【3日詳細】“2日間で200人死亡 負傷者600人” ガザ保健当局

イスラエルのネタニヤフ首相は「地上侵攻なしに目標を達成することは不可能だ」と述べ、ガザ地区で再開した軍事作戦を継続する必要性を強調しました。戦闘の休止を再び実現する道筋は見えず、ガザ地区の人道状況のさらなる悪化が懸念されます。

イスラエルやパレスチナに関する日本時間12月3日の動きを随時更新でお伝えします。

“2日間で200人死亡 負傷者600人” ガザ地区の保健当局

ガザ地区での軍事作戦を1日に再開したイスラエル軍は残る人質の解放とイスラム組織ハマスの壊滅を目指すとして、全域で激しい攻撃を続けています。

2日夜から3日朝にかけては戦闘機やヘリコプターを使ってトンネルや指揮所、それに武器庫など、ハマスの拠点を空爆したほか、無人機でハマスの戦闘員5人を殺害したと発表しました。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラは南部のハンユニスなど各地で激しい攻撃が行われたと伝えていて、ガザ地区の保健当局は、2日間で200人が死亡し、負傷者は600人近くに上ったとしています。

ハマスの軍事部門は2日夜、ガザ市北部でイスラエル軍の兵士を攻撃したほか、イスラエル最大の商業都市テルアビブなどに向けてロケット弾を多数発射したとしています。

国連 “燃料含む人道支援物資がガザ地区に搬入”

OCHA=国連人道問題調整事務所は、2日、食料や水、それに医薬品や毛布といった人道支援物資を積んだトラックがエジプトからガザ地区に入ったとしています。

これに加え13万8000リットルの燃料を積んだトラックも入ったとしました。

イスラエルメディアは2日に搬入された燃料の量について、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が始まって以降、1日あたりで最も多いとしたうえで、イスラエル政府の関係者が「イスラエルはパレスチナの民間人に届けられる人道支援物資は許可し続けるだろう」と話したと伝えています。

国連 “ガザ地区 人口の8割 約180万人家を追われた”

OCHA=国連人道問題調整事務所の2日のまとめによりますと、ガザ地区では人口の8割にあたるおよそ180万人が家を追われたと推定されています。ただ、戦闘休止中に自宅に戻ったものの避難所に登録されたままの人もいて正確な数の把握は困難だとしています。

イスラエル軍は2日、ガザ地区全域を1000以上の細かいエリアに分けた地図をもとに攻撃の対象となる地域を示し住民に退避するよう通告しましたが、OCHAによりますと、ガザ地区のおよそ25%が対象地域に指定されたということです。

その上で南部では数千人がエジプトとの境界にあるラファに退避した一方、北部での避難の状況は分かっていないとしています。

避難所の劣悪な環境も続いています。多くの人が身を寄せている南部の国連の避難所では、下痢の症状や呼吸器疾患などを訴える人が増えているということです。

またガザ地区の避難所では汚染された水や食品などを介したとみられるウイルス性の病気、A型肝炎の発生も報告されているということです。

ネタニヤフ首相「全ての人質戻りハマス壊滅まで闘い続ける」

イスラエルのネタニヤフ首相は2日の記者会見で「戦闘休止の間にハマスに対する完全な勝利に向けた準備をしていた。すべての人質を取り戻し、ハマスを壊滅させるまでわれわれは全力で闘い続ける」と述べました。

そのうえで「地上侵攻なしに目標を達成することは不可能だ」と述べ、ガザ地区で再開した軍事作戦を継続する必要性を強調しました。

ガザ地区保健当局“戦闘再開後の2日間で 地区全体で200人死亡”

1日にガザ地区での軍事作戦を再開したイスラエル軍は、この2日間で合わせて400以上の標的を攻撃したと明らかにしました。

攻撃の対象は全域にわたり、このうちイスラエル軍が戦闘機で50以上の標的を攻撃したとする南部の中心都市ハンユニスからの映像には、爆撃を受けた集合住宅が大きく壊れ、病院に負傷者が次々と搬送される様子が写っています。

イスラエル軍は攻撃に先立って、ガザ地区全域を細かいエリアに分けた地図を作りそれをもとに攻撃対象地域の住民に対して別の地域に避難するよう通告しました。

ハンユニスの東側の住民には、さらに南のラファへ移動するよう通告するビラを上空からまきましたが、北部から避難してきたばかりの人も多い上移動先に指定されたラファでも攻撃による被害が出ていて、途方に暮れる住民の姿が見られます。

またイスラエル側が主導権を握ったとするガザ地区北部でも戦闘が続き中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、北部のジャバリアではイスラエル軍の空爆で100人が死亡したと伝えています。

ジャバリアでの作戦についてイスラエル軍は「学校の敷地内に深さ数十メートルのトンネルを発見し、テロリストを無力化した」と主張しています。

一方のハマスは、同じ北部のガザ市近郊でイスラエル軍の兵士を殺害したと主張しているほか、イスラエルに向かって断続的にロケット弾を発射しています。

ガザ地区の保健当局は、戦闘再開後の2日間で、地区全体で200人が死亡し、負傷者は589人に上るとしています。

こうした中イスラエル首相府は2日声明を発表しハマスとの仲介役を務めるカタールに派遣していた交渉団を引きあげさせたことを明らかにし戦闘の休止は遠のいた形となりました。

また戦闘の再開後、ガザ地区への支援物資の搬入は滞っていましたが、パレスチナの赤新月社は2日、食料や水、それに医薬品などの人道支援物資を積んだトラック100台がエジプトとの境界にあるラファ検問所を通過し、物資を受け取ったと発表しました。

ただ今後、燃料も含めた支援物資の搬入が順調に進むかは不透明で、戦闘の再開によって、ガザ地区の人道危機がさらに深刻化することが懸念されます。

イスラエル首相府“ドーハにいるチームに帰国命じた”

イスラム組織ハマスとの戦闘休止をめぐる交渉についてイスラエル首相府は2日、声明を発表し「交渉の行き詰まりを受け、ネタニヤフ首相の指示によって情報機関モサドの長官はドーハにいるチームに帰国を命じた」として、仲介役を務めるカタールの首都ドーハに派遣していた交渉団を引きあげさせたことを明らかにしました。

その上で「テロ組織ハマスは、みずからが承認したリストに基づき、すべての子どもと女性の人質を 解放するなどとした合意を履行しなかった」として、7日間続いた戦闘休止が延長されなかった責任はハマス側にあると改めて批判しました。

イスラエルの地元メディアなどでは人質のさらなる解放を目指す新たな合意が模索されているとも伝えられていましたが、交渉団の引きあげによって、1日に再開した戦闘の休止は遠のいた形となりました。

ハマス 政治部門幹部「停戦実現しないかぎり 人質解放応じない」

イスラム組織ハマスの政治部門の幹部は2日、中東の衛星テレビ局アルジャジーラのインタビューでガザ地区で停戦が実現しないかぎり、残る人質の解放には応じない姿勢を強調しました。

この中で、この幹部は、イスラエル側との間で戦闘休止をめぐる交渉は現在行われていないとした上で「この戦争が終わり、恒久的な停戦が成立するまで、イスラエル人の人質と収監されているパレスチナ人は交換しないというのが、われわれの最終的な立場だ」と述べました。

さらに「イスラエル側は、人質の中に女性と子どもがまだいると主張しているが、女性と子どもは全員解放した。残っているのはいずれも兵士か従軍経験のある男性だけだ」と述べました。

一方、イスラエルのガラント国防相は、この日、ハマス側が女性15人と子ども2人の解放を拒否したと主張し、人質をめぐる双方の言い分は、平行線のままとなっています。

イスラエル最大の商業都市で大規模デモ

イスラエル最大の商業都市テルアビブの広場には2日夜、数千人の市民らが集まり「人質を家に戻せ」とか「平和のための対話だけがこの状況を解決できる」などと書かれたプラカードを持って中心部の大通りを練り歩いていました。

ガザ情勢に対するネタニヤフ政権の対応をめぐっては、イスラエル国民の間でも意見は分かれていて、デモの最中には、デモの参加者が道路脇にいた政権の支持者と口論になる場面も見られました。

イラン国営通信“シリアに派遣の隊員 イスラエルの空爆で死亡”

イランの国営通信によりますと、イランの精鋭部隊、革命防衛隊は2日声明を出し、隣国のシリアに軍事顧問として派遣していた隊員2人が、イスラエルによる空爆で死亡したと発表しました。

声明によりますと、死亡した2人は、イランが主導し、中東各地の武装組織でつくるネットワーク「抵抗の枢軸」の活動を支援する任務にあたっていたということです。

イスラエルと敵対するイランは、長年、ハマスの後ろ盾となってきましたが、10月に衝突が始まって以来、直接的な軍事介入は行わない考えを示していました。ただ今回、イランの部隊の隊員がイスラエルの空爆によって初めて亡くなったことで、イランの今後の対応しだいでは中東情勢がいっそう不安定化することも懸念されます。

これに先だってシリアの国営通信は2日、軍関係者の話として、首都ダマスカス周辺の複数の場所がイスラエルのミサイルで攻撃されたものの、その多くを防空システムで迎撃したと伝えていました。