「ダークパターン」大規模調査“不利益被った”半数近くが回答

気付かないうちに意図しない判断に誘導される「ダークパターン」と呼ばれるウェブデザインについて、専門家による大規模な調査結果がまとまりました。回答者の半数近くが「不利益を被ったことがある」と回答していて、専門家は、対策を強化する必要があるとしています。

ショッピングサイトで商品を購入する際に、▽定期購入であることが小さく表示されて意図せずに申し込んでしまったり、▽選択肢が「はい」と「あとで回答する」しかなく何度も表示されたりするケースなど、消費者が意図しない判断に誘導されるウェブデザインは「ダークパターン」と呼ばれ、対策の必要性が指摘されています。

こうした中、ウェブデザインのコンサルティングなどを行う企業が「ダークパターン」の実態について大規模調査を行い、このほど結果がまとまりました。

調査はことし8月にアンケート形式で行われ、ウェブサービスの利用者およそ800人から回答を得ました。

その結果、▽68.8%が「ダークパターンを見たことがある」と回答したほか、▽46.1%が「不利益をこうむったことがある」と回答しました。

また、経験したダークパターンとしては、▽「商品を閲覧したいだけなのに、会員登録を求められた」が46.3%でもっとも多く、そのうち22.7%が「会員登録をしてしまった」と回答しました。

次いで経験した人が多かったのは、▽「重要なことが小さな文字で書かれている」で43.9%、▽「会員の退会、解約に手間や時間がかかる」が40.3%などとなっています。

調査を担当した川崎実紀さんは「ダークパターンを知らない人ほど、存在にも気付けない傾向も明らかになった。消費者は知識を身につけるとともに、企業や国はダークパターンを生み出さないための取り組みを進めていく必要がある」と話しています。

「無料会員」のつもりが…

実際に「ダークパターン」を経験したとする女性が、NHKの情報提供窓口「ニュースポスト」に投稿を寄せました。

関西に住む千晶さん(仮名・30代)は、6年ほど前から、ある音楽配信サービスを「無料会員」として利用していたつもりでした。

しかし、ことし8月、たまたま開いた一覧画面で「会費」を支払っていることに気付き、確認したところ、5年前の11月から「有料会員」になり、無料期間のあと、約4年半の間に、あわせておよそ4万5000円の会費を支払っていました。

有料会員になるつもりは全くなかったという千晶さんは、当初、フィッシング詐欺などで誰かに勝手に登録されてしまったのではないかと不安になったといいます。

しかし、調べてみると、有料会員への入会を促すポップアップを知らない間に押してしまったことが原因である可能性が高いことがわかりました。

千晶さんによると、ポップアップには有料会員と同じサービスが「無料で体験できる」というボタンが目立つように表示されていたといいます。

一方、無料体験のあとには自動的に有料会員に切り替わる仕組みでしたが、そのことは明示されていなかったと記憶しています。

千晶さんは、ポップアップが何度も表示されたため、気付かないうちに、このボタンを押してしまったのではないかと考えています。

クレジットカードの明細では、音楽サービスの会費とは明示されていなかったことも気付くのが遅れた原因でした。

会社に連絡を取り、直近の1か月分の会費は支払わずにすむと言われましたが、それ以前の分は戻ってくることはありませんでした。

千晶さんは、「最近収入が減り、電化製品のコンセントをこまめに抜くなど少しでも生活費を削ろうと努力をしていたところだったので、呆然としました。法律には違反しないのかもしれませんが、だまされたようで悔しく、もうこのサービスを使うことはないと思います」と話していました。

「ダークパターン」によって不利益をこうむる利用者が増える中、行政も啓発活動に乗り出しています。

さいたま市消費生活総合センターは、今月23日、市内でダークパターンが用いられた定期購入のトラブルについての講座を開きました。

講座では、センターの職員が、消費者がダークパターンから身を守るためにはショッピングサイトで商品を購入する際に、▽最終画面をよく確認することや、▽画面を撮影して保存しておくことが大切だと呼びかけていました。

参加した50代の女性は「今まで気付かないうちに誘導されていたと感じました。ウェブサイトを利用する際には、しっかり気をつけようと思います」と話していました。

消費者庁は、ダークパターンは明確な定義がない上、すべてが法令違反とは言えず包括的に規制することは難しいとする一方、悪質なケースに関しては啓発活動を行ったり、取締りを強化したりしています。

その上で、今後も先行する海外の事例を参考にしながら、さらなる対策を検討していきたいとしています。