ALS患者団体 米承認の新治療薬 “国内承認の迅速な手続きを”

全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病のALS=筋萎縮性側索硬化症の患者団体が24日、厚生労働省で会見を開き、アメリカで承認された新たな治療薬の国内での承認に向けた手続きを迅速に進めてほしいと訴えました。

アメリカで承認されているALSの治療薬「トフェルセン」について、日本ALS協会は国内での承認に向けた審査の手続きを迅速に進めるよう求める要望書と署名を厚生労働省に提出し、24日に会見を開きました。

ALSの患者は国内におよそ1万人いるとされていますが、「トフェルセン」はこのうち特定の遺伝子に変異がある遺伝性のALS患者を対象にした治療薬です。

会見に出席した遺伝性のALS患者、青木渉さん(35)は「トフェルセン」を自己負担で輸入して治療を始めたものの、1年間の薬の購入費などが3000万円に上るため治療の継続が難しくなっている現状を訴えました。

青木さんは「難病患者は希望がないと、毎日が暗闇の中にいるような感覚です。目の前に有効な薬があるのに簡単に使用できない現状を知っていただき、承認に向けて迅速に対応していただきたい」と話していました。

また、患者や家族が寄せた「息子を置いて死ねません。同じ病気で3人もの家族が命を奪われました」といったメッセージや「どうか私たちに希望の光をください」といった訴えも読み上げられ、海外で承認された新薬が国内ですぐに使えない「ドラッグラグ」の解消を求めました。

会見に参加した青木さん「ALSの患者は待っている時間がない」

会見に参加した千葉県市川市の青木渉さん(35)は14年前、父親をALSで亡くしています。

おととし10月、青木さん自身も走ったときに足が思うように進まないように感じ、その後、次第に足に力が入らなくなっていきました。

東京都内の医療機関で精密な検査を受けた結果、去年6月にALSと診断され、父親と同じ「SOD1」という遺伝子の変異が原因であることがわかりました。

症状は現在も進行していて、壁などに手をつかないと歩くことが難しいほか、転倒のリスクを避けるため、外出には電動の車いすを利用するようになりました。

ことし4月にこのタイプのALSの治療薬「トフェルセン」がアメリカで承認されましたが、青木さんは日本での承認を待つ時間的な余裕はないと考え、医師と相談したうえで、自己負担で薬を輸入して治療を開始することを決めました。

薬を購入するため、友人や家族などが募金活動を行い、9月から薬の投与を3回受けています。

しかし、この薬の治療を1年間継続するためにはおよそ3000万円がかかるとされていますが、これまで集まったのは1000万円余りで、今後、薬を購入する費用のめどは立っていないということです。

青木さんは患者の負担を抑えるために国内での早期の承認と保険の適用を求めています。

青木さんは「このままのペースで症状が進行すれば、自分で何もできなくなる状態になってしまうというおそれを日々感じています。ALSの患者は待っている時間がなく、本当に1か月、1年が大事です。承認前でも深刻な病気の患者には薬を投与できる仕組みを充実させてほしい」と話していました。