【30日詳細】ガザ地区の戦闘休止 一日再延長で合意

イスラエルとイスラム組織ハマスによるガザ地区での戦闘休止は期限ぎりぎりの30日、休止期間を一日延長することで双方が合意しました。日本時間の12月1日午後2時までは戦闘の休止が続く見通しですが、イスラエル側は休止期間が終わり次第、軍事作戦を再開する姿勢を崩しておらず、休止のさらなる延長に向け仲介する関係国などによる働きかけが続いています。

イスラエルやパレスチナに関する日本時間30日の動きを随時更新でお伝えします。

1日午後2時までは戦闘休止

イスラエルとガザ地区を実効支配するハマスは今月24日から6日間にわたって戦闘を休止し、これまでハマス側がガザ地区で拘束していたイスラエル人と外国籍の人質合わせて97人を解放した一方、イスラエルも刑務所に収容していたパレスチナ人210人を釈放しました。

そして、戦闘休止のさらなる延長に向けて、仲介役のカタールやエジプト、それにアメリカを交えた交渉が進められ、30日未明にはアメリカのブリンケン国務長官がイスラエル入りしました。

こうした中、ハマスは休止期間が終わる1時間ほど前の声明で、「イスラエル側が女性と子どもの人質合わせて7人と、イスラエル軍の爆撃で死亡した3人の遺体の受け取りを拒否した」と主張して、引き渡す人質のリストをめぐるせめぎ合いが続いていることを示唆し、双方が戦闘の再開に向けた構えを見せるなど緊張が高まっていました。

最終的には、期限まで残り20分を切ったところで、イスラエル軍が「仲介者の努力を考慮し、戦闘休止が継続される」とSNSに投稿したのに続き、ハマスとカタールの外務省が戦闘休止を一日延長することで合意したと相次いで発表しました。

これによって、日本時間の1日午後2時までは戦闘の休止が続く見通しとなりました。

しかし、イスラエル軍は休止期間が終わり次第、ガザ地区での作戦を再開する姿勢を崩していません。

戦闘が再開すればガザ地区での人道危機がいっそう深刻になると懸念されていて、1日以降も戦闘休止の延長を目指すアメリカやカタールなどによる働きかけが続くことになります。

エジプト「さらに2日間延長すべく接触が続く」

エジプト政府は30日、声明を発表し、「エジプトとカタールの努力の結果、戦闘の休止の継続に向けて多くの障害を克服することができた」として、戦闘休止が再び延長されたことを歓迎しました。

その上で、「より多くの人質の解放と囚人の釈放、それにガザ地区へのさらなる人道支援物資の搬入に向けて、戦闘休止をさらに2日間延長すべく、エジプトとカタールによる接触が続いている」として、仲介役の両国がイスラエルとハマスに働きかけていることを明らかにしました。

米国務長官「戦闘休止が続くことを期待」

イスラエルを訪問中のアメリカのブリンケン国務長官は30日、イスラエルのヘルツォグ大統領と会談し、戦闘の休止が人質の解放やガザ地区への人道支援の拡大といった結果をもたらしているとして、さらなる戦闘休止の延長を求める考えを示しました。

この中で、ブリンケン長官は「この1週間、人質が解放され、家族と再会するという非常に前向きな進展をみることができた。また、人道支援を切実に必要としているガザ地区の罪のない民間人への支援を大幅に増やすこともできた」と述べました。

そして、「戦闘の休止は結果をもたらしているし、重要だ。これが継続されることを期待したい」と述べ、アメリカとしてさらなる戦闘休止の延長を求める考えを示しました。

ブリンケン長官はイスラエルの政府要人との会談を重ねたあと、パレスチナのヨルダン川西岸などを訪れ、働きかけを強めることにしています。

国連機関「さらにまとまった時間が必要」

戦闘の休止がさらに一日、延長されることで合意したことについて、UNFPA=国連人口基金のパレスチナ事務所のドミニク・アレン所長は「支援を届けるためには、さらにまとまった時間が必要だ」と述べ、ガザ地区の人道状況を改善するためには双方の停戦が求められると訴えました。

UNFPAによりますと、ガザ地区には子どもや女性がいまも100万人以上いて、連日およそ180人の女性が厳しい環境のなかで出産を余儀なくされているということで、安全な出産など、妊婦への支援も喫緊の課題となっています。

エルサレムで銃撃 3人死亡 複数けが

中東のエルサレムで30日朝、武装した2人の人物がバス停にいた複数の市民を銃撃し、イスラエルの警察はSNSへの投稿で、これまでに市民3人が死亡し、10人以上がけがをしたと明らかにしました。

警察は「2人のテロリストが車でバス停に現れ、市民に発砲した」としていて、2人はその場で近くにいた兵士や市民によって銃で撃たれ、死亡したということです。

イスラエルの有力メディアハーレツは情報機関の話として、「2人は兄弟で、ハマスの関係者であり、かつてテロ容疑で収監されていた」との見方を伝えています。

また、ネタニヤフ首相はSNSへの投稿で、テロ対策として市民への武器の配布をいっそう進めていく考えを示しました。

タイ外務省 “人質4人が新たに解放”

タイ外務省は30日、パレスチナのガザ地区で拘束されていたタイ人の人質4人が29日、新たに解放されたと発表しました。

タイ外務省は9人のタイ人がいまも人質となったままだとしていて、早期の解放を求めています。

これまでに解放されたタイ人の人質は、24日が10人、25日が4人、26日が3人、28日が2人となっていて、あわせて23人となりました。

CIAとモサドが話し合い

29日夜、イスラエルはガザ地区に拘束されていた外国籍の人も含めて、あわせて16人が新たに解放されたと発表しました。

また、ロイター通信によりますと、イスラエルの刑務所に収容されていたパレスチナ人30人も釈放されたということです。

戦闘休止のさらなる延長に向けて仲介役を務めるカタールの首都ドーハでは、アメリカのCIA=中央情報局とイスラエルの対外工作活動を担う情報機関モサドのトップなどの間で話し合いが続けられている模様です。

こうした中、イスラエルのネタニヤフ首相はSNSに投稿した動画で、「最後まで戦闘に戻らないことはない。それが私の政策で、政府全体、兵士たち、そして人々が支えている」などと述べ、戦闘休止の期間が終わり次第、ガザ地区での軍事作戦を再開する姿勢を示しました。

一方、ハマスの幹部は29日夜の声明で、「これまでのところ、延長に値するような提案は示されていない」と、交渉は進展していないという見方を示した上で、刑務所に収容されている高齢のパレスチナ人たちを釈放するよう要求しました。

また、ハマスの軍事部門カッサム旅団は30日、戦闘員に対して、「戦闘の休止期間が延長されない場合に備え、休止の期間が終わる前の最後の数時間、戦闘態勢を維持するよう求める」とする声明をSNSに投稿しました。

戦闘再開による人道危機の拡大が懸念される中、交渉を通じて休止期間が延長されさらなる人質の解放や、人道状況が改善されるかなどが焦点となっています。

“バイデン大統領 南部作戦に懸念” 米報道

アメリカの一部メディアはバイデン大統領がイスラエルのネタニヤフ首相に対し、ハマスとの戦闘休止が終わったあと、イスラエル軍がガザ地区南部で軍事作戦を行う可能性について直接、懸念を伝えたと報じました。

アメリカのニュースサイト、アクシオスが29日、アメリカの複数の政府関係者などの話として報じたところによりますと、バイデン大統領はネタニヤフ首相と26日に電話で会談した際、ガザ地区南部には現在、大勢のパレスチナの住民がいるとして、イスラエル軍が北部で行ったような広範囲に攻撃が及ぶ作戦は繰り返してはならないと伝えたということです。

これに対してネタニヤフ首相は、ハマスのせん滅という目標の達成には南部での作戦が必要であり、イスラエル国民は軍事作戦をやめることは受け入れないと述べたとしています。

こうしたやりとりの上で、バイデン大統領が南部での作戦に踏み切る前に、イスラエル側と作戦計画についてもっと議論したいという考えを伝えたのに対し、ネタニヤフ首相も同意したということです。

イスラエルを支援する立場のバイデン政権は、イスラエル軍の作戦によってガザ地区で住民に大きな犠牲が出たことで国内外から批判を浴びており、人道危機がさらに深刻化することに警戒を強めているものとみられます。

ハマス幹部「延長に値する提案示されていない」

イスラム組織ハマスの幹部は29日夜、声明を発表し、「戦闘休止の延長に向けた努力はまだ実っていない。これまでのところ、延長に値するような提案は示されていない」として、イスラエルとの交渉は進展していないという見方を示しました。

その上で、「イスラエル軍が高齢のパレスチナ人を交換要員にする意向を表明すれば、われわれは応じる用意があり、それは戦闘休止の延長を意味する」として、イスラエルの刑務所に収容されている高齢のパレスチナ人たちを釈放するよう要求しました。

イスラエル軍 ジェニンで軍事作戦 4人死亡か

イスラエル軍はヨルダン川西岸のパレスチナ暫定自治区のジェニンで軍事作戦を行い、パレスチナ側によりますと、パレスチナ人の8歳と15歳の子ども2人を含む少なくとも4人が死亡しました。

イスラエル軍は28日夜から29日にかけて、ジェニンの難民キャンプなどで軍事作戦を行い、発表によりますと、パレスチナの武装組織「イスラム聖戦」の幹部2人を殺害したとしています。

一方、パレスチナ側によりますと、この作戦でパレスチナ人少なくとも4人が死亡し、このうち2人は8歳と15歳の少年でイスラエル軍の銃撃で死亡したということです。

イスラエルの有力メディアハーレツは少年2人の死亡について、イスラエル軍の話として、「兵士に爆発物を投げたためだ」と伝えていて、現地では緊張が高まっています。

今月24日に始まったイスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘休止などの合意によって、ヨルダン川西岸ではこの5日間で合わせて180人のパレスチナ人が刑務所から釈放されましたが、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、これを上回る少なくとも203人がヨルダン川西岸や東エルサレムで新たに拘束されたと伝えています。

ブリンケン国務長官 イスラエルに到着

アメリカのブリンケン国務長官は日本時間の30日午前7時すぎ、イスラエル最大の商業都市、テルアビブに到着しました。

ブリンケン長官は滞在中、イスラエル政府要人と会談し、さらなる人質の解放やガザ地区への人道支援などをめぐり意見を交わすことにしています。

ブリンケン長官は11月3日にもイスラエルを訪れていて、イスラエルとハマスの衝突が始まった10月7日以降、中東を訪問するのは3回目です。

アメリカのバイデン政権は、イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘休止は人質の解放とガザ地区への人道支援の拡大につながるとして、さらなる延長を呼びかけています。

米ニューヨーク ツリー点灯式にあわせデモ

アメリカ・ニューヨークでは冬の風物詩となっている巨大なクリスマスツリーが点灯されました。

会場となったロックフェラーセンターでは、イスラエルとイスラム組織ハマスとの衝突をめぐり、パレスチナを支持する人たち、およそ数百人が会場の近くでデモを行い、看板を掲げたり旗を振ったりしながら、停戦を求めていました。

周辺では事前に情報を把握していた当局が大勢の警察官を配置して警戒にあたっていましたが、一時、デモの参加者が設置された柵を越えて車道にあふれ、警察官に対し大声で抗議するなど、混乱が見られました。

最終的にデモの参加者は点灯式の会場までたどりつけずに、点灯時間を迎え、ツリーに明かりがともされていました。

デモに参加した女性は「いつもの年なら、きょうはお祝いの日ですが、多くの人が殺される中、ことしは祝うべきではありません。戦闘休止が終われば、イスラエルによる地上侵攻が行われ、多くの市民が殺されるでしょう。戦闘『休止』とは愚かなことです」と批判していました。

テルアビブの広場で人質解放を求める声

戦闘休止が始まってから6日目となる29日夜、イスラエルのテルアビブの広場に集まった人たちからは、一刻も早くすべての人質を解放するよう求める声が聞かれました。

テルアビブ中心部の広場には人質の顔写真を載せたポスターが張られ、人質への連帯の思いをあらわそうと、家族や支援者、それに地元の人たちが連日、集まっています。

ハマスによる襲撃で親戚の22歳の男性が人質になったという男性は「彼は音楽イベントに出席していただけでハマスに連れ去られ、50日以上がたちますが、何の情報もありません。胃に病気があり、薬もない状態でどう過ごしているのか心配でなりません」と話しています。

一方、親戚の26歳の女性が人質になったという男性は、「彼女は何の罪もない普通の民間人なのに突然、人質にされ、生きているのかどうかもわかりません。戦闘休止を人質解放と引き換えにし、人の命を商品のように扱うのはやめてほしい。人質を無事に返してほしい。世界に訴えたいのはそれだけです」と話していました。

国連機関の現地代表 “より長期の戦闘休止が必要”

ガザ地区で人道支援にあたる国連機関の現地代表がNHKのインタビューに応じ、戦闘の休止期間を利用してガザ地区北部に支援物資を届けることができたものの、食料も生活物資も足りていないとして、より長期の戦闘休止が必要だと訴えました。

UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は食料を配給したり学校を運営したりして、ガザ地区の住民の7割を占めるパレスチナ難民の生活を支えています。

一連の衝突後は100人以上の職員やスタッフが戦闘で死亡するなかでも、学校などを利用して避難所を運営し、ガザ地区全体で100万人以上が身を寄せています。

こうした中、ガザ事務所のトーマス・ホワイト所長がガザ地区南部のハンユニスにある避難所の一つでNHKのインタビューに応じました。

北部の避難所にはいまだに10万人近くがとどまっていて、これについてホワイト所長は「戦闘の休止期間中に、ガザ地区北部で困難な状況にある住民にも人道支援物資を届けることができた」と述べました。

ただ、「避難者に必要な食料や衛生用品、ブランケットなどの生活物資は足りていないのが現実だ」と述べ、「ラファ検問所を通じた人道支援物資の搬入を続けるために圧力をかけ続けることと、より長期間の戦闘休止に向けた働きかけを国際社会には求めたい」と訴えました。

さらに、ホワイト所長は、イスラエル政府が戦闘休止期間のあとにガザ地区南部にも地上侵攻を拡大する姿勢を示していることについて、「大規模な戦闘が再開し、それが北部だけでなく南部でも起きることを強く懸念している。北部での死と破壊は驚愕するレベルでこの戦争は終わらせなければならない」と述べ、甚大な人道危機を引き起こすことにるつながると懸念を示しました。