核兵器禁止条約 締約国会議始まる 核軍縮へ機運高められるか

核兵器の開発や保有、使用などを禁止した、核兵器禁止条約の2回目の締約国会議が、国連本部で始まりました。
初日の会合では、核をめぐる世界の状況が厳しさを増すいまこそ核廃絶に向けた議論が必要だという意見が相次ぎ、日本から参加した被爆者は核兵器をなくさなければ人類は滅びかねないと、強い危機感を訴えました。

核兵器禁止条約の第2回の締約国会議は、ニューヨークの国連本部で、日本時間の28日0時すぎから始まりました。

はじめに国連で軍縮部門トップを務める中満事務次長がロシアによるウクライナへの軍事侵攻や、緊張するパレスチナ情勢を念頭に「私たちは複数の深刻な危機の中で核の脅威を目の当たりにし、冷戦時代の軍備管理体制の手段は、崩壊の危機にひんしている。このような時代に禁止条約が訴えるものはこれまで以上に重要だ」と述べ、条約の意義を強調しました。

このあと各国の代表などからも、核をめぐる世界の状況が厳しさを増すいまこそ、将来の核廃絶に向けた議論が必要だという意見が相次ぎました。

また、長崎で被爆した日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の事務局長を務める木戸季市さんは「ウクライナとガザの光景は被爆者にとってあの日の再来だ」と述べ、紛争地の現状は被爆地の惨状すら思い起こさせるとしたうえで「核戦争の危機が高まっている。原爆が人間を滅ぼすか、原爆をなくして人間が生き残るかの分かれ目だ」と強い危機感を訴えました。

会議には、締約国ではないもののオブザーバーとして参加を表明している国が少なくとも20か国にのぼり、アメリカの核の傘のもとにあるドイツやベルギー、オーストラリアなどが参加しますが、日本は参加していません。

会議は5日間の日程で開かれ、最終日には政治宣言が採択される予定で、厳しい国際情勢の中でも核軍縮に向けた機運を高めることができるのか、問われることになります。

議長 “経験者の証言 正しい方向への一歩となる”

核兵器禁止条約の第2回の締約国会議で議長を務めるメキシコのデラフエンテ氏は27日、NHKの単独インタビューに応じ、長崎の被爆者、木戸季市さんの発言について「木戸さんのような経験をした人の証言に代わるものはない。核兵器禁止条約に参加していない国やオブザーバー参加の国に対して条約への参加を促すもので、正しい方向への一歩となる力強い証言だ」と述べました。

また、国際情勢が厳しさを増す中で、今回の締約国会議が開かれることについて「今、私たちは受け身で沈黙しているわけにはいかない。核兵器による脅威は現実であり、この国際情勢だからこそ強いメッセージを伝える必要がある。今こそこの世界に核兵器はいらないと言うべきときだ」と述べ、会議の意義を強調しました。

そしてデラフエンテ氏は、今回の会議に条約の締約国ではない少なくとも20か国がオブザーバーとしての参加を表明していることついて「オブザーバーがここにいること自体が会議の成果だと思う。現時点ですでに非常に価値のある成果だ」と評価したうえで「締約国がオブザーバー国と実りある対話を行うことが重要だ。オブザーバー国の多くとは、基本的な目的と懸念を共有していると思う。締約国はオブザーバー国、NGOなどと協力することが重要だ」と述べました。