元検事長の定年延長 経緯の開示求める裁判 元事務次官が証言

東京高等検察庁の黒川元検事長の定年を延長した閣議決定をめぐり、大学教授が国に対し経緯を正確に検証できる文書を開示するよう求めている裁判で、1日に法務省の元事務次官への証人尋問が行われました。元事務次官は、閣議決定の根拠となった法解釈の変更について「黒川氏の定年延長を目的としたものではない」などと証言しました。

2020年の5月、緊急事態宣言のさなかに賭けマージャンをして辞職した東京高等検察庁の黒川弘務 元検事長について、政府は、同じ年の1月に定年を延長する閣議決定をしていました。

この定年延長をめぐり、神戸学院大学の上脇博之教授は、法務省などに情報公開請求しましたが、多くは「存在しない」として開示されず、教授は国に対し、経緯を正確に検証できる公文書を開示するよう求めています。

12月1日、大阪地方裁判所で開かれた裁判では、当時、法務省の事務次官を務めていた辻裕教氏への証人尋問が行われました。

この中で、辻 元事務次官は、閣議決定の根拠となった法解釈の変更の経緯について「国家公務員法の定年に関連する制度を見直す中で、検察官にも適用できるかどうかを検討した。社会情勢や犯罪情勢、捜査のあり方が変わる中、検察官が定年で交代すると業務に多大な支障が生じる場合があるのではないかと考えた」と述べました。

そのうえで「黒川氏の定年延長を目的としたものではない」と証言しました。

また、裁判長が「第三者的にみると黒川元検事長の定年退職に間に合わせるように準備したように見えなくはないが、そういった見方についてはどう思うか」と尋ねると、元事務次官は「特定の検察官の定年延長が目的ではなく、そのような事実関係はない」と改めて述べました。

原告側「証言を引き出せたこと意義がある」

裁判のあと、原告側は記者会見を開きました。この中で、原告の上脇教授は、1日の裁判で元事務次官が閣議決定の根拠となった法解釈の変更を「黒川氏の定年延長を目的としたものではない」と証言したことについて「無理な法解釈をして定年を延長するのは、法律学的にもおかしい。黒川さんのためとしか言いようがない」と述べました。

また、元事務次官が法解釈の変更を全国の検察官に周知したか原告側に尋ねられ「特に周知していない」と証言したことについて、原告の代理人弁護士は「特定の検察官のためではないと言いながら、法解釈の変更を広く周知せず、定年延長の要件や手続きも定めていない。不自然な説明で、こうした証言を引き出せたことは意義がある」と話していました。