【28日詳細】イスラエルとハマス 戦闘休止2日間延長で合意

イスラエルとイスラム組織ハマスとのガザ地区での戦闘休止はあらたに2日間延長され、28日、5日目に入りました。合意が守られれば戦闘の休止は少なくとも29日まで延長されることになりますが、双方が根強い不信感を抱くなか予断を許さない状況が続いています。

※イスラエルやパレスチナに関する動きを随時更新でお伝えします。

イスラエルメディア “解放された人質 ガザ地区トップに会った”

イスラエルの一部メディアは27日、解放された人質の1人が先月ハマスに拘束されたあと、ハマスのガザ地区のトップ、ヤヒヤ・シンワル氏に会ったと証言していると伝えました。

地下のトンネルに姿をあらわしたシンワル氏は、人質に対して流ちょうなヘブライ語で「私がシンワルだ」と名乗ったうえで身の安全を保証すると話したということです。

シンワル氏は先月7日の奇襲攻撃の首謀者の1人ともされていて、人質が会ったのがシンワル氏本人だとすれば、人質をとることがハマスが越境攻撃を仕掛けた主な目的の1つだったことがうかがえそうです。

バイデン大統領「2国家共存による解決しか方法はない」

アメリカのバイデン大統領は28日、個人のSNSに「イスラエルとパレスチナ双方の人々にとって、長期的な安全を保障するためには、2国家共存による解決しか方法はない。イスラエル人とパレスチナ人が平等に自由と尊厳を持って暮らせるようにするため、その目標に向けて努力することを諦めない」と投稿しました。

バイデン大統領としてはイスラエル軍がハマスを一掃することが仮に出来たとしても、その後のガザ地区をどうするのかという青写真が一向に見えないなか、イスラエルとパレスチナという2つの国家が共存する形での中東和平の実現に改めて強い意欲を示した形です。

米軍 “ガザ地区に搬入する支援物資エジプトに空輸”

アメリカのバイデン政権の高官はアメリカ軍が28日、厳しい人道状況が続くガザ地区に搬入する支援物資をエジプトに空輸すると明らかにしました。

支援物資は医薬品や食料品、それに冬用の衣服などで、アメリカ軍が3回にわたって空輸し、現地で国連が住民に配布するとしています。

バイデン大統領は27日に発表した声明で、戦闘休止期間を活用して、ガザ地区に搬入する人道支援物資を増やすことに取り組む考えを示しています。

専門家「休止期間に国際社会が停戦に向け働きかけ重要」

イスラエル・パレスチナ情勢に詳しい東京大学中東地域研究センターの鈴木啓之特任准教授は「戦闘休止の期間に国際社会がイスラエル・ハマスの双方に暴力の停止を訴え、停戦の実現に向けて働きかけることが重要だ」と話しています。

戦闘休止期間の延長について鈴木特任准教授は、2日間の理由は明らかではないとした上で、ハマス側としては、2か月近い戦闘でガザ地区とハマスが大きな損害を受ける中、人質を交渉材料にして戦闘休止の期間を可能なかぎり延ばしたいという意図があるのではないかと分析しています。

またイスラエル側としては、ハマスに主導権を握られているとみられないために小出しに休止期間を設定し、人質の解放にあたっていると国内向けにアピールする意図が考えられるということです。

その上で現状について「合意が守られているかを双方が主観的に判断している状態で、今後ハマスが解放する人質の数や、ガザ地区に搬入される物資の量が減るなどして交渉が決裂したり、戦闘が再開したりすることは十分に考えられる」と述べています。

そしてガザ地区での戦闘が再開されれば、多くの住民が退避している南部でもさらなる犠牲が出ることが避けられないとした上で「国際社会はこの期間に改めて双方に暴力の停止を訴えていき、戦闘の停止を長く実現し停戦の実現に向けて働きかけることが重要だ。さらにはパレスチナ問題が国際社会で解決されないまま放置されてきたことが問題の原因であり、イスラエルとともに国際社会がパレスチナ問題に正面から向き合う必要がある」と話していました。

米軍 駆逐艦周辺に弾道ミサイル2発着弾

アメリカ中央軍は26日、アメリカ軍のミサイル駆逐艦「メイソン」が武装勢力に乗っ取られた商船から通報を受け、同盟国の艦艇などとともに対応したと発表しました。

アメリカ軍などが武装勢力に対し船を解放するよう要求したところ、5人が小型ボートで逃走を図ったため、その場で拘束したということです。

その後、イエメンの反政府勢力フーシ派の支配地域から弾道ミサイル2発が発射され、メイソンと商船からおよそ18キロ離れた場所に着弾したということです。

これについて、アメリカ国防総省のライダー報道官は27日、記者団に対し、拘束された5人はソマリア人とみられると明らかにしました。

また、発射された弾道ミサイルの標的については「はっきりしない」とした上で、拘束された5人とフーシ派との関係については「分析中だ」としています。

イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突以降、アメリカ軍はイランが後ろ盾となっているフーシ派などへの警戒を強めていました。

イスラエル市民「戦闘休止の延長 人質解放のためよい」

イスラエルとハマスが戦闘休止を2日間延長することで合意したことについて、イスラエルの人たちからは理解を示す一方、軍事作戦の再開を支持する声も聞かれました。

このうちイスラエル中部の町からエルサレムを訪れていた男性は「数日間の戦闘休止の延長はすべての人質の解放のためよいことだと思います。ただ、休止のあとにはハマスを壊滅させなければいけない」と話していました。

また別の男性は「人質解放のために数日待つことはできるが、いつまでも待つことはできない。10日程度は待てるが、戦争は続けなければいけない」と話していました。

国連 “ガザ地区 人口の約8割が家を追われた”

OCHA=国連人道問題調整事務所のまとめによりますと、ガザ地区では人口のおよそ8割にあたる180万人が家を追われたと推定されています。

こうした中、イスラエルとハマスが合意した戦闘休止後はガザ地区への支援物資の搬入が進められていますが、依然として厳しい人道状況が続いています。

このうち、調理用のガスについては27日まで4日連続で1日あたりおよそ85トンが搬入されたということですが、必要な量を大幅に下回っているとしています。

このほか、イスラエル軍が住民に対して退避するよう通告しているため物資の搬入が難しかったガザ地区北部には、26日と27日に食料やテントなどを積んだトラックが入り支援物資を住民に届けたということです。

地元の保健当局は27日、イスラエル軍がハマスの重要な拠点があったと主張し突入した北部ガザ市にあるシファ病院の透析部門が患者の受け入れを再開すると発表しました。

またOCHAは、北部では5つの病院が患者を受け入れているものの、ジャバリアの病院にいる患者80人を設備が整った病院へすぐに搬送する必要があるとして戦闘休止期間が延長されれば、数日中に避難させたいとしています。

米ブリンケン国務長官3回目中東訪問へ 人質解放や人道支援協議

アメリカ国務省の高官は27日、NHKなどに対し、ブリンケン国務長官が今週、イスラエル、パレスチナのヨルダン川西岸、それにUAE=アラブ首長国連邦を訪れることを明らかにしました。

ブリンケン長官は、27日からNATO=北大西洋条約機構の外相会合に出席するためベルギーを訪れていて、その後、中東に向かうことになります。

中東訪問中、ブリンケン長官は政府要人などと会談する予定でイスラエルとハマスが戦闘の休止に合意し、人質の解放が進む中、さらなる人質の解放とガザ地区の人道支援に向け、協議を行うことにしています。

また、将来的にはパレスチナ国家を樹立し、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」を目指すべきだとするバイデン政権の立場を強調することにしています。

ブリンケン長官が中東を訪れるのは、10月7日にイスラエルとハマスの軍事衝突が始まってから3回目となります。

バイデン大統領「人質全員解放まで立ち止まらない」

ガザ地区での戦闘の休止を2日間延長するとの合意を受けて、アメリカのバイデン大統領は27日、声明を発表しました。

この中でバイデン大統領は、イスラエルのネタニヤフ首相や仲介を担っているカタールのタミム首長、エジプトのシシ大統領に謝意を示すとともに、自身も交渉に深く関与してきたとしました。

その上で、「われわれはハマスが拘束している人質が全員解放されるまで立ち止まらない」と強調しました。

また「戦闘休止期間を最大限に活用してガザ地区へ運ばれる人道支援の物資の量を増やし、パレスチナの人びとのために平和と尊厳のある未来を築く努力を続ける」としてガザ地区への人道支援の増加に取り組む考えを示しました。

イスラエル軍 “休止期間後 軍事作戦再開” 強調

イスラエル軍のハガリ報道官は27日、前日にイスラム組織ハマスに解放された84歳の女性が拘束中、必要な薬の投与を受けられなかったため重篤な状態にあるとした上で「解放の際、人質に平和的に手を振るテロリストたちの映像をもってハマスの凶暴さを隠すことはできない」と批判しました。

そして「部隊は現在、ガザ地区の周りを巡回し、休息したり訓練を行ったりして戦争継続に向けた準備を強化している。物資や弾薬の補給、それに装甲車両の準備も進めている。われわれは人質の奪還とハマスの解体という2つの目標を掲げて戦場に戻り、成果を上げる決意だ」述べ、戦闘休止の期間が終わったら軍事作戦を再開する姿勢を改めて強調しました。

ハマス幹部「人質のイスラエル人兵士 解放交渉の用意ある」

戦闘の休止期間を2日間延長することで合意したことについてイスラム組織ハマスの幹部は27日夜、地元メディアなどに対して「人質にしているイスラエル人の兵士について解放交渉をする用意があるがまだ始まってはいない」と述べ、イスラエル側とさらなる交渉の用意があるという姿勢を示しました。

一方で「ハマスの軍事部門はいまもガザ地区の北部にいて状況をコントロールしている」と述べ、戦闘が再開されればイスラエル軍の攻撃に対して反撃の準備ができていると主張しました。

イスラエル軍「ハマス拘束の人質11人が解放」

イスラエル軍は27日、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスに拘束されていた人質のうち、イスラエル人11人が解放され、赤十字に引き渡されたと発表しました。

イスラエルとハマスは今月24日から4日間にわたって戦闘を休止し、ハマスが人質を段階的に解放する一方、イスラエル側も収監しているパレスチナ人を釈放することで合意していました。

その4日目にあたる27日も、ハマスがイスラエル人11人を新たに解放し、イスラエル側は収監していたパレスチナ人33人を釈放しました。

この4日間でハマスが解放した人質は外国籍を合わせて69人、イスラエルが釈放したパレスチナ人は150人となりました。

国連事務総長 休止延長を歓迎「人道支援拡大 強く臨む」

ガザ地区での戦闘の休止が2日間延長されるとの合意について国連のグテーレス事務総長は27日「戦争の暗闇の中に、希望と人間性をかいま見ることができた」と述べて、歓迎しました。

そのうえで「苦しんでいるガザ地区の人々への人道支援がさらに拡大されることを強く望んでいる。しかし追加された時間をもってしても人々の大きなニーズを満たすことは不可能だろう」と指摘し、ガザ地区の人道状況を改善するには、より長期にわたる停戦が必要だという認識を改めて示しました。

米ホワイトハウス「戦闘休止延長の発表を歓迎」

アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は27日、記者会見で「戦闘休止を2日間、延長するという発表を歓迎する。私たちは休止がさらに延長されることを望んでおり、それは、ハマスが人質の解放を続けるかどうかにかかっている」と述べて人質全員の解放のためアメリカとして戦闘休止のさらなる延長に向けた交渉に関与し続ける考えを示しました。

カタール外務省 戦闘休止2日間延長で合意と発表

カタール外務省の報道官は27日SNSへの投稿で、ガザ地区での戦闘休止を2日間延長することで合意したと発表しました。

イスラエルと、ガザ地区を実効支配するハマスは今月24日から4日間にわたって戦闘を休止し、ハマスが人質を段階的に解放する一方、イスラエル側も刑務所に収容しているパレスチナ人を釈放することで合意していました。

そして、3日目の26日までに、ハマスがイスラエル人40人と外国籍の18人を解放し、イスラエル側もパレスチナ人117人を釈放していました。

ハマスは戦闘休止の期間中、解放するイスラエル人の人質1人につき、イスラエルの刑務所に収容されているパレスチナ人3人が釈放され、ガザ地区には人道支援物資を積んだトラックが1日200台搬入されることなどを条件としていました。

双方による4日間の戦闘休止は27日が4日目でしたが、新たな合意が守られれば少なくとも29日まで延長されることになります。

ハマス「これまでと同じ条件で停戦延長に合意」

ハマスも27日夜「カタールと、エジプトの同胞との間で人道的な停戦をさらに2日間、これまでと同じ条件で延長することに合意した」とする声明を出しました。