「先天梅毒」急増で「診療の手引き」作成 日本小児感染症学会

梅毒に感染した妊婦から胎児に母子感染する「先天梅毒」の報告が急増していることを受け、子どもの感染症の専門学会は検査や治療の方針をまとめた「診療の手引き」を作成しました。

国立感染症研究所によりますと、性感染症の梅毒のうち妊婦から胎児に母子感染する「先天梅毒」の報告は、ことしは先月4日の時点で32人と、今の方法で統計を取り始めてから最も多かった2019年1年間の23人をすでに超えています。

日本小児感染症学会はここ数年梅毒の患者が急増し、先天梅毒の子どもも増加するおそれがあることから検査や治療の方針をまとめた「診療の手引き」を作成しました。

通常、妊婦の健診では梅毒の検査を行いますが、妊娠中に感染したり健診を受けていなかったりするケースがあるため、手引きでは生まれた子どもに皮膚の異常など先天梅毒の症状がなくても出産の前後に母親が梅毒に感染していることがわかった場合や、過去に感染したことがあるものの治療したかどうかがはっきりしない場合なども検査や治療を行うことを推奨しています。

また、先天梅毒は成長するにつれて発達の遅れや難聴といった症状が出ることもあるため、定期的に診察して様子を確認するべきだとしています。

学会によりますと、先天梅毒は治療した経験のある医師が少ないということで、今後、この手引きを診療の参考にして早期の治療につなげてほしいとしています。

手引きを取りまとめた愛知医科大学の伊藤嘉規教授は「知識を医師の間で共有することで先天梅毒の増加に備えるとともに、妊婦の方にも先天梅毒のリスクや、妊娠前の検査について知ってもらいたい」と話しています。