ブラジル北部 “観測史上最悪”干ばつ 60万人以上に深刻な影響

南米のアマゾン川が流れるブラジルの北部一帯で、観測史上で最悪といわれる干ばつの被害が広がっています。川の水位が極端に低下し、水運などに頼っているこの地域の人々の生活に深刻な影響を及ぼしています。

ブラジル北西部アマゾナス州の州都マナウスでは、例年8月から10月にかけて雨が少なくなる乾期を迎えますが、ことしは極端に雨が少ない状態が続いています。

市内を流れるアマゾン川の支流のネグロ川は、水位が一時12メートル台と、1902年の観測開始以降、最も低くなり、この地域の人々の生活を支える水運や観光業などに深刻な影響が出ています。

市内にあるネグロ川の船着き場では、干ばつの影響で川底が広い範囲で露出し、船が運航できない状況が続いています。

船着き場の近くに住むアルデニース・ダシルバさんは「この場所はふだん完全に水につかっています。ひどい干ばつの状況にとても驚いています」と話していました。

また、水温の上昇でアマゾン川の支流に生息し、絶滅危惧種に指定されている地元の固有のイルカが大量に死ぬなど動植物や漁業などにも被害が広がっていて、この州で暮らす60万人以上の人々が干ばつの深刻な影響を受けていると見られています。

水位低下で約2000年前の彫刻が露出

干ばつによるアマゾン川の水位の低下で、川底の岩に彫られたおよそ2000年前のものとみられる彫刻が露出し、現地で話題を呼んでいます。

みつかったのは人の顔などを岩にかたどった彫刻で、アマゾン川の支流ネグロ川とソリモンエス川の合流点付近の岩場にあります。

この場所では2010年の干ばつの際にも川底からいくつかの彫刻が見つかっていましたが、今回は一度に30もの人の顔の彫刻がみつかったということです。

考古学が専門のアマゾナス連邦大学カルロス・シルバ教授は、数千年前の人間の状況を示しているとした上で「人の顔の彫刻には笑顔が見られる。うれしい場面を描いているのではないか。過去の実態を知るための貴重な資料だ」と話しています。

専門家「海水温上昇が重なったことが原因か」

記録的な干ばつは、南米・ペルー沖の赤道付近の海水温度が平年より高くなる「エルニーニョ現象」と大西洋の海水温の上昇が重なったことが主な原因とみられています。

専門家は地球温暖化がその影響を激化させていると指摘します。

アマゾン環境研究所のパトリシア・ピーニョさんは「気候変動や気温の上昇によって、干ばつなどの被害が広い範囲で重大に、かつ頻繁に起こるようになっている」と話しています。

また「地球の肺」とも呼ばれるアマゾンの熱帯雨林の急速な減少も干ばつに影響を及ぼしているとみられています。

ブラジルのアマゾンではことし7月までの1年間に消失した熱帯雨林の面積が、推定でおよそ9000平方キロメートルと、鹿児島県に匹敵する大きさとなりました。

アマゾンの熱帯雨林は大気中の湿度を高め、周辺地域に雨をもたらすとされていますが、森林破壊によってその機能が低下していると指摘されています。

ブラジル北西部のアマゾナス州では、干ばつがピークとなったことし10月、森林火災の件数が去年の同じ時期に比べて2.5倍に増え、火災の煙による大気汚染の被害が深刻化しました。

アマゾンでは11月ごろに雨期に入るとされていますが、ことしは干ばつが12月中も続くとみられていて、影響が長引くことが懸念されています。