イエメン沖 アデン湾でタンカー 武装勢力に乗っ取られるも解放

イエメン沖のアデン湾で26日、イギリスの企業が管理するタンカーが武装勢力に乗っ取られ、その後、アメリカ海軍によって解放されたと、複数の欧米メディアが伝えました。

ロイター通信など複数の欧米メディアによりますと、26日、アラビア半島の南端、イエメンの沖合のアデン湾を航行していたタンカーが武装勢力によって乗っ取られましたが、その後、緊急の信号を受けたアメリカ海軍の駆逐艦が介入し、解放されたということです。

タンカーは、イスラエルの実業家が所有するイギリスの企業が管理し、化学物質を積んで航行していたということで、トルコ人やロシア人など合わせて22人が乗っていましたが、けが人はいないということです。

これについて、アメリカ軍は26日、声明を発表し、武装勢力の5人は小型船で逃げたものの、最終的には投降したとしています。

さらに、武装勢力が投降したあと、イエメンの反政府勢力フーシ派が支配する地域から、アメリカ海軍の駆逐艦がいる海域に2発のミサイルが発射されたものの、被害はなかったとしています。

海自が警戒監視行う 武器使用なし

防衛省関係者によりますと、日本時間の26日、イギリスの会社が運航するリベリア船籍のタンカー「セントラル・パーク」がイエメン沖のアデン湾を航行していたところ、何者かに乗っ取られたという情報がアデン湾で海賊対処にあたっている海上自衛隊に寄せられました。

情報を受けて護衛艦「あけぼの」と、P3C哨戒機1機が現場に向かい警戒監視や情報収集にあたったほか、アメリカ軍などに情報提供を行ったということです。

タンカーはその後、解放され、自衛隊にけが人はなかったということです。

海賊対処法に基づいて派遣された自衛隊の部隊は、警戒監視や民間船舶の護衛のほかに、警告射撃など武器の使用が認められていますが、今回、自衛隊による武器使用はなかったということです。

アデン湾と海峡を通じてつながるイエメン近くの紅海では19日、日本企業が運航する貨物船がイスラエルと対立するイエメンの反政府勢力フーシ派に乗っ取られていて、防衛省は引き続き、アデン湾で警戒監視などを行っています。

護衛艦「あけぼの」 航跡情報に現場に急行する様子

民間のホームページ「マリントラフィック」で公開されている航跡情報では、護衛艦「あけぼの」は、日本時間の26日正午ごろまではイエメン第2の都市アデンの南東およそ230キロの海域を時速20キロ余りで東に向けて航行していました。

しかし、徐々に速度を落とし、午後2時前には進路を反転させます。

そして時速50キロほどに速度を上げて西に向かい、午後10時前にはアデンの南西およそ110キロの海域で急激に速度を落としました。

その後は周辺の海域にとどまっていて、再び動いたのはおよそ10時間後の27日午前8時ごろでした。

アデン湾での自衛隊の活動は

防衛省は2009年からアデン湾で海賊対処にあたっていて、現在は護衛艦1隻と哨戒機1機が派遣されています。

このうち、護衛艦はアデン湾で警戒監視を行ったり民間船舶の護衛にあたったりしていて、昨年度末までに護衛した船舶は合わせて4068隻だということです。

哨戒機は上空から警戒監視にあたり、他国軍の艦艇や民間船舶に情報提供を行っていて、昨年度末までに1万5972回の情報提供を行ったということです。

内閣官房が公表している「海賊対処レポート」によりますと、民間船舶が海賊などに乗っ取られたり、攻撃を受けたりしたという情報を受けて自衛隊が現場に向かって監視などにあたった事例は、少なくとも3件あるということです。

イラン外務省の報道官 “乗っ取りや攻撃 繰り返される可能性”

イエメンの反政府勢力フーシ派がイスラエルと関係のある船舶を標的にすると宣言し、イエメンの近海で船舶が乗っ取られたり、攻撃されたりするケースが相次ぐ中、フーシ派の後ろ盾となっているイランの外務省のキャンアニ報道官が27日、会見を開きました。

キャンアニ報道官は乗っ取りや攻撃について「イランは関係ない」とした一方で、「パレスチナを支えることは今や世界的な流れで、イエメンで行われていることはそれに沿ったものであり、抑圧された人々への支援はこれからも続くだろう」と述べ、今後もこうした事態が繰り返される可能性を示唆しました。