過労死医師の兄 “医師の働き方改革 現場実態に合わせ対策を”

来年度から「医師の働き方改革」が本格的に始まるのを前に、過重労働の対策を考えるシンポジウムが都内で開かれ、去年、過労死した医師の兄が「弟の死は職場環境が改善されていれば防げたはずだ」と述べ、現場の実態に合わせた対策を行うよう訴えました。

東京 千代田区で開かれたシンポジウムは全国の勤務医でつくる労働組合「全国医師ユニオン」が開いたもので、90人余りが参加しました。

この中で、神戸市にある甲南医療センターで専攻医として勤務していた医師で、去年5月に自殺し、長時間労働が原因の労災と認定された高島晨伍さん(当時26)の兄(31)が講演し、はじめに、「弟の死はあまりに過酷な経験で、職場環境が改善されていれば防げたはずだ」と述べました。

晨伍さんの兄も勤務医として働いていて、来年4月から本格的に始まる医師の労働時間の上限規制について、「私も含め、医師はあまりに労働への意識が低い。弟が働いていた時間が“自己研さん”と見なされたように、働き方改革での仕組みが見かけの労働時間を圧縮する隠れみのになりかねず、このままではサービス残業が横行し、再び過労死が起きる」と訴えました。

高島さんの遺族は労働組合とも協力しながら、今後も国や都道府県に対し、現場の実態に合わせた対策を行うよう働きかけていくということです。

シンポジウムの参加者「風通しのよい職場環境に変わってほしい」

シンポジウムの参加者の1人で、医療機関の労務アドバイザーも務める社会保険労務士の女性は「お兄さんの話を聞いて悲しいと同時に、発言してくださることが心強く思いました。これをきっかけに、特に過重労働になりやすい若手の医師が声を上げやすく、風通しのよい職場環境に変わっていってほしいです」と話していました。