福島第一原発事故の賠償裁判 2審判決も国の責任は認めず

東京電力福島第一原子力発電所の事故で、福島県から東海地方に避難した住民120人余りが精神的な苦痛を受けたなどとして国と東京電力に賠償を求めた裁判の2審の判決で、名古屋高等裁判所は1審に続いて、東京電力に賠償を命じた一方、国の責任は認めませんでした。

福島第一原発の事故で福島県から東海地方に避難した120人余りは、生活の基盤を失い、精神的苦痛を受けたなどと主張して、国と東京電力におよそ5億3000万円の賠償を求めていました。

1審の名古屋地方裁判所は2019年、東京電力に対し、9600万円余りの賠償を命じた一方で、「国が東京電力に対策を命じなかったことが著しく合理性を欠くとは認められない」などとして、国の責任は認めず、原告と東京電力が控訴しました。

22日の2審の判決で、名古屋高等裁判所の松村徹 裁判長は「国は2002年には津波の到来を予見することが可能であったが、規制権限を行使して東京電力に適切な措置を講じることを義務づけていたとしても、津波による原発事故を回避することができたとは認められない」などとして、1審に続いて東京電力に賠償を命じた一方、国の責任は認めませんでした。

原告の弁護団によりますと、原発事故で避難した人などが国と東京電力を訴えた集団訴訟では、最高裁判所が2022年6月、国の賠償責任を否定する判断を示したあと、仙台高裁など各地で同様の判断が続いています。

弁護団「不当判決」

判決のあと、原告の弁護団のメンバーは名古屋高等裁判所の前で、「不当判決」、「国の責任認めず」と書かれた紙を掲げました。

裁判所の前に集まった支援者からは「残念だ」とか、「またか」などと落胆の声があがっていました。

原告「原発事故は国の責任 訴えを続ける」

判決のあと、原告の1人の岡本早苗さんは「きょうは残念な判決でしたが、原発事故は国の責任です。私たちはこの訴えを続けていきます」と話していました。

また、宮田陸奥男 弁護士は「原発推進政策からの逃避を少しも考える姿勢が見られない、残念な判決と言わざるをえない」と話していました。