黒鉛など中国の輸出規制に国内関連企業 生産計画など影響懸念

中国政府が、12月からリチウムイオン電池の材料に使われる黒鉛と、その関連品目の輸出規制を実施すると発表していることに対し、国内の関連企業からは、生産計画などへの影響を懸念する声があがっています。

中国政府は、リチウムイオン電池の材料に使われ、中国が世界的に高いシェアを占める黒鉛と、その関連品目の輸出規制を12月1日から始めると発表しています。

こうした動きに対して、日本国内の関連企業からは、今後の事業への影響を懸念する声が出ています。

東京に本社があり、黒鉛を中国などから輸入している「富士黒鉛工業」は、福島県郡山市にある工場で黒鉛を加工し、さまざまな製品の材料としてメーカーなどに供給しています。

特に、リチウムイオン電池の材料として使う「球状化黒鉛」は、すべてを中国から輸入していることから、規制の実施によって、輸入の手続きに時間がかかり、生産計画などに影響が出ることを懸念しています。

このため会社では、その対応策として、中国からの輸入量を11月は例年のおよそ1.5倍に増やし、在庫を確保しました。

今後も中国からの輸入を続けるとしていますが、状況によってはアフリカからの輸入を増やすことも検討するということです。

富士黒鉛工業の菅原豪社長は「10日ほどで輸入できていたものが、2か月ほどかかることが想定されるほか、輸入が停止する可能性もある。電池メーカーとも話をして対策をとっていきたい」と話しています。

中国政府による黒鉛と、その関連品目の輸出規制をめぐっては、化学大手の三菱ケミカルグループもリチウムイオン電池向けの黒鉛をオーストラリアなどから調達することを検討するなど、関連企業の間で懸念が広がっています。

専門家“中国以外の調達先整備など多角化が重要”

民間のシンクタンク、地経学研究所の江藤名保子上席研究員は、中国が輸出規制を行う背景について、「中国として特に力を入れているEVの販売促進を、自分たちに有利な形で進めることに加え、『中国との関係が悪化すると輸入できなくなる』というリスクを、ほかの国に認識させるためではないか」と分析しました。

そのうえで、「黒鉛の輸入や加工を行っている日本企業は、まずは中国以外の国からの調達先を整備するなど、サプライチェーンの多角化を進めることが重要だ」と指摘しました。