政治資金収支報告書のネット公開 全国で唯一見送った新潟県

政治団体が収入と支出を国民に明らかにするため、年に1回提出している「政治資金収支報告書」。国会では自民党の派閥の「政治資金収支報告書」への不記載の問題について、連日、追及が続いています。
こうした中、全国の都道府県で唯一、新潟県ではことしもネットでの公開が見送られました。なぜなのでしょうか。

19年前に総務省が検討通知 46都道府県で実施

「政治資金収支報告書」は、毎年秋に前年分が公表され、ことしも11月15日以降、総務省と各都道府県の選挙管理委員会が2022年分の収支報告書を順次、公表しています。

総務省はインターネットでの公開を積極的に検討するよう、19年前の2004年、各都道府県に通知しています。
都道府県の選挙管理委員会の受け付け分では2008年に東京都で、もっとも早く公開されました。

総務省が最初に公開をしてから10年後の2014年には22都府県、15年後の2019年には40都道府県、去年の段階で43都道府県、そしてことし、新たに石川、広島、福岡の3県で収支報告書のネット公開が行われることになり、新潟を除く46都道府県に広がっています。

新潟県 ネット公開しないワケ

残る1県、新潟県では28日、2022年分の収支報告書の公表が行われましたが、ことしも原本の公開は書面のみとなり、ネットは見送られました。

その理由について新潟県選挙管理委員会は「人員体制の検討や関係者との調整に時間を要したため」と説明しています。

新潟県選挙管理委員会は、専従の職員は現在5人。

衆議院の解散・総選挙や県内の補欠選挙などに対応できる人員を確保しつつ、県内に約1000ある団体の報告書をデータ化するのは難しいとしています。

またネットでの公開にあたり法律上、第三者の同意を得る必要はないとする一方「県議会の各会派などの理解を得て円滑に進める必要があるという認識のもとにやっている」としています。

県議会の最大会派 自民党の一部議員は

取材に応じた複数の関係者によりますと、新潟県議会の最大会派である自民党の一部の議員が「県庁に行けば見ることができるのになぜ必要なのか」とか「簡単に全世界に見られてしまう」と主張し、ネットでの公開に反対してきたということです。

新潟県知事「時代の流れですので、やる必要がある」

こうした状況について新潟県の花角英世知事は、10月の定例会見で「残念です。時代の流れですので、やる必要がある。政治の過程をガラス張りにする、より透明性を持つことが重要だと思います」と述べています。

新潟県選挙管理委員会は、来年から国会議員に関係する団体の報告書のみネットで公開することを11月に決めましたが、県議会議員などの分については引き続き調整するとしています。

アメリカ データ化し検索も可能

日本の政治資金収支報告書の多くは、紙で提出された原本を画像処理した形でホームページに公開されていて、そのままでは、検索などができないケースが大半です。

一方、アメリカでは、FEC=連邦選挙委員会が収支報告書の記載をデータ化し、ウェブサイトで公開しています。

政治家や政治団体の名前で検索をかけると、寄付をした団体や個人の一覧が表示されます。このサイトを活用し、地域の非営利団体が、議員の活動や政治資金に関する報告書などを作成しているということです。

専門家「日本のシステム 十分とは言えず」

情報公開をめぐる制度に詳しい、NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、市民が政治家の活動をチェックしようとしても、集計や分析を行うことが難しいシステムになっているとした上で、「大臣になった政治家が、就任直後に政治資金の問題を指摘されるケースがよくみられるが、収支報告書を読めば、同じ情報が大臣になる前から記載されている。報告書を公開しても分析や解析はされないと、政治家が考えている可能性もあると思う。政府は今よりも解析などがしやすいシステムを構築するべきだし、政治活動の信頼性を高めるためのよりよい情報公開のあり方は政治の側が考えるべきだ」と指摘しています。