北朝鮮が「人工衛星」打ち上げを通報 22日から12月1日までに

北朝鮮は22日以降、「人工衛星」を打ち上げるとしています。防衛省は万が一、日本に落下する場合に備えて、迎撃ミサイルの部隊などを展開しています。

北朝鮮は、22日午前0時から12月1日の午前0時までの間に、「人工衛星」を打ち上げると21日、海上保安庁に通報しました。

落下物のおそれがあるのは、日本のEEZ=排他的経済水域の外側にある黄海や太平洋などの3つの海域で、打ち上げのおよそ10分後には沖縄県の上空を通過するとみられています。

防衛省は打ち上げには弾道ミサイルの技術が用いられているとしていて、万が一、日本に落下する場合に備えて、
▽迎撃ミサイルを搭載したイージス艦を東シナ海など日本の近海に、
▽地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」を沖縄県に展開しています。

また、政府は日本の上空を通過すると判断した場合などには、Jアラート=全国瞬時警報システムなどを通じて、情報を発信することにしています。

北朝鮮はことし5月と8月にも打ち上げを行いましたが、いずれも失敗しています。

北朝鮮「人工衛星」打ち上げ予告 これまでに6回

北朝鮮が「人工衛星」の打ち上げを事前に予告したケースはこれまでに6回あります。

このうちことし5月と8月、それに2012年4月の3回は打ち上げ直後に墜落するなどして失敗しています。

残りのケースは2009年4月と2012年12月、それに2016年2月の3回で、いずれも日本の上空を通過したとみられています。

防衛省はことし5月と8月については衛星の打ち上げを試みたものの失敗し、ほかの4回については人工衛星と称して発射した弾道ミサイルだったとしています。

“過去2回 地球周回軌道に物体投入” 防衛省分析

防衛省は北朝鮮が「人工衛星」を打ち上げると通告して発射した6回のうち2回については、地球を周回する軌道に何らかの物体が投入されたと分析しています。

軌道に物体が投入されたのは2012年12月と2016年2月で、防衛省関係者によりますと、いずれの物体も地上との定期的な通信などは確認されていないということです。

防衛省は、いずれも人工衛星としての機能を果たしているとは考えられないとして、長距離弾道ミサイルの技術を高めるための発射だったとしています。

防衛省は今回、地球を周回する軌道に何らかの物体が投入された場合は、宇宙空間での動きや地上との通信状況などを確認して衛星かどうかを分析するものとみられます。

北朝鮮メディア 計画への言及 一切なし

北朝鮮メディアではこれまでのところ、打ち上げ計画への言及が一切なく、21日付けの朝鮮労働党機関紙「労働新聞」も、11月26日に投票が行われる予定の地方議会選挙について1面で伝えていますが、「人工衛星」に関連した記事は掲載されていません。

一方、韓国の気象庁が21日朝に発表した予報によりますと「ソヘ(西海)衛星発射場」がある北朝鮮北西部のトンチャンリ(東倉里)付近の天気は、22日が曇りのち雨、26日から27日にかけては雨または雪ですが、それ以外はおおむね晴れる日が続く見込みです。

北朝鮮は、ことし5月、8月と2回続けて打ち上げに失敗した軍事偵察衛星の3回目の打ち上げを試みるとみられ、9月に4年ぶりとなる首脳会談を宇宙基地で開いたロシアから技術支援を受けているという見方もある中で、関係国が警戒監視を強めています。

「ソヘ衛星発射場」とは

「ソヘ衛星発射場」は、北朝鮮北西部ピョンアン(平安)北道のトンチャンリにあり、2012年4月以降「人工衛星の打ち上げ」と称する事実上の長距離弾道ミサイルの発射が相次いで行われてきました。

敷地内には、大型の固定式発射台や、エンジンの実験などを行う「連動試験場」、それに管制センターにあたる「総合指揮所」などが点在しています。

「ソヘ衛星発射場」をめぐっては、2018年6月に開かれた史上初の米朝首脳会談のあと、当時のアメリカのトランプ大統領が、北朝鮮が取り壊しを約束したと述べたほか、同じ年の9月の南北首脳会談で発表された共同宣言では「関係国の専門家の立ち会いのもとで永久に廃棄する」とした項目が盛り込まれました。

しかしその後、米朝関係がこう着する中で廃棄は実現せず、去年3月に「ソヘ衛星発射場」を視察したキム・ジョンウン(金正恩)総書記は、軍事偵察衛星などを「大型運搬ロケット」で打ち上げられるよう、施設の改修や拡張を指示しました。

また、去年12月にキム総書記の立ち会いのもとで、大出力の固体燃料式エンジンの燃焼実験が行われました。

そしてことし5月、軍事偵察衛星の初めての打ち上げが、従来の発射台ではなく海沿いに整備された新たな発射台から行われましたが、新型ロケットに異常が起きて失敗しました。

さらに3か月後の8月には、軍事偵察衛星の2回目の打ち上げを試みたものの、再びロケットの異常で失敗に終わっていました。

北朝鮮が3回目の打ち上げを断行すると当初予告していた先月には、韓国の有力紙が「ソヘ衛星発射場」で「液体燃料を移送する動きが確認され、米韓両国はエンジンの燃焼実験が行われたとみている」と伝えていました。

岸田首相「不測の事態に備え万全を期す」

岸田総理大臣は21日午前7時すぎ、総理大臣官邸に入る際、記者団に対し「情報収集と国民への情報提供に万全を期すことや、関係国と協力し打ち上げの中止を求めること、それに不測の事態に備えて万全を期すことを指示した」と述べました。

その上で「人工衛星の打ち上げを目的としたものでも弾道ミサイル技術を使用するなら国連の安保理決議違反であり、国民の安全にも大きく関わる事柄だ」と指摘しました。そして「すでに不測の事態に備え、自衛隊のイージス艦や沖縄のPAC3部隊が必要な態勢を構築している。引き続き情報収集に万全を期すとともに日米や日米韓などで連携していく」と述べました。

政府は、総理大臣官邸に設置している北朝鮮情勢に関する官邸対策室で、情報の集約と分析を進めています。また、21日午前には、関係省庁の担当者が集まり、それぞれの情報を共有するとともに、今後の対応を協議することにしています。

松野官房長官「Jアラート発出の場合 必要な避難行動を」

松野官房長官は午後の記者会見で「北朝鮮が発射を強行し、わが国の領土、領海に落下する可能性がある場合や上空を通過する可能性がある場合には、速やかにJアラートなどを活用して情報提供することにしていて、きょう沖縄県を含む地方自治体に改めて通知し、注意を呼びかけている」と説明しました。

そのうえで、「Jアラートが発出された場合、可能なかぎり建物に一時避難するなど、必要な避難行動をとっていただきたい。国民の安全確保に万全を期すため、政府一体となって情報提供を適時適切に行っていきたい」と述べました。

酒井海上幕僚長「すでに必要な態勢を構築」

海上自衛隊トップの酒井良海上幕僚長は、21日の記者会見で「衛星の打ち上げを目的としたものであったとしても、弾道ミサイル技術を用いたいかなる発射も禁止している国連安保理決議に違反するものだ。わが国のみならず、地域や国際安全保障に重大な影響を及ぼす挑発行為である」と述べました。

そのうえで、「万が一、わが国の領域に落下する場合に備えて、すでに所要の海域にイージス艦を配備し、必要な態勢を構築している。アメリカや韓国をはじめとする関係国と緊密に連携しながら、あらゆる事態に対応できるよう情報収集や警戒監視に全力をあげる」と述べました。

日米韓高官が電話協議

北朝鮮から「人工衛星」を打ち上げると通報があったことを受けて、外務省の鯰アジア大洋州局長は▽アメリカ国務省のジュン・パク北朝鮮担当特別代表代行、▽韓国外務省のキム・ゴン朝鮮半島平和交渉本部長と電話協議を行いました。

この中で3氏は、弾道ミサイル技術を使用した発射は、衛星の打ち上げを目的とするものであっても、関連する国連安保理決議に明白に違反しているとして、北朝鮮に対し強く中止を求めていくことを確認しました。

その上で抑止力・対処力の強化や国連安保理での対応などについて引き続き3か国で緊密に連携していくことを確認しました。

韓国国防省 打ち上げた場合 対抗措置とる考え

北朝鮮による「人工衛星」の打ち上げについて韓国国防省の報道官は、21日の定例会見で「国連安全保障理事会の決議に明白に違反し、われわれの安全保障を脅かす挑発行為だ」と非難しました。

その上で「強行すれば、わが軍は国民の生命と安全を保障するために必要な措置を講じる」として、打ち上げを実施した場合には、対抗措置をとる考えを示しました。

韓国軍は20日も声明で同様の見解を述べていて、現地メディアは、南北の軍事境界線付近に飛行禁止区域などを設定した、2018年の南北軍事合意の一部効力停止を指していると伝えています。

また、会見では韓国南東部のプサン(釜山)に21日、アメリカの原子力空母「カール・ビンソン」が入港したと明らかにしました。

韓国軍の関係者によりますと、入港は以前から予定されていたもので、韓国海軍は「高度化する北の核・ミサイルの脅威に対し韓米同盟による強固な防衛態勢を示すものだ」と強調しています。

中国外務省 “北朝鮮への圧力をやめ政治的解決を”

北朝鮮による「人工衛星」の打ち上げに関連して、中国外務省の報道官は「関係国に対し圧力をやめ、政治的な解決を推進するよう呼びかける」と述べ、北朝鮮への圧力をやめ、政治的解決を図るようアメリカなどに求めました。

中国外務省の毛寧報道官は21日の記者会見で、北朝鮮が22日から12月1日までの間に「人工衛星」を打ち上げると通報したことについて、「関連する報道とともに、アメリカの空母打撃群が朝鮮半島に頻繁に現れていることを注視している」と述べました。

韓国国防省によりますと、韓国南東部のプサンには21日、アメリカの原子力空母「カール・ビンソン」が入港していて、こうした動きを念頭に置いた発言とみられます。

そのうえで、「中国はすべての関係国に対し、対抗と圧力をやめ、実際の行動で問題の政治的な解決を推進するよう呼びかける」と述べ、北朝鮮への圧力をやめ、政治的解決を図るようアメリカなどに求めました。

さらに毛報道官は「朝鮮半島問題の解決の鍵はアメリカが握っている。中国は責任ある大国として、朝鮮半島問題の政治的解決のプロセスの推進に取り組む」と強調しました。

中国はこれまで、北朝鮮の核・ミサイル開発に拍車をかけるとして、北朝鮮への圧力の強化や追加の制裁に反対していて、こうした姿勢を改めて強調した形です。

沖縄県上空を通過するとみられる

北朝鮮の今回の通報内容から、「人工衛星」が打ち上げられた場合、沖縄県の上空を通過するとみられます。

北朝鮮がことし8月に打ち上げに失敗した際も今回と同じ海域を事前に示していて、このときは沖縄本島と宮古島の間の上空を通過したとみられています。

北朝鮮が「人工衛星」を打ち上げた場合、およそ10分後には沖縄県の上空を通過するとみられています。

防衛省によりますと前回、ことし8月24日に打ち上げを行った際は、およそ10分後に沖縄本島と宮古島の間の上空を通過したとみられていて、政府はJアラート=全国瞬時警報システムやエムネット=緊急情報ネットワークシステムで関連の情報を発信しました。

このときは地球周回軌道への衛星の投入は確認されず、北朝鮮は打ち上げに失敗したとしています。

自衛隊の破壊措置命令を維持

木原防衛大臣は、日本の領域内への落下に備えて迎撃できるようにするための「破壊措置命令」を維持しています。

具体的には、東シナ海には高性能レーダーと、迎撃ミサイルのSM3を搭載したイージス艦が、沖縄県には地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」の部隊を展開させ警戒にあたっています。

このうち東シナ海などの日本の近海では、弾道ミサイルなどを追尾することができる高性能レーダーと迎撃ミサイルのSM3を搭載したイージス艦が展開して、24時間態勢で備えています。

また、地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」が那覇市と宮古島、石垣島、与那国島に展開しています。

このほか、弾道ミサイルなどが落下した場合にけが人の救護など必要な対応がとれるよう、陸上自衛隊の部隊が沖縄県内に派遣されています。

国交省「PAC3」展開の周辺で一部の航空機 飛行自粛の航空情報

国土交通省は、自衛隊の迎撃ミサイルの部隊が展開している沖縄県の場所周辺で、一部の航空機の飛行を自粛するよう求める航空情報を出しています。

航空情報が出ているのは、沖縄県の沖縄本島や宮古島、石垣島、与那国島の4つのエリアで、自衛隊の地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」の部隊が展開している場所周辺です。

エリアでは、小型機やヘリコプターなど目視で飛ぶ航空機を対象に飛行を自粛するよう求めています。

この航空情報は、ことし5月に北朝鮮が打ち上げを通報した際に出したものを継続しているということです。

ただ、警察や消防のヘリコプターのほか、ドクターヘリや管制官の指示に従って飛行する定期便などは自粛の対象になっていないということです。

那覇空港周辺でも「PAC3」部隊展開

那覇空港周辺でも迎撃ミサイル「PAC3」の部隊が展開しているのが確認できました。

21日午前11時すぎにNHKのヘリコプターから撮影した映像では、那覇空港のそばの陸上自衛隊那覇駐屯地の敷地内にある航空自衛隊の南西高射群・第17高射隊の敷地に建つビルの屋上で、「PAC3」のレーダーが展開していました。

また、レーダーのそばには、「PAC3」の発射機を積んだ車両2台が確認できました。

発射機は、いずれも上空に向けられていました。

石垣島 迎撃ミサイル「PAC3」発射機 上向く

石垣島など先島諸島ではことし4月以降、半年以上にわたって自衛隊が迎撃ミサイル「PAC3」を展開しています。

最近は、PAC3の発射機が上に向けられている様子は確認されていませんでしたが、21日朝、石垣島の陸上自衛隊の駐屯地の中では、発射機が上に向けられている様子が確認されました。

北朝鮮が22日から12月1日までの間に「人工衛星」を打ち上げると通報したことを受けて、今後の動きに備えているものとみられます。

沖縄 玉城知事 全庁をあげ情報収集と対策を指示

沖縄県は、玉城知事を本部長とする危機管理対策本部を設置し、21日午前10時半から各部局の幹部などが出席して対策などについて話し合いました。

そして、宿泊施設や観光客などへの情報提供や、落下した場合に備えた有害物質を検知する機器や防護服の確保など、必要な対応を確認し、玉城知事が、国などの関係機関と連携を密にして全庁をあげて情報収集と対策に取り組むよう指示しました。

玉城知事は「防災無線やテレビ、ラジオなどで県内に落下が予測されると放送された場合、安全のため屋内に避難してほしい」と呼びかけています。

上空通過の可能性がある波照間島の人たちは

北朝鮮が「人工衛星」を打ち上げると通報したことについて、上空を通過する可能性がある波照間島の人たちに聞きました。

波照間公民館長の仲底善章さんは「いつものことなので慣れてしまった。北朝鮮は何をやっているんだと思う。国威発揚のためにやっているのかもしれないがちゃんとしてほしい」と話していました。

また、漁業者の嘉良直さんは「いつものことなのでびっくりしない。去年、中国が台湾周辺で演習を行った際は漁協からも注意喚起があったが、きょうはないと思う。ミサイルを飛ばすのは問題だ」と話していました。

沖縄 石垣で予定 台湾有事念頭の避難計画協議が中止

北朝鮮が「人工衛星」を打ち上げると通報したことを受けて、沖縄県石垣市で21日から2日間、政府と八重山地方の自治体の担当者が行う予定だった、いわゆる「台湾有事」などを念頭にした住民避難をめぐる計画の策定に向けた協議が中止になったことが、自治体の関係者への取材でわかりました。

打ち上げに備えて、八重山地方の自治体はそれぞれ対策本部を設置して今後の対応を協議するということです。

専門家「成功を優先させた結果 今回のタイミングに」

北朝鮮情勢に詳しい南山大学の平岩俊司教授は、北朝鮮が当初予告していた10月よりも遅れて「人工衛星」の打ち上げを日本側に通報したことについて「日程よりも打ち上げそのものの成功を優先させた結果、今回のタイミングになったのではないか」という見方を示しました。

そのうえで「3回続けて失敗すると、北朝鮮の技術力などが国際社会から過小評価されてしまう可能性があるため、是が非でも成功させたいという思いが強いことは間違いない」と述べました。

また、平岩教授は「打ち上げの通報は問題点を解決したということだが、ロシアから技術供与を受けて、それを反映させるために当初の予定から日程を延ばして、根本的な問題の解決を目指したということは十分考えられる」と分析しました。

さらに、今回の打ち上げが成功した場合については「複数の偵察衛星の体制への移行も加速するだろうし、7回目の核実験なども含めて『国防5か年計画』を完成させるために、ますますスピードアップしていくと考えられる」と指摘しました。

過去の予告では発射は初日から3日目までに

北朝鮮が「人工衛星」の打ち上げを事前に予告したのはこれまでに6回あり、いずれも予告期間の初日から3日目までに事実上の弾道ミサイルや、弾道ミサイル技術を用いたものを発射しています。

このうち2009年4月と2012年4月は予告期間の2日目に、2012年12月は3日目、2016年2月とことし5月、8月は初日にそれぞれ発射しています。

一般的なロケットの場合、強風や強い雨、雷などの悪天候が予想されると、打ち上げに悪影響を及ぼすおそれがあるため、北朝鮮は天候条件などを考慮しながら発射する日を決めるものとみられます。

これまでの「人工衛星」打ち上げ通報は

北朝鮮はこれまでも北西部トンチャンリの「ソヘ衛星発射場」から「人工衛星」を打ち上げるのに先立って、予定している期間や時間帯、それに部品の落下海域などを、日本の海上保安庁や、IMO=国際海事機関などの国際機関に対し、事前に通報してきました。

2012年4月、打ち上げの28日前に「地球観測衛星『クァンミョンソン(光明星)3号』を南に向けて打ち上げる」として、5日間の予定期間を明らかにしました。

これが失敗すると、同じ年の12月、打ち上げの11日前に「『クァンミョンソン3号』の2号機を打ち上げる」として、13日間の予定期間を設けました。

2016年2月には、打ち上げの5日前に「地球観測衛星『クァンミョンソン4号』を打ち上げる」と明らかにし、18日間の予定期間を通報していました。

一方で北朝鮮は、関係国が警戒を強める中で陽動作戦とも受け取れる動きも見せてきました。

2012年12月の打ち上げでは、予定期間に入る前日に「打ち上げ時期の調整を慎重に検討している」として先延ばしを示唆したのに続いて「運搬ロケットのエンジンに欠陥が見つかった」として、期間の最終日を1週間延長。

発射台からロケットを取り外す動きも捉えられましたが、結局、予定期間に入って3日目に打ち上げました。

2016年2月には、予定期間に入る2日前になって期間の初日を1日前倒しした上で、すぐに打ち上げを強行しました。

また、ことし5月の軍事偵察衛星「マルリギョン(万里鏡)1号」の1回目の打ち上げは、予定期間に入る前日に朝鮮労働党の幹部が談話で「6月に入ってまもなく行う」と明らかにしたものの、実際には当初の予定期間の初日にあたる5月31日でした。

さらに、ことし8月の偵察衛星の2回目の打ち上げは、7日間の予定期間の初日、まだ夜が明けていない午前4時前という異例の時間帯に行われていました。

北朝鮮 ミサイル開発の経緯は

北朝鮮のキム・ジョンウン総書記は、2021年1月の朝鮮労働党大会で打ち出した「国防5か年計画」に、軍事偵察衛星の初めてとなる運用を盛り込みました。

これに基づいて、北朝鮮は2022年の2月と3月、首都ピョンヤン郊外からICBM=大陸間弾道ミサイル級の弾道ミサイルを1発ずつ発射し、いずれも「偵察衛星の開発のための重要な実験を行った」と発表しました。

この年の3月には、キム総書記が国家宇宙開発局と北西部の「ソヘ衛星発射場」を相次いで視察し、今後、多くの偵察衛星を軌道に乗せると強調しました。

さらに去年12月に「ソヘ衛星発射場」から準中距離弾道ミサイル2発を発射して偵察衛星の開発に向けた「最終段階の実験」を行ったと発表し、ことし4月までに「軍事偵察衛星1号機の準備を終える」と明らかにしました。

そして5月に11日間の打ち上げの予告期間を設定し日本の海上保安庁などに通報したあと、予告期間の初日に打ち上げを試みますが、朝鮮半島西側の黄海に落下し、初めての打ち上げは失敗に終わりました。

北朝鮮は直後に国営通信を通じて失敗を公表し、「ソヘ衛星発射場」から、軍事偵察衛星「マルリギョン1号」を新型の衛星運搬ロケット「チョルリマ(千里馬)1型」で打ち上げたものの、新たに導入された2段目のエンジンの異常で推力を失い、黄海に墜落したと明らかにしました。

そのうえで2回目の打ち上げについてさまざまな試験などを経た上で可及的速やかに実施するとしました。

これに対して、韓国の情報機関は、準備日程の短縮など複数の要因で問題が発生した可能性があるとの分析を示しました。

1回目の打ち上げから3か月後の8月、建国75年を翌月に控えるなか、「人工衛星」の打ち上げを海上保安庁に通報し、7日間の予告期間を設定します。

再び、予告期間の初日に「ソヘ衛星発射場」からロケット1発を発射し、フィリピンの東の沖合の太平洋上に落下したと推定されたものの、ロケットの3段目に異常が発生し、2回連続の失敗を発表しました。

その上で、10月中に3回目の打ち上げを断行すると予告しました。

9月には、キム総書記はロシア極東にある宇宙基地でプーチン大統領と4年ぶりに首脳会談を行い、ロケットの発射台なども視察するなど、ロシアからの技術支援の可能性も取り沙汰されています。

ただ、結局、予告された3回目の打ち上げは10月中に行われず、韓国の国防相は19日、北朝鮮がロシアの支援を受けてロケットのエンジンの問題点をほぼ解消し、今月中に打ち上げる可能性があるという見方を示していました。