アデン湾 タンカー乗っ取り 海自護衛艦の周辺に弾道ミサイル

中東イエメン沖のアデン湾で日本時間の26日、イギリスの会社が運航するタンカーが何者かに乗っ取られ、海上自衛隊の護衛艦や哨戒機が、アメリカ軍とともに現場で情報収集などをした際、周辺の海域に弾道ミサイルが発射されていたとみられることがわかりました。ミサイルは護衛艦から18キロ以上離れた海域に落下したとみられていて、海上自衛隊は「安全上の懸念を生じさせることはなかった」としています。

防衛省によりますと、イエメン沖のアデン湾では日本時間の26日、イギリスの会社が運航するタンカーが何者かに一時、乗っ取られ、アデン湾で海賊対処の任務にあたっている海上自衛隊の護衛艦「あけぼの」と哨戒機が現場海域で警戒監視や情報収集を行いました。

これについて海上自衛隊トップの酒井良 海上幕僚長は28日の記者会見で、護衛艦や哨戒機が活動していた周辺の海域に弾道ミサイルが発射されたという情報がアメリカ軍から寄せられていたことを明らかにしました。

当時、護衛艦の近くではアメリカ海軍の駆逐艦「メイソン」も活動していて、アメリカ軍の情報によりますと弾道ミサイルは駆逐艦から10マイル、およそ18キロ離れた地点に落下したということです。

「あけぼの」は弾道ミサイルを追尾するレーダーがないため探知していないということですが、駆逐艦との位置関係をもとに計算すると、「あけぼの」から18キロ以上離れた海域に落下したとみられるということです。

酒井海上幕僚長は「安全上の懸念を生じさせることはなかった」としたうえで、「『あけぼの』には弾道ミサイルに対応できる装備がなく、直接弾道ミサイルが命中するおそれがあるときには対応は不可能だと思っている。イエメンが保有する弾道ミサイルの性能などをトータルで分析すると、直接命中させる性能はないとみられ、警戒をしながら現在の任務を継続する方針だ」と述べました。

アメリカ軍は、イエメンの反政府勢力フーシ派が支配する地域から、アメリカ海軍の駆逐艦がいる海域に2発の弾道ミサイルが発射されたものの、被害はなかったことを明らかにしています。

対応前日 「あけぼの」と「メイソン」は訓練

海上自衛隊によりますと、日本時間の26日、イエメン沖のアデン湾で乗っ取られたタンカーに対応した護衛艦の「あけぼの」とアメリカ海軍の駆逐艦「メイソン」は、その前日に訓練を行っていて、写真をSNSで公開しています。

訓練は海賊への対処を想定したもので、写真の手前に写っている「あけぼの」の左斜め後方を「メイソン」が航行しています。