慰安婦問題で賠償命じる判決 日本政府 韓国の対応見極める方針

慰安婦問題をめぐり、韓国の高等裁判所が日本政府に賠償を命じる判決を言い渡したことについて、政府は断じて受け入れられないとして韓国側に抗議しました。

一方で、改善傾向にある両国関係への影響は避けたい考えで、今後の韓国政府の対応などを慎重に見極める方針です。

韓国の元慰安婦の女性や遺族など16人が日本政府に損害賠償を求めていた裁判で、ソウルの高等裁判所は23日、原告側の訴えを退けた1審の判決を見直し、日本政府に賠償を命じる判決を言い渡しました。

これを受けて外務省は「極めて遺憾であり、断じて受け入れることはできない」とする上川大臣の談話を発表するとともに、岡野事務次官が韓国の駐日大使を呼び、強く抗議しました。

今回の判決について日本政府は、主権国家がほかの国の裁判権に服さないとする、国際法上の「主権免除」の原則が適用されるべきであり、慰安婦問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みだとしていて、26日行われる予定の日韓外相会談でも韓国側に適切な措置を講じるよう求める見通しです。

一方で、外務省幹部は「日韓関係に大きな影響が出るかというと、そうではないと思う」と話しています。

北朝鮮が軍事偵察衛星を打ち上げるなど、地域の安全保障環境が厳しさを増す中、改善傾向にある両国関係への影響は避けたい考えで、今後の韓国政府の対応や世論の動向を慎重に見極める方針です。

松野官房長官 “地域情勢踏まえ協力は必要 意思疎通続ける”

慰安婦問題をめぐり、韓国の高等裁判所が日本政府に賠償を命じたことについて、松野官房長官は抗議の意思を強調する一方、厳しい地域情勢を踏まえれば、日韓両国の協力が必要だとして、懸案を適切に管理するため、緊密な意思疎通を続けていく考えを示しました。

韓国の元慰安婦の女性や遺族など16人が日本政府に損害賠償を求めていた裁判で、ソウルの高等裁判所は23日、原告側の訴えを退けた1審の判決を見直し、日本政府に賠償を命じる判決を言い渡しました。

これについて、松野官房長官は閣議のあとの記者会見で、「今回の判決は国際法や日韓両国間の合意に明らかに反するものだ。判決は極めて遺憾で、断じて受け入れることができないとの外務大臣談話を発出し、強く抗議を行ったところだ」と述べました。

一方、「日韓両国は重要な隣国どうしだ。北朝鮮が弾道ミサイル技術を用いた発射を繰り返すなど、厳しい戦略環境を踏まえれば、緊密な協力が今ほど必要とされる時はない。諸懸案を適切に管理し、緊密に意思疎通を図るべきことは当然だ。引き続き、韓国側が適切な措置を講じることを強く求めていく」と述べました。

韓国外務省 “詳細把握中 2015年の合意を尊重する立場”

23日の高等裁判所の判決について韓国外務省は「詳細を把握しているところだ」としたうえで、慰安婦問題をめぐり、「最終的かつ不可逆的な解決」を両国政府で確認した2015年の合意について、「韓国政府は両国間の公式な合意として尊重する立場だ」としています。