留置場死亡“必要な医療等怠った”署員ら9人書類送検 愛知県警

2022年、愛知県の岡崎警察署の留置場の保護室で勾留されていた43歳の男性が長時間、拘束されるなどしたあと、死亡した問題で、愛知県警察本部は男性に必要な医療措置を受けさせることを怠ったなどとして、当時、留置管理業務に関わった署員ら9人を業務上過失致死などの疑いで書類送検しました。また、書類送検された署員を含め、岡崎警察署の署長ら合わせて27人が処分され、署長は依願退職しました。

2022年12月、岡崎警察署の留置場の保護室で、公務執行妨害の疑いで逮捕され勾留されていた、43歳の男性が死亡しました。

警察によりますと、男性は食事を拒んで5日間にわたって食事をとっておらず、死因は腎不全による病死だったということです。

愛知県警察本部は、男性が暴れたことを理由に、保護室でベルト型の手錠や縄などで連続100時間以上にわたって拘束されていたことから、こうした対応が法令に違反していないか捜査を進め、12月1日、当時、留置管理業務に関わった46歳の警部など署員8人と退職した署員1人の合わせて9人を書類送検しました。

9人はそれぞれ
▽男性に必要な医療措置を受けさせることを怠り脱水症状により急性の腎不全で死亡させた業務上過失致死の疑いや
▽男性を足で蹴ったり踏みつけたりするなどした特別公務員暴行陵虐の疑い
さらに
▽保護室に収容した際などに、「医師に意見を聞いた」とうその報告書を作ったなどとする虚偽有印公文書作成の疑いが持たれています。

また、書類送検された署員を含め、岡崎警察署や県警本部の留置管理課の幹部ら合わせて27人が処分され、このうち岡崎署長は留置場の巡視を怠ったなどとして減給の懲戒処分を受け、12月1日付けで依願退職しました。

愛知県警 鎌田徹郎 本部長「男性と遺族 県民におわび」

愛知県警の鎌田徹郎 本部長は「亡くなった男性のご冥福を改めてお祈りするとともに、ご遺族には心からお悔やみを申し上げます。不適切な処遇が継続して尊い命が失われたという重大な結果を生じさせてしまったことを、男性とご遺族、県民の皆様に深くおわび申し上げます」などとコメントしています。

亡くなった男性の父親「処分には全然納得できない」

愛知県新城市にある、亡くなった男性の父親の自宅には1日午前、愛知県警の監察官室長などの警察官が訪れました。

父親によりますと、訪れた警察官たちは、亡くなった男性の遺影の前で焼香したうえで、一連の問題に関係した処分について説明し、謝罪したということです。

一方、詳細な調査結果については、後日改めて報告を受けることになったということです。

警察との面会を終えたあと、記者団の取材に応じた父親は「どうして息子が適切な医療を受けられなかったのか。処分には全然納得できない。『誰が減給だ』などと説明していたが、そんなことは頭に入ってこなかった」と話しました。

そのうえで「息子が暴れて警察に捕まって、はじめは保護されてよかったと思っていた自分がばかだった。こういう結果になって、息子は警察に殺されたと思っているし、世の中の人にも自分の家族が逮捕されたら、同じ目に遭うかもしれないと伝えないといけない」と話していました。

警察庁 全国の警察の再発防止策を通達

警察庁は1日、全国の警察に対して再発防止策の通達を出しました。

▽留置場内で暴れる人などに対し、手錠や縄など、体を拘束する道具を使う場合には、必ず警察本部に連絡をして、使用を検討すること。

▽手錠や縄の使用は、最大3時間までとすること。

▽警察署長などの責任者が、一日1回以上の留置場内の巡視を必ず行い

▽医療を必要とする人への対応を徹底することなどを明記しています。