決勝で直接対決しました。両者譲らない展開が続きましたが、高市選手には1つ、堀川選手には2つ指導が入った状態で延長戦に入りました。延長に入ってから1分半、2人に消極的な攻めに対する指導が出て、堀川選手が反則負けとなったため、高市選手が勝ちました。

そして、大学4年生の山口葵良梨選手との決勝は延長に入りましたが抑え込んで優勝しました。

女子78キロ級では東京オリンピックを制した濱田尚里選手が準々決勝で敗れて敗者復活戦に回りました。しかし、持ち味の寝技に持ち込むことができず、一本を奪われて敗れました。

去年、この大会を制した高山莉加選手は大学2年生の杉村美寿希選手に勝って3位でした。

男子66キロ級優勝 阿部一二三「自分の柔道で優勝できた」

男子66キロ級で優勝した阿部一二三選手は「すごくうれしい。自分の柔道をするだけだと考えていたし、圧倒的に勝つだけだと考えていた。自分の柔道で優勝できたのでまた自信になる」と率直な思いを話しました。

そして、来年に向けては「海外勢の選手はもっと仕上げてくると思うし、研究もしてくると思う。これで満足せず、その上をいくくらい努力してパリオリンピックではもっと圧倒的に勝ちたい」と意気込みました。

また、ともに優勝した妹の詩選手については「さすがだった。苦しかったところもあったと思うが、勝負強いなと思った」とたたえました。

女子52キロ級優勝 阿部詩「勝ち切れてよかった」

女子52キロ級で優勝した阿部詩選手は「なかなか本調子ではない中でも勝ち切れてよかった。少しは進化したのかなと思った」と冷静に話しました。

そして、「柔道自体は一つ階段は登れたと思うので、しっかりあとはパリに向けてつなげていきたい」とことし1年を踏まえて来年への思いを話していました。

また、同じく優勝した兄の一二三選手については「自分の柔道を貫く力がすごいと思う。私にはできないことだ」と話していました。

女子48キロ級優勝 角田夏実「緊張感があった」

女子48キロ級を制した角田夏実選手は「勝たなければならないという緊張感があったが、応援してくれる方々がいるので頑張れた」と率直な思いを話しました。

そして、初めてのオリンピック代表に内定したことしを振り返り、「すごくきつかったが、充実した1年だった。来年にもつなげていきたい」と話していました。

男子100キロ超級 斉藤立「落ちるところまで落ちた」

けがで3位決定戦を欠場した男子100キロを超えるクラスの斉藤立選手は自身の状態について「右の太ももの裏の肉離れだと思う。前になったことがある。今週もなって準々決勝で痛みが出た」と説明しました。

その上で「ことしは全然よくなくて納得いく結果は出ていない。落ちるところまで落ちたかなと。悔しいと同時に悲しい」と話しました。

一方でパリオリンピックに向けては「やってきたことは間違っていないし明確だ。きょうも準々決勝まではいい流れだった。決勝まで維持できる力をつけていきたい」と意気込みを示していました。

男子60キロ級優勝 永山竜樹「やっとここまで来た」

男子60キロ級で優勝した永山竜樹選手は高藤直寿選手との決勝について「気づいたら投げていた。東京オリンピックの代表を争った4年前の大会でもタカ藤選手に決勝で負けていた。あんな悔しい思いをしたくないと思って畳に上がった。やっとここまで来た。勝った瞬間は『よっしゃあ』という感じだった」と振り返りました。

決勝のあと高藤選手からは「頑張れよ」と声をかけてもらったということで「ライバルだし、尊敬できる先輩だ。タカ藤選手の分まで勝ち続けたい」と今後への意気込みを話しました。

男子60キロ級2位 高藤直寿「すっきりしている」

男子60キロ級で永山竜樹選手に敗れて2位に終わった高藤直寿選手は「すっきりしている。直接対決できてよかったと思う。単純に永山選手が強かったというだけで、自分の実力不足だ。やりきりました」とすがすがしい表情で答えました。

また、今後については趣味でもあるゲームを念頭に、「プロゲーマーですかね」とおどけてみせましたが、「きょう若手の選手とやっていいベテランの姿を見せることができたと思う。執念というのを見せられるような選手でありたい。現役をやめるということをすぐには言わないのでちょっと待っていてほしい」と話していました。

男子100キロ級2位 新井道大「いちから見つめ直す」

男子100キロ級で2位に入った新井道大選手は、開始30秒余りで敗れた決勝への反省を口にし「1回戦から準決勝までいい柔道をしても、決勝で負けてしまったら意味がない。こんな試合をしてしまったらパリオリンピックの代表にも選ばれない。まだまだ壁がある。いちから見つめ直す」と話していました。

男子100キロ級 ウルフ「切り替えられなかった」

敗者復活戦で敗れた男子100キロ級のウルフ・アロン選手は「優勝を目指してやってきたが、準々決勝で負けてしまい、切り替えられなかった。代表を決める気持ちで臨み、体の状態も悪くなかったが、そういった中で競り負けてしまうのがまだまだ足りないところだ」と振り返っていました。

女子63キロ級優勝 高市未来「次につなげられよかった」

女子63キロ級で優勝した高市未来選手は「多くの人に背中を押されて試合ができた。次につなげられたことによかったという気持ちが涙として出てきた」と喜びを話しました。

パリオリンピックの代表を争った堀川恵選手との準々決勝については「延長にもつれると思っていたし、投げたり押さえたりして勝負をつけることは厳しいと思っていた。とにかく足技と組み手を徹底して隙のない柔道をしていこうと思っていた。妥協せずにできたことが勝利に近づいた」と振り返りました。

今後に向けては「オリンピックでの過去2大会は結果が出せなくて情けない気持ちがあった。でもその悔しさから目を背けずにこつこつとやってきた。ほっとしているが、もっと苦しい道が待っている」と話していました。

女子63キロ級 堀川恵「率直に自分の実力不足」

3位決定戦で敗れた女子63キロ級の堀川恵選手は「率直に自分の実力不足だ。毎回試合に勝って、オリンピック代表になると思って臨んでいたが、自分の思いとは裏腹に成績がついてこなかった」と大粒の涙を流して振り返りました。

そしてオリンピック代表の座を争っている高市未来選手に敗れた準々決勝については「すべてではないが準備してきたことはやれた。これが結果だと思う」と話していました。

女子78キロ級3位 高山莉加「率直に悔しい」

女子78キロ級で3位に入った高山莉加選手は「優勝を目指してやってきたので率直に悔しいが、メダルを取れてよかった。準決勝で敗れたが気持ちを切り替えられた」と振り返りました。

この階級ではまだ、パリオリンピックの代表が内定していないことについては「オリンピックが私1人の夢だったらもう諦めているが、サポートしてくれている人たちの夢も背負っている。パリオリンピックに出場して金メダルをとりたい」と話していました。

女子78キロ級 梅木真美「悔しいし情けない」

3位決定戦で敗れた女子78キロ級の梅木真美選手は「優勝しか次につながらないと思って自分のすべてをぶつけようと思っていた。3位決定戦では動きがかたくなってしまった。こういう結果に終わって悔しいし情けない」と涙を流しながら声を振り絞っていました。

女子78キロ級 濱田尚里「きょうのような柔道では厳しい」

敗者復活戦で敗れた女子78キロ級の濱田尚里選手は「きょうのような柔道では本当に厳しいと思う」と敗戦を受け止めました。そして「きょうの試合に勝つことを目標にしてまずやってきたので、今後のことはまだ考えていない」と話しました。