COP28開幕へ 世界全体の気候変動対策の評価と強化が焦点に

国連の気候変動対策の会議「COP28」が日本時間の30日午後、UAE=アラブ首長国連邦で開幕します。COP28は、これまでの世界全体の気候変動対策の進捗を評価する初めての機会となり、各国の対策の強化につなげられるかが、焦点となります。

「グローバル・ストックテイク」初実施へ

「COP28」は日本時間の30日午後からUAEのドバイで始まり、12月12日まで開かれる予定で、190を超える国と地域が参加する見通しです。

今回のCOPでは、気候変動対策の枠組み「パリ協定」の目標達成に向けて温室効果ガスの削減など世界全体の対策の進捗を5年に1度、評価する仕組み「グローバル・ストックテイク」が初めて行われます。

国連は、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ1.5度に抑えるためには各国の削減目標が不十分だと指摘しています。

「グローバル・ストックテイク」を踏まえ、対策の強化につなげられるかが焦点で、再生可能エネルギーの拡大や石炭や石油といった化石燃料の段階的な廃止などが議論される見通しです。

また、世界各地では大規模な洪水や記録的な猛暑が相次ぎ、気候変動による被害が深刻化しています。

前回のCOPでは、とくにぜい弱な途上国を対象に気候変動による被害「損失と損害」に特化した新たな基金の創設を決めていて、今回、その運用に向けて具体的な内容で合意を目指すことになります。

ロシアによるウクライナ侵攻やガザ地区での人道危機が続く中、各国が協力していけるかが注目されます。

再生可能エネルギーや化石燃料に関する合意も焦点に

今回のCOP28では、再生可能エネルギーの拡大や、化石燃料の削減について、どのような合意がなされるかも焦点です。

COP28の議長を務めるUAEのジャベル産業・先端技術相は、開幕を前に各国にあてた書簡で、2030年までに世界全体の再生可能エネルギーの容量を3倍に引き上げることや、エネルギー効率を2倍に改善することなどで合意するよう支持を訴えています。

そして「すべての化石燃料の需要と供給を段階的に減らすことが不可欠だ」として、今世紀半ばまでに、温室効果ガスの排出削減の対策がとられていない化石燃料は利用しない、エネルギーシステムの構築を目指すべきだとしています。

再生可能エネルギーの容量を3倍に引き上げることをめぐってはIEA=国際エネルギー機関が、気温上昇を1.5度に抑えるために欠かせないと指摘していて、ことし9月のG20=主要20か国の首脳宣言では「3倍にする取り組みを追求する」としています。

一方、化石燃料をめぐっては2年前のCOP26で、排出削減の対策がとられていない石炭火力発電所については、「段階的な削減」を目指すことで合意しましたが、その後、さらに踏み込んで「段階的な廃止」を求める先進国に対し、インドなどの新興国が反対してきました。

また、EU=ヨーロッパ連合がCOP28では石炭に限らず、石油や天然ガスも含めた化石燃料の「段階的な廃止」で合意を目指すべきだと訴えていて、激しい議論も予想されます。

議長国・UAEは世界でも有数の産油国

COP28の議長国、UAEは世界でも有数の産油国として知られています。イギリスのエネルギー研究所の報告書によりますと、2022年UAEは石油で世界7位、天然ガスで世界14位の生産量を誇るなど、豊富な化石燃料をいかして経済成長を遂げてきました。

COP28の議長を務めるUAEのジャベル産業・先端技術相は、国営石油企業、アドノックのCEOも務めています。国際的なNGOは、アドノックは石油の新規開発を続け、気候変動対策と逆行していて、ジャベル氏が議長を務めれば、利益相反にあたり、会議での議論が化石燃料産業の影響を受けるとして批判しています。

開幕の直前にはイギリスの公共放送BBCが、調査報道を行うジャーナリストと協力して入手したとする内部文書をもとに、UAEがCOP28の場で中国やコロンビアなど15か国とLNG=液化天然ガスといった化石燃料の開発に関する商談を計画していたと伝えました。

UAEは近年再生可能エネルギーなどへの投資を拡大し、2050年には温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目標に掲げていますが、今回の報道を受けて、ジャベル氏が議長を務めることへの批判がいっそう強まることも予想されます。

岸田首相 30日午後UAEに向け出発

UAEのドバイで開幕するCOP28は、12月1日から首脳級会合が予定されていて岸田総理大臣は出席のため30日午後、政府専用機で羽田空港を出発します。

会合で岸田総理大臣は、2050年に温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を実現するため、クリーンエネルギーへの投資促進などの取り組みを着実に進めていることを説明する方針です。

またみずからが提唱する「アジア・ゼロエミッション共同体構想」に基づき、アジア太平洋地域全体の脱炭素化に貢献していく姿勢も強調し、地球の気温上昇の抑制に向けた各国との議論を主導したい考えです。

さらに岸田総理大臣は現地でイスラエルのヘルツォグ大統領と会談する方向で調整を進めていて、イスラエル・パレスチナ情勢をめぐり、事態の沈静化や人道状況の改善などに取り組むよう直接、働きかけるものとみられます。

バイデン大統領 欠席を発表

アメリカのホワイトハウスは29日「COP28」について、バイデン大統領が欠席し、代わりにハリス副大統領が出席すると発表しました。ハリス副大統領は会議でアメリカが気候変動対策で世界を先導していくことを示すとしています。

バイデン大統領は気候変動対策を最優先課題の1つに掲げ、就任以来、2年連続でCOPに出席していて、欠席するのは初めてです。欠席の理由についてホワイトハウスは明らかにしていませんが、アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは政権高官の話としてバイデン大統領がイスラエルとイスラム組織ハマスによる戦闘への対応にあたるためだなどと伝えています。

「COP」とは

「COP」は、1992年に採択された国際条約「気候変動枠組条約」の「締約国会議」を意味します。

「気候変動枠組条約」には、現在198の国と地域が参加していて、1995年以降、毎年のように「COP」を開催して気候変動への取り組みを前に進めてきました。

1997年に京都で行われた「COP3」で、先進国に温室効果ガスの削減を義務づける「京都議定書」を採択したほか、2015年にフランスのパリで開かれた「COP21」では、発展途上国を含むすべての国が削減に取り組むことを定めた「パリ協定」を採択しました。

また、前回のCOP27では、とくにぜい弱な途上国を対象に気候変動による被害「損失と損害」に特化した新たな基金の創設で合意しました。

COP28では、12月1日から2日にかけて首脳級の会合が開かれ、ヨーロッパ各国の首脳やインドのモディ首相、ブラジルのルーラ大統領などが参加することになっていますが、温室効果ガスの世界第1位と第2位の排出国、中国の習近平国家主席やアメリカのバイデン大統領は欠席する見通しです。