上川外相 日中外相会談「戦略的互恵関係」推進で一致

上川外務大臣は訪問先の韓国で初めて中国の王毅外相と会談し、日本産水産物の輸入停止措置の撤廃などを求める一方、「戦略的互恵関係」を推進し、外相の相互訪問を検討していくことなどで一致しました。

会談は25日午後5時半ごろから1時間半余り、韓国のプサン(釜山)で行われました。上川外務大臣が9月に就任してから日中外相会談が行われるのは初めてです。

会談で上川大臣は中国が続ける日本産水産物の輸入停止措置の即時撤廃を強く求め、互いの立場に隔たりがあることを認識しながら、建設的な態度で協議と対話を通じ、解決方法を見いだしていくことを確認しました。

また、上川大臣は▼中国で拘束されている日本人の早期解放や▼日本のEEZ=排他的経済水域内に設置された中国のブイの即時撤去を求めました。さらに、▼沖縄県の尖閣諸島周辺で繰り返される領海侵入や▼ロシアと連携した軍事活動の活発化などに深刻な懸念を伝えたほか、▼台湾海峡の平和と安定の重要性を訴えました。

一方で、先の日中首脳会談を踏まえ、「戦略的互恵関係」を推進し、建設的で安定的な関係構築に向けて、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていくことを確認しました。そして、両外相が互いの国を訪問するよう招待し合い、検討していくことで一致しました。

また、▼安全保障分野では、外務・防衛当局の高官による「日中安保対話」を早期に開催することで一致したほか、▼ハイレベルの経済対話や人的・文化交流対話の開催に向けて調整を進めることになりました。

26日は日韓の外相会談も予定されているほか、日中韓の外相会議が4年ぶりに開催され、3か国の首脳会議の再開に向けて協議することにしています。

上川外相 “モニタリングは国家の主権が前提”

会談後、上川外務大臣は記者団に対し、「日中関係は多くの課題や懸案に直面しているが、両国は地域と国際社会の平和と繁栄にともに重要な責任を有する大国だ。率直かつ真剣な意見交換ができ、今後の建設的な日中関係を構築する重要な一歩になった」と述べました。

また、福島第一原発の処理水放出をめぐり、中国側が独自にモニタリングできる機会を求めていることについて、「モニタリングは国家の主権や、IAEA=国際原子力機関の権威や独立性といった原則が前提となることは言うまでもない。政府としては引き続き、丁寧かつ透明性をもって日本の取り組みを説明していく」と述べました。

中国 王毅外相 “立場 変わりない”と会場をあとに

中国の王毅外相は上川外務大臣との会談後、報道陣から東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出について問われると「中国側の立場に変わりはない」とだけ答え、会場をあとにしました。

中国は処理水を「核汚染水」と呼んで、ことし8月から日本産水産物の輸入停止措置を続けていて、会談を通じても日中両国の立場の隔たりは埋まらなかったとみられます。